SDGsに積極的な企業は39.7%、前年より大幅増加
一方、取り組んでいない企業は半数以上を占める
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連サミットにおいて、世界193カ国が産官学民などのステークホルダーとともに同意した「2030年アジェンダ」に掲載されている世界共通の目標である。2030年のSDGs達成に向けて、2020年1月からは「行動の10年(Decade of Action)」と銘打ち、産官学民すべてにおける取り組みの加速が期待されている。そこで、帝国データバンクは、SDGsに関する企業の見解について調査を実施した。SDGsに関する調査は、2020年6月に続いて今回で2回目
<調査結果(要旨)>
SDGsに積極的な企業は39.7%で前年より増加も、取り組んでいない企業は5割超に
自社におけるSDGsへの理解や取り組みについて尋ねたところ、「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業は14.3%となり、前回調査(2020年6月)より6.3ポイント増加した。また、「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」は25.4%で同9.0ポイント増だった。合計すると『SDGsに積極的』な企業は39.7%で同15.3ポイント増加しており、SDGsに対する企業の取り組みや意識は前年より大きく拡大している結果となった。一方、「言葉は知っていて意味もしくは重要性を理解できるが、取り組んでいない」(41.4%)が同8.5ポイント増で4割超となり、全体で最も多かった。また、「言葉は知っているが意味もしくは重要性を理解できない」(9.1%)も含めた企業は合計50.5%となり、SDGsの存在を知りつつも取り組んでいない企業が多数を占める結果となった。
企業からは、「取り組むことで今まで見えなかった課題が見えてきた。社会貢献のみならず新たな顧客サービスを生み、ひいては業界全体の発展につながると思う」(缶詰・瓶詰食品卸売、広島県)や「今まで取り組んでいた内容をSDGsの項目に落とし込んだことで意識するようになった」(特殊産業用機械機器具卸売、埼玉県)のような前向きに取り組んでいる様子がみられた。一方で、「中小企業にとって社会的責任の比重は自社の業績に比較して明らかに低く、明確な対応をとるレベルではない」(一般製材、愛媛県)といったマイナスの意見も聞かれる。
SDGsに積極的な企業、規模別では大企業が半数を超えるも、中小企業では低迷
SDGsに対する企業の意識を規模別にみると、「大企業」ではSDGsに積極的な企業が55.1%で、半数を上回った。一方で、「中小企業」では積極的な企業は36.6%で大企業より18.5ポイント、さらに「小規模企業」では31.6%で同23.5ポイント下回っている。特に、中小企業と小規模企業ではSDGsに取り組んでいない企業がいずれも5割を上回るなど、大企業と中小企業及び小規模企業の間には、大きな意識の差が表れる結果となった。中小企業からは、「目標が壮大過ぎて、取り組みようがないというところが正直なところ」(食料品加工機械製造、大阪府)や「自社業務の延長線上の事には取り組めるが、コスト人的資源等から新たな取り組みへのハードルが高い」(はつり・解体工事、千葉県)などの意見が多くあがった。
業界別では「金融」「農・林・水産」の半数以上はSDGsに積極的
SDGsに対する企業の意識 ~業界別~SDGsに対する企業の意識を業界別にみると、積極的な企業では「金融」が56.0%で最も高くなった。次いで、「農・林・水産」も55.6%となり半数を超えた。一方で、SDGsに取り組んでいない企業では「卸売」が52.9%で最も高く、「運輸・倉庫」(51.0%)、「サービス」(50.8%)、「建設」(50.4%)の4業界が5割超となった。企業からは、「効率的な農業生産により、省エネルギーと食料供給を担いたい」(施設野菜作農、大分県)や「自社の取り扱っている商品は石油化学商品が多いため、海洋ごみ問題やCO2排出問題などを課題に自然に優しい商材の取組みを推進していきたい」(一般乗用旅客自動車運送、千葉県)など、業界ごとにさまざまな取り組みの声がみられた。
SDGs17目標において現在力を入れている項目は「働きがいも経済成長も」がトップ
SDGsでは、2030年までに達成すべき17の目標が設定されている。そこで、17目標のなかで現在力を入れている項目を尋ねたところ、目標の8つ目に掲げられている「働きがいも経済成長も」が32.0%で最も高かった(複数回答、以下同)。企業にとって取り組みやすい目標であることが、割合が高い一因とみられる。次いで、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(22.3%)、「つくる責任つかう責任」(20.9%)が2割台で続いた。実際の企業活動と結びつきやすい項目では割合が高い一方で、「飢餓をゼロに」(4.8%)や「安全な水とトイレを世界中に」(6.3%)など7項目では1割未満にとどまった。また「分からない」とした企業も32.1%となり、SDGsの取り組みが浸透していない様子もうかがえる。
今後最も力を入れたい項目、「働きがいも経済成長も」がトップ
SDGsで掲げられている 17 目標のうち、今後最も取り組みたい項目について尋ねたところ、「働きがいも経済成長も」が15.4%でトップだった(単一回答)。現在最も力を入れている項目と同様に最も高く、全項目のなかで唯一の2ケタとなった。次いで、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(8.7%)や、「気候変動に具体的な対策を」(7.7%)も上位となった。
