山梨県がスタートアップ(新興企業)の先進事業に実証実験環境を提供し支援する「TRY!YAMANASHI! 実証実験サポート事業」第6期目の成果報告会を開催
<地域×スタートアップ>による成功のカギは、「人」の活用と「危機感」の共有!
山梨県(知事:長崎幸太郎)は、最先端技術やサービスを有するスタートアップ企業等に伴走し、山梨県全域を対象にした実証実験を全面的にサポートする「TRY! YAMANASHI! 実証実験サポート事業」を2021年度から実施。その第6期(本年4月~9月)を完了し、成果報告会を10月4日、山梨県立図書館(甲府市)で開催しました。
報告会では、同事業の第6期目でのサポートを受けた企業4社が実証期間における成果を発表しました。また、「地域アセット(資産)を活かした事業の創り方」と題し、地域ビジネスの創出や活性化に取り組んでいる県内外のゲストを招いたトークセッションも開催。会場には県内外から約60人が集まり、オンラインでも37人が視聴参加し、全国各地の先進事例や事業創出のヒントを学ぶとともに、山梨の持つ可能性について語り合いました。
■TRY! YAMANASHI! 実証実験サポート事業とは
近い将来、リニア中央新幹線が開通すると、東京・品川から約25分、名古屋から約45分とアクセスの飛躍的な向上が見込まれる山梨県。このインパクトを最大限に取り込み、県の発展につなげていくため、2020年3月に「リニアやまなしビジョン」を策定し、先端技術の実証実験を行う場である「テストベッド」の聖地化を目指すこととしました。この具体的な施策として、2021年度より「TRY! YAMANASHI! 実証実験サポート事業」を開始。この事業は、先端技術を持つスタートアップ企業の社会課題の解決に向けた実証実験を、計画策定から実施、そして検証に至るまで県が全面的にサポートを行うものです。
2021年の開始からこれまでに応募総数261件の中から39件を採択し、第6期では企業4社が採択されていました。
■第6期実証実験サポート事業の採択企業4社が実証実験の成果を報告
① 株式会社asai
(本社:東京都港区、代表取締役:浅井しなの、URL:https://asai-inc.com)
経血から女性特有の健康状態を可視化するキットを開発する同社は、県内医療機関と連携し、経血と採決サンプルを回収・解析するとともに、サービスのUIUX(ユーザーとの接点とユーザーの体験)検証などを実施。実証を進める中で、想定していた回収方法ではサンプルの品質を保てないことが判明し、最終的には安全性や品質を保ったままサンプルを回収するスキームを開発できたという。また、大学生などを対象にした啓蒙イベントを実施し、生理痛体験ワークショップなどを行ったと報告しました。
② Industry Alpha株式会社
(本社:東京都板橋区、代表取締役:渡辺琢実、URL:https://www.industryalpha.net/)
固定カメラを用いたAMR(自律走行搬送ロボット)の交差点制御アルゴリズムの開発を行う同社は、県内の食品工場においてカメラを用いたAMRの安全性向上を検証。定量的、定性的、技術シーズの観点から評価を行い、安全性の向上と動線の非合理性を解消できたと報告しました。
③ 株式会社OUI
(本社:東京都港区、代表取締役:清水映輔、URL:https://ouiinc.jp)
スマートフォンのカメラとライトを活用して眼科健診をいつでもどこでも可能にする眼科医療機器「スマートアイカメラ」を開発する同社は、県内の老健施設や学校、企業において訪問眼科検診でのスマートアイカメラの有用性を検証。その結果、眼科以外の場所での検診の有用性が確認でき、県内でのさらなる実証、実装につなげたいと今後に向けての意気込みを語りました。
④ 株式会社ユーカリヤ
(本社:東京都渋谷区、代表取締役:田村賢哉、URL:https://eukarya.io/)
AIを用いた物体検知技術とWebGIS(インターネット上で利用可能な地理情報システム)技術を活用し自転車の利用状況や危険違反走行の分析・可視化を目的としたプラットフォームの構築を目指す同社は、甲府市内で自転車の安全・安心走行の推進に向けた実態調査と利用状況把握の自動化の実証実験を実施。その結果、違反走行がいつ、どこで発生しているかを可視化するプラットフォームを構築し、併せて3D表示とドライブレコード動画を用いた違反走行現場を再現することができたと報告しました。
いずれの成果報告においても会場から質疑や意見が交わされ、各プロジェクトへの関心の高さや会場の熱量を感じられる報告会となりました。
■日々加速する山梨県内の挑戦の機運を評価
4社による成果報告会に続き、株式会社シクロ・ハイジア(本社:東京都港区)代表取締役CEOの小林誠氏、株式会社グッドウェイ(本社:東京都中央区)代表取締役社長の藤野宙志氏から講評をいただきました。
