世界初!血液の“固まりやすさ”を検出する血液検査SMAT (スマット) の開発–抗凝固薬の使用や疾患ごとの血の固まりやすさを見える化–

国立大学法人熊本大学

(ポイント)

●  心疾患患者様の採血検体を用いて,血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)の使用効果や,透析やガン

  など疾患ごとの特徴的な血液の凝固異常を、よりわかりやすく把握できる可能性を示しました。

●  血液が固まり始めるごく初期に作られる微量トロンビンを正確に測定できる新しい凝固検査法を用 

  いて,ヒトでの有用性を確認しました。

●  重要な止血機能を担う2つの異なる凝固経路 (組織因子経路・FⅧa/FⅨa経路) をそれぞれ独立して

   評価できます。

 

(概要説明)

熊本大学大学院生命科学研究部・循環器内科学,同・形態構築学の藤山 陽研究員,有馬 勇一郎准教授 (形態構築学), 辻田 賢一教授 (循環器内科学), 熊本発ベンチャー企業の株式会社血栓トランスレーショナルリサーチラボ 神窪 勇一博士らは,血液が固まり始める最初の段階で形成される「初期トロンビン生成※1 (Initial Thrombin Generation : ITG)」 を測定できる検査法(SMAT)を用いて,心血管疾患患者771名の血液を解析しました。

その結果,抗凝固薬 (DOAC※2・ワルファリン) の使用の有無によりITGが明確に変動すること,さらに慢性腎臓病や透析,がん患者ではITGが低下し,疾患ごとに特異的な凝固パターンが見られることが明らかとなりました。

本研究成果は,2025年11月21日に医学雑誌「Thrombosis and Haemostasis」に掲載されました。

 

(説明)

[背景]

血液凝固の状態を調べる検査として,一般的にAPTT※3 (活性化部分トロンボプラスチン時間) およびPT (プロトロンビン時間) の測定が広く用いられています。これらは「試験管内で生じる凝固反応」を見ており,体内で実際に生じている複雑な凝固反応を十分に反映できていません。生体内では,血が固まる最初の段階で少量の初期トロンビンが生成され,これがさらに強い凝固反応を引き起こします。また近年,抗凝固薬 (DOAC) の普及に伴い,患者ごとに適切に薬が効いているか (薬効が強すぎたり逆に弱すぎたりしていないか)を評価する必要性が高まっています。これらの背景から,本研究では血が固まる最初の段階に生成される初期トロンビンを正確に測定し,臨床応用の可能性を検討しました。

 

[研究の内容]

熊本大学病院循環器内科に入院し,心臓カテーテル検査が施行された患者771名 (抗凝固薬使用:169名 / 抗凝固薬未使用:593名)を対象としました。

組織因子 (TF: Tissue factor※4) 経路とFⅧa/FⅨa経路※5のそれぞれから生成される初期トロンビンを独立して測定しました。

 

[成果]

DOACを使用している患者では,2つの経路の初期トロンビン生成が著明に低下し,検査の性能や精度を評価する統計手法であるROC解析※6を行ったところ,AUC※7 (曲線下面積) 0.86-0.89 (1に近いほど検査としての性能が高い)とDOAC使用を高精度に判別できました。

また,抗凝固薬を使用していない (593名) を解析すると,透析患者では両経路の初期トロンビン生成 (ITG) が著明に低下し,また慢性腎臓病やがん患者では,TF経路の初期トロンビン生成 (ITG) のみが特異的に低下を示しました。

以上より,疾患ごとに異なる凝固パターンが見られる可能性を明らかにしました。さらに,組織因子 (TF) 経路の初期トロンビン生成 (ITG) が低い患者では,死亡率が高い傾向があり,将来的な予後予測の指標となる可能性も示唆されました。

 

[展開]

本研究成果は,臨床現場における新たな凝固評価として期待されます。特に,抗凝固薬の効果が強すぎたり,弱すぎたりしていないかを可視化,また出血・血栓リスクのより細かな把握,さらに疾患ごとにどの段階で凝固反応の異常が生じるかを個別に把握するなど,さらなる臨床応用が見込まれます。

 

[用語解説]

※1初期トロンビン生成: Initial Thrombin Generation (ITG)

凝固反応の開始初期に作られるトロンビン(トロンビンは血液凝固反応を進めるための酵素の一つ)

※2DOAC: Direct Oral Anticoagulant (直接型経口凝固薬)

凝固因子(Ⅹaやトロンビン)を阻害し,血液を固まりにくくする薬剤

※3APTT: 活性化部分トロンボプラスチン時間/PT: プロトロンビン時間

一般的に広く使用される凝固検査 (試験管内での凝固反応を評価する検査)

※4Tissue factor (TF): 組織因子

血液凝固反応を開始させるたんぱく質

※5FVIIIa/FIXa経路:血液凝固因子

血液凝固反応を促進させるたんぱく質

※6ROC解析: Receiver Operating Characteristic 解析

検査の性能や精度 (どれくらい正しく判別できているか) を評価する統計手法

※7AUC: Area Under the Curve (曲線下面積)

ROC曲線の下部分の面積。AUCが1に近いほどその検査の性能が高いことを示す。

 

(論文情報)

論文名:Profiling Initial Thrombin Generation in Cardiovascular Disease using a High Sensitivity Coagulation Assay

 

著者:Akira Fujiyama, MD, Yuichiro Arima, MD, PhD, Rina Inoue, Naoto Kuyama, MD, PhD, Masahiro Yamamoto MD, PhD, Kyoko Hirakawa MD, PhD, Masanobu Ishii MD, PhD, Shinsuke Hanatani MD, PhD, Yasushi Matsuzawa MD, PhD, Eiichiro Yamamoto MD, PhD, Yasuhiro Izumiya MD, PhD, Mariko Komatsu, Yuichi Kamikubo, PhD, and Kenichi Tsujita, MD, PhD

 

掲載誌: Thrombosis and Haemostasis

doi:10.1055/a-2751-8379

URL:https://doi.org/10.1055/a-2751-8379

【お問い合わせ先】

熊本大学大学院 生命科学研究部 形態構築学講座

担当:

研究員 藤山 陽 (ふじやま あきら)

准教授 有馬 勇一郎 (ありま ゆういちろう)

電話:096-373-5040

e-mail:

fujiyamaa@kumamoto-u.ac.jp

arimay@kumamoto-u.ac.jp

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業種
教育・学習支援業
本社所在地
熊本県熊本市中央区黒髪2-39-1
電話番号
096-344-2111
代表者名
小川 久雄
上場
未上場
資本金
-
設立
1949年05月