【国立科学博物館】皇居の生物相調査(第Ⅲ期)の実施について

文化庁

 独立行政法人国立科学博物館(館長:篠田謙一)では、今年度から「皇居の生物相調査(第Ⅲ期)」を実施しますのでお知らせします。

枯木積に見られる甲虫調査(第Ⅱ期)枯木積に見られる甲虫調査(第Ⅱ期)

  • 背景

 当館では、「都心にありながら多数の種類が生息、生育する皇居内の動植物相について、科学的に調査研究される必要があり、西暦2000年における皇居内の生物についての正確な記録を残し、さらにその記録をもとに、その後の経年変化等を把握するのが望ましい」との天皇陛下(当時)のお考えを受けて、1996年(平成8年)から動物相および植物相に関する総合調査を開始し、第Ⅰ期調査結果を2000年(平成12年)に取りまとめ、第Ⅱ期調査結果を2014年(平成26年)に取りまとめました。また、第Ⅰ期と第Ⅱ期の間【2000年(平成12年)~2005年(平成17年)】には動物相に関するモニタリング調査も実施し、2006年(平成18年)に結果を取りまとめました。

 第Ⅰ期の結果では、植物1366種、動物3638種が記録され、多くの新種(ワラジムシ、ミミズ等)や絶滅危惧種(ヒキノカサ等)、都区内では絶滅したと思われていた種(ベニイトトンボ、オオミズスマシ等)などが見つかりました。第Ⅱ期の結果では、数種の新種も含めて、植物250種、動物649種が新たに確認されました。第Ⅰ期と第Ⅱ期の調査結果で、地衣類の多様性が57種から98種に増大するという大幅な変化が観察されましたが、これは首都圏におけるディーゼル車規制による大気汚染の改善と関連があると推察されました。

<参考>
・国立科学博物館専報 第43号 皇居の動物相モニタリング調査
 https://www.kahaku.go.jp/research/publication/memoir/v43.html
・国立科学博物館専報 第49号 皇居の生物相II.植物相
 https://www.kahaku.go.jp/research/publication/memoir/v49.html
・国立科学博物館専報 第50号 皇居の生物相II.動物相
 https://www.kahaku.go.jp/research/publication/memoir/v50.html

新種記載されたフキアゲニリンソウのタイプ標本(第Ⅱ期)新種記載されたフキアゲニリンソウのタイプ標本(第Ⅱ期)

  • 調査目的
 皇居の生物相は、都市環境の変遷に伴って変化することがこれまでの調査によって確認されており、さらに継続的な調査によって記録に残していくことは科学的にも非常に意義があるため、第Ⅲ期調査を行うことといたしました。第Ⅰ期から第Ⅲ期にかけて、大気汚染の大幅な改善があった一方,都市部における著しい気温上昇などの環境変化があったことから,南方性種の北上や外来種の侵入を含めた生物相の変化なども観察されると予想しています。なお、一部の分類群では周辺地域との比較を遺伝的手法なども用いながら多様性の度合いについてさらに詳細に解析を行う予定です。また、本調査は、独立行政法人国立科学博物館による総合研究「過去150年の都市環境における生物相変遷に関する研究 -皇居を中心とした都心での収集標本の解析」【2021年度(令和3年度)~2025年度(令和7年度)】の一環として実施されます。

 
  • 調査内容
 第Ⅲ期調査のおもな目的は、前回の第Ⅱ期調査から約10年後の調査結果を踏まえて、第Ⅰ期から皇居の生物相がどのように変化したかを明らかにすることにあります。さらに、今回新たに、出現種について可能な限り多様な種についてDNA情報を調べたり(DNAバーコーディング)、鳥類については、さらにさえずりの違いなどの多様性も含めて、赤坂御用地など他地域との比較を行うなど計画しています。

対象分類群は以下を予定しています。トンボ類、チョウ類、ガ類、甲虫類、ゴール形成昆虫類、有剣ハチ類、アリ類、クモ目、鳥類、両生・爬虫類、寄生蠕虫、維管束植物、菌類、藻類、コケ植物、地衣類、シアノバクテリア。

調査期間:令和3年度~令和7年度内
調査区域:皇居西地区(吹上御苑含む)、赤坂御用地
調査結果の公表等:調査結果をとりまとめた段階(令和7年度を予定)で公表いたします。さらに、その後2年以内に独立行政法人国立科学博物館において調査結果に関する企画展を開催する予定です。

 
  • 国立科学博物館

国立科学博物館:https://www.kahaku.go.jp/
国立科学博物館 筑波研究施設:https://www.kahaku.go.jp/institution/tsukuba/

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1968年06月