令和7年度「第73回電気科学技術奨励賞」を受賞

レーザ測距センサ、新型熱交換器、無線式列車制御システムに関する技術が評価

三菱電機株式会社

 三菱電機株式会社は、「レーザ測距センサの新技術創出と適用拡大」、「空調機の省エネ性向上と省冷媒を両立した新型熱交換器VFT®(※1)の開発と実用化」、「丸ノ内線無線式列車制御(CBTC)システムの導入(東京地下鉄株式会社、株式会社日立製作所との共同受賞)」に関する技術が、公益財団法人 電気科学技術奨励会が主催する令和7年度「第73回電気科学技術奨励賞」を受賞しました(※2)。受賞式は、11月25日(火)にKKRホテル東京(東京都千代田区)にて行われます。

■受賞の概要について

<第73回電気科学技術奨励賞>

1.レーザ測距センサの新技術創出と適用拡大~屋外および海中から宇宙まで~

 レーザ測距センサは、物理世界をデジタルツインとして仮想空間に構成する場合に、重要な役割を果たすセンシング技術です。本センサは、対象物へ光を送信し、その対象物からの反射光を受信することを基本原理としているため、対象物の種類や伝搬物質などの環境条件に大きな影響を受けます。当社は、条件の異なる計測環境に適したセンシング方式、光デバイス、受信回路、信号処理技術を開発し、これらを用いて屋外、海中、宇宙など条件が全く異なる環境ごとに、高精度かつ信頼性の高いレーザ測距センサの開発と実用化に取り組んできました。

・車両・車軸検知センサ(屋外用途):測距方式に光強度変調位相差方式(※3)を採用し、特定の光周波数帯域のみ受信することで、太陽光の影響を受けない屋外向けシステムを開発。実運用環境下において、車両検知率99.99%を実現

・海中用センサ:受信感度制御技術により海中有機物からのノイズを抑制。耐圧用の送受信光学系を開発することで、海底において20m先の広域センシング(120°×30°)を実現

・宇宙用センサ:車両・車軸検知センサ向けに開発した変調方式を採用することで、レーザ出力の低い光源や民生用部品の活用を実現し、数cm単位の高精度な測距精度を保持しつつ小型化・低消費電力化を達成。本センサは小型月面着陸実証機SLIMに搭載され、月面へのピンポイント着陸に大きく寄与

これらの技術開発と実用化に関する取り組みが、高く評価されました

2.空調機の省エネ性向上と省冷媒を両立した新型熱交換器VFTの開発と実用化

 ヒートポンプ(※4)式空調機には地球温暖化係数が高いフロン冷媒が使用されており、環境負荷低減のために冷媒量を削減すると伝熱性能が低下するという課題がありました。冷媒量の削減と伝熱性能の向上を両立するためには、熱交換器内に冷媒を流す扁平伝熱管をより細径かつ高密度に配置し、冷媒と空気が触れる面積を拡大するとともに熱交換器内の容積を削減することが有効です。しかし、扁平伝熱管を水平設置した従来の熱交換器では、その構造上、扁平管の数を増やすと、重力の影響を受けてガスと液が混ざりあう冷媒をすべての扁平伝熱管内に均等に行き渡らせることが難しく、伝熱性能の向上が困難でした。

 当社が開発した新型熱交換器VFTは、鉛直上向きに伸びる扁平伝熱管と、二重管構造の高性能冷媒分配器を採用することで、より細径の扁平伝熱管を高密度に多数実装しながら冷媒を均等に行き渡らせることが可能となりました。これにより、従来の熱交換器と比較して、伝熱性能を最大で約40%向上させながら、熱交換器の内容積を最大で約20%削減することで、熱交換器内部の冷媒量削減を実現しました。これらの技術開発と実用化に関する取り組みが、高く評価されました。

新型熱交換器VFT

3.丸ノ内線無線式列車制御(CBTC)システムの導入

 無線式列車制御(CBTC:Communications-Based Train Control)システムは、列車自身が位置を検知し、連続的に地上装置と無線通信することで列車を制御します。当社は、東京メトロ丸ノ内線の信号保安設備更新に合わせ、東京地下鉄株式会社、株式会社日立製作所と共同で、日本の地下鉄として初めて同線にCBTCシステムを導入しました。本システムの導入においては、当社の速度センサ技術、無線技術を用いて、ブレーキ時に車輪が滑る現象(滑走)による速度・位置検知精度低下への対策や、2.4GHz帯周波数を利用した無線通信の信頼性の確保により、安全性、安定性の高い列車制御を実現しました。