SDGsに積極的な企業の景況感、全体を上回る水準で推移
本調査と、同時に行われた「TDB景気動向調査」を基に、「SDGs景気DI」「潜在SDGs景気DI」、および両者の統合指標として『SDGs景気DI(総合)』を算出した。その結果、2021年6月のSDGs景気DI(総合)は41.1となり、全体を2.0ポイント上回っていた。2020年以降でみてもSDGs景気DI(総合)は全体を上回っており、総じてSDGsへの取り組みに積極的な企業の景況感は全体より良い傾向で推移している。
まとめ
SDGsに注力する機運は世界中で高まっており、政府や自治体のみならず近年は民間企業にも求められるケースが目立っている。ESGの観点からもSDGsの達成に向けた取り組みは重要視されており、企業の見られ方や魅力の向上にとって外せないキーワードとなっている。
こうしたなか、本調査ではSDGsに積極的な企業は前年から大幅に上昇し約4割となったが、取り組んでいない企業は5割以上となった。SDGsに対する意識は前年より着実に広がっているものの、取り組んでいない企業が多数を占める結果となった。掲げられている17目標の中で現在力を入れている及び今後取り組みたい項目では、いずれも「働きがいも経済成長も」に関心のある企業が多い。他にも「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」や「気候変動に具体的な対策を」は上位となった。しかし、企業からは「目標が大きすぎて何から手を付けて良いか見えてこない」(新車自動車小売、兵庫県)との意見が多くみられた。
SDGsの達成に向けた取り組みは、既存事業の拡大や新規事業の開拓、ステークホルダーとの信頼構築など企業にとってさまざまなメリットが期待されている。SDGsへの取り組みが進んでいない企業は多いが、「普段から活動している内容がSDGsの項目と合致している部分もあり、この部分を継続的に行いつつ他の目標もできることから始めたい」(包装用品卸売、宮崎県)のように、自社の事業が既にSDGsの17目標に該当していることを新たに発見できたという声も少なくない。こうした発見は、自社の強みの再確認やビジネスチャンスを拡げるきっかけにもなり得る。今後は企業がSDGsに対して意欲的になれるよう、官民が一体となって取り組む価値やその事例を効果的に発信していくことが肝要となろう。
- 自社におけるSDGsへの理解や取り組みについて、「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業は14.3%となり前回調査(2020年6月)より6.3ポイント増加するなど、「SDGsに積極的」な企業は同15.3ポイント増の39.7%と前年より大きく増加した。一方で、SDGsに取り組んでいない企業は50.5%と半数を超えている
- 規模別にみると、「大企業」ではSDGsに積極的な企業が55.1%となり半数を上回った。一方で、「中小企業」では積極的な企業は36.6%で大企業より18.5ポイント下回った。SDGsに対する意識は企業規模で差が表れている
- 業界別にみると、積極的な企業では「金融」が56.0%で最も高くなった。次いで、「農・林・水産」も55.6%で半数を超えた。一方で、SDGsに取り組んでいない企業では「卸売」が52.9%で最も高く、「運輸・倉庫」(51.0%)、「サービス」(50.8%)、「建設」(50.4%)の4業界が5割超となった
- SDGsの17目標のなかで、現在力を入れている項目では、「働きがいも経済成長も」が32.0%で最も高かった(複数回答)。今後最も取り組みたい項目でも同様に「働きがいも経済成長も」が15.4%でトップだった(単一回答)。いずれの項目でも「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」や「つくる責任つかう責任」が上位となっている
- SDGsに積極的な企業の景況感を表す『SDGs景気DI(総合)』をみると、2021年6月のSDGs景気DI(総合)は41.1と、全体の景気DIを上回る水準で推移した。17目標別では、「産業と技術革新の基盤をつくろう」や「人や国の不平等をなくそう」が高かった
SDGsに積極的な企業は39.7%で前年より増加も、取り組んでいない企業は5割超に
自社におけるSDGsへの理解や取り組みについて尋ねたところ、「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業は14.3%となり、前回調査(2020年6月)より6.3ポイント増加した。また、「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」は25.4%で同9.0ポイント増だった。合計すると『SDGsに積極的』な企業は39.7%で同15.3ポイント増加しており、SDGsに対する企業の取り組みや意識は前年より大きく拡大している結果となった。一方、「言葉は知っていて意味もしくは重要性を理解できるが、取り組んでいない」(41.4%)が同8.5ポイント増で4割超となり、全体で最も多かった。また、「言葉は知っているが意味もしくは重要性を理解できない」(9.1%)も含めた企業は合計50.5%となり、SDGsの存在を知りつつも取り組んでいない企業が多数を占める結果となった。