これまでも同事業の審査などに関わってきた小林氏は、4社の発表に対し個別の評価や今後の期待を述べた上で、会場に集まった参加者に向けて「TRY! YAMANASHI!事業は毎回良い取り組みと良い成果が出ている。皆さんの手厚いサポートによって第6期の4社とも今後の事業成長に向けた意義のある実証を山梨で実施できたと思う。次回第7期の採択企業も決まっているので、引き続きご協力いただきながら山梨でのトライがさらに広がると良い」と語りました。
また、山梨と東京の二拠点居住を通じて地域経済エコシステムの実践と地域価値創出に向けた事業開発に従事する藤野氏は「山梨は異なるプラットフォームの中で、一人一人アイデンティファイされた人による強固な横のつながりが生まれている。これまでは自分の立場や会社ごとだったことが、当事者として動き出していることを強く実感する」と語り、TRY! YAMANASHI!事業をはじめ、さまざまなスタートアップ支援の取り組みにより、山梨の挑戦の機運が日増しに加速している点を強調しました。
■地域の「人」と「危機感」がキーワード!地域アセットを活かした事業創出を語る
続いて行われたトークセッションでは、甲府駅前にあるコワーキングスペースCROSS BEコミュニティマネージャーの桐山祐輔氏、JR東日本スタートアップ株式会社(本社:東京都港区)代表取締役社長の柴田裕氏、株式会社MTG Venture(本社:名古屋市)代表取締役社長の藤田豪氏など、地域ビジネスの創出や活性化に熱意を持って取り組んでいる県内外のゲストが登壇し、「地域だからこそ革新的なビジネスが生み出せる~地域アセットを活かした事業の創り方~」をテーマに、全国各地の先進事例や事業創出のヒントや山梨の持つ可能性について議論を交わしました。
柴田氏は、無人駅を地域アセットとして捉え、スタートアップと協業して日本各地の地方に人を呼び込む取り組みを行っています。群馬県みなかみ町にある無人駅「土合駅」にグランピングやサウナ施設を設置し、多くの利用客を獲得した事例を挙げ、成功した要因として「辺境であればあるほど人が呼べる」とスタートアップからの提案があったと述べ、「大人の常識とは違う。スタートアップの知恵とノウハウを借りることが大切。本当の意味のオープンイノベーションは地方こそ重要だ」と語りました。
また、ベンチャーキャピタルでの投資を通じて、地域課題解決を目指すスタートアップと関わってきた藤田氏は、地域のアセットや課題からビジネス・事業を生み出すヒントとして、「スタートアップは資金的に1年で消えてしまうのに対し、地域の企業は1年で消えることはほぼない。地域の企業がスタートアップの時間軸にいかに合わせられるかが大切」と説明。その上で、地元企業など地域側に「危機感があり、スタートアップと時間軸を合わせられ、今無いものを受け入れる姿勢があると、地域でのビジネスはうまくいく」と指摘しました。
県外から移住し山梨で活躍する桐山氏は、山梨県の地域アセットとその可能性について「僕も移住者で外からの目線を持って山梨を見てきたが、最初から『人』のアセットをすごく感じている」と述べた。加えて、「地域課題はそのままアセットになる。無人駅をはじめ負の部分をどれだけ魅力に感じられるか、今後もその目線や見る角度を磨いていきたい」と語りました。
今回のトークセッションでは、各登壇者から全国各地で関わる地域アセットを活用した事業が紹介されました。その中で、スタートアップが地域の人たちと関わることの大切さ、地域の人たちが危機感を持ち、スタートアップへ時間軸を合わせて取り組むことの重要性が明らかになりました。
さらに、地域には内側からは気づきにくい多様なアセットが存在することも示され、山梨には挑戦しやすいフィールドが整っていることも再認識できました。
県としては、これからも挑戦者と支援者がつながることで、山梨から新たな価値を生み出し続けるという「イノベーション・エコシステム」の構築を目指して行きます。
■やまなし未来創造インフォメーションサイト
実証実験サポート事業など、本県の未来に向けた様々なチャレンジを紹介するサイトです。
URL:https://www.pref.yamanashi.jp/try_yamanashi/support/dai7kijisshoujikken.html
■山梨県スタートアップ支援サイト「STARTUP YAMANASHI」
スタートアップに対する充実した支援策と本県の特徴を広く発信しています。
URL:https://startup-yamanashi.com/
■山梨県公式のブランド情報発信サイト「ハイクオリティやまなし」
山梨県の様々な魅力について特集しています。是非ご覧ください。
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