・従来使用されている車軸の速度センサに加えて、位置検知精度に優れた、対地速度を直接的に計測する非接触速度センサを国内で初めて採用。2種の速度センサの併用制御により、従来の安全性を確保したまま、滑走時の位置検知精度向上を実現

・多くの機器で使用されている2.4GHz帯の周波数を用いて、電波の妨害や超混雑時等でも安定した無線通信を実現する高度な耐干渉性の技術を適用

 さらに、CBTCシステムと併用される自動列車運転装置(ATO:Automatic Train Operation)(※5)を改良し、CBTCシステムからの通知に基づき、ATOが列車の追従用パターンを生成して自動的に加減速を実施することで、CBTCシステムの移動閉そく(※6)に対応した最適な制御が可能となりました。これにより、駅間停車頻度の削減、乗り心地および遅延回復効果の最大 化を実現しました。これらの技術開発と実用化に関する取り組みが、高く評価されました。

ATCシステム(現行信号保安装置)とCBTCシステムによる列車制御の比較

■電気科学技術奨励賞について

 公益財団法人 電気科学技術奨励会が、電気科学技術に関する発明、研究・実用化、教育などで優れた業績を挙げ、日本の諸産業の発展および国民生活の向上に寄与し、今後も引き続き顕著な成果の期待できる人を表彰するものです。

■商標関連

「VFT」

三菱電機株式会社の登録商標

■三菱電機グループについて

 私たち三菱電機グループは、たゆまぬ技術革新と限りない創造力により、活力とゆとりある社会の実現に貢献します。社会・環境を豊かにしながら事業を発展させる「トレード・オン」の活動を加速させ、サステナビリティを実現します。また、デジタル基盤「Serendie®」を活用し、お客様から得られたデータをデジタル空間に集約・分析するとともに、グループ内が強くつながり知恵を出し合うことで、新たな価値を生み出し社会課題の解決に貢献する「循環型 デジタル・エンジニアリング」を推進しています。1921年の創業以来、100年を超える歴史を有し、社会システム、エネルギーシステム、防衛・宇宙システム、FAシステム、自動車機器、ビルシステム、空調・家電、デジタルイノベーション、半導体・デバイスといった事業を展開しています。世界に200以上のグループ会社と約15万人の従業員を擁し、2024年度の連結売上高は5 兆5,217 億円でした。詳細は、www.MitsubishiElectric.co.jpをご覧ください。

※1 Vertical Flat Tube

※2 https://shoureikai.or.jp/awards/

※3 送信レーザ光に強度変調をかけ、送信光と受信した測定対象からの反射光の位相差から距離を

   測定する方式

※4 外気と屋内の間で熱を移動させることで、高いエネルギー効率で暖房や冷房したり、水を

   温めたりする機器

※5 列車の加速、減速、停車などを装置が自動で行い、運転士の負担を軽減するシステム

※6 先行列車の詳細位置に応じて、後続の列車に対する進行可能な位置を連続的に変更し、車間

   距離を保つ仕組み。安全を保ちながら効率的な列車走行を可能とする

<お客様からのお問い合わせ先>

・「レーザ測距センサの新技術創出と適用拡大」に関して

三菱電機株式会社 情報技術総合研究所

〒247-8501 神奈川県鎌倉市大船五丁目1番1号

https://www.MitsubishiElectric.co.jp/corporate/randd/inquiry/index_it.html

・「空調機の省エネ性向上と省冷媒を両立した新型熱交換器VFTの開発と実用化」に関して

三菱電機株式会社 先端技術総合研究所

〒661-8661 兵庫県尼崎市塚口本町八丁目1番1号

FAX 06-6497-7285

https://www.MitsubishiElectric.co.jp/corporate/randd/inquiry/index_at.html

・「丸ノ内線無線式列車制御(CBTC)システムの導入」に関して

三菱電機株式会社 社会システム事業部 モビリティインフラシステム事業部

〒100-8310 東京都千代田区丸の内二丁目7番3号

E-mail:Transportation@ny.MitsubishiElectric.co.jp

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会社概要

三菱電機株式会社

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URL
https://www.MitsubishiElectric.co.jp/
業種
製造業
本社所在地
東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビル
電話番号
03-3218-2111
代表者名
漆間 啓
上場
東証プライム
資本金
1758億2077万円
設立
1921年01月