企業からは、「取り組むことで今まで見えなかった課題が見えてきた。社会貢献のみならず新たな顧客サービスを生み、ひいては業界全体の発展につながると思う」(缶詰・瓶詰食品卸売、広島県)や「今まで取り組んでいた内容をSDGsの項目に落とし込んだことで意識するようになった」(特殊産業用機械機器具卸売、埼玉県)のような前向きに取り組んでいる様子がみられた。一方で、「中小企業にとって社会的責任の比重は自社の業績に比較して明らかに低く、明確な対応をとるレベルではない」(一般製材、愛媛県)といったマイナスの意見も聞かれる。
SDGsに積極的な企業、規模別では大企業が半数を超えるも、中小企業では低迷
SDGsに対する企業の意識を規模別にみると、「大企業」ではSDGsに積極的な企業が55.1%で、半数を上回った。一方で、「中小企業」では積極的な企業は36.6%で大企業より18.5ポイント、さらに「小規模企業」では31.6%で同23.5ポイント下回っている。特に、中小企業と小規模企業ではSDGsに取り組んでいない企業がいずれも5割を上回るなど、大企業と中小企業及び小規模企業の間には、大きな意識の差が表れる結果となった。中小企業からは、「目標が壮大過ぎて、取り組みようがないというところが正直なところ」(食料品加工機械製造、大阪府)や「自社業務の延長線上の事には取り組めるが、コスト人的資源等から新たな取り組みへのハードルが高い」(はつり・解体工事、千葉県)などの意見が多くあがった。
業界別では「金融」「農・林・水産」の半数以上はSDGsに積極的
SDGsに対する企業の意識 ~業界別~SDGsに対する企業の意識を業界別にみると、積極的な企業では「金融」が56.0%で最も高くなった。次いで、「農・林・水産」も55.6%となり半数を超えた。一方で、SDGsに取り組んでいない企業では「卸売」が52.9%で最も高く、「運輸・倉庫」(51.0%)、「サービス」(50.8%)、「建設」(50.4%)の4業界が5割超となった。企業からは、「効率的な農業生産により、省エネルギーと食料供給を担いたい」(施設野菜作農、大分県)や「自社の取り扱っている商品は石油化学商品が多いため、海洋ごみ問題やCO2排出問題などを課題に自然に優しい商材の取組みを推進していきたい」(一般乗用旅客自動車運送、千葉県)など、業界ごとにさまざまな取り組みの声がみられた。
SDGs17目標において現在力を入れている項目は「働きがいも経済成長も」がトップ
SDGsでは、2030年までに達成すべき17の目標が設定されている。そこで、17目標のなかで現在力を入れている項目を尋ねたところ、目標の8つ目に掲げられている「働きがいも経済成長も」が32.0%で最も高かった(複数回答、以下同)。企業にとって取り組みやすい目標であることが、割合が高い一因とみられる。次いで、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(22.3%)、「つくる責任つかう責任」(20.9%)が2割台で続いた。実際の企業活動と結びつきやすい項目では割合が高い一方で、「飢餓をゼロに」(4.8%)や「安全な水とトイレを世界中に」(6.3%)など7項目では1割未満にとどまった。また「分からない」とした企業も32.1%となり、SDGsの取り組みが浸透していない様子もうかがえる。
SDGs17目標のなかで、現在力を入れている項目を前年比でみると、全17目標で前年より増加していた。特に、近年注目が集まっている再生可能エネルギーの利用なども含まれる「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」は6.4ポイント増で最も増加していた。次いで、「つくる責任つかう責任」(6.1ポイント増)や「働きがいも経済成長も」(4.9ポイント増)、「気候変動に具体的な対策を」(4.8ポイント増)などで前年からの増加が目立っている。
今後最も力を入れたい項目、「働きがいも経済成長も」がトップ
SDGsで掲げられている 17 目標のうち、今後最も取り組みたい項目について尋ねたところ、「働きがいも経済成長も」が15.4%でトップだった(単一回答)。現在最も力を入れている項目と同様に最も高く、全項目のなかで唯一の2ケタとなった。次いで、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(8.7%)や、「気候変動に具体的な対策を」(7.7%)も上位となった。
SDGsに積極的な企業の景況感、全体を上回る水準で推移
本調査と、同時に行われた「TDB景気動向調査」を基に、「SDGs景気DI」「潜在SDGs景気DI」、および両者の統合指標として『SDGs景気DI(総合)』を算出した。その結果、2021年6月のSDGs景気DI(総合)は41.1となり、全体を2.0ポイント上回っていた。2020年以降でみてもSDGs景気DI(総合)は全体を上回っており、総じてSDGsへの取り組みに積極的な企業の景況感は全体より良い傾向で推移している。
SDGs景気DIおよび潜在SDGs景気DIの内訳(2021年6月)また、SDGsの17目標を「環境活動」「社会活動」「経済活動」「パートナーシップ」の4つに分類し、各グループにおける景気DIをみると、「パートナーシップDI」がSDGs景気DI、潜在SDGs景気DIともに最も高かった。さらに17目標別については、SDGs景気DIでは「経済活動DI」に含まれる「産業と技術革新の基盤をつくろう」、潜在SDGs景気DIでは同様に「経済活動DI」に含まれる「人や国の不平等をなくそう」の景況感が高かった。SDGsに取り組む企業の景況感が全体より良好であるなかで、取り組み内容による違いも表れた。
まとめ
SDGsに注力する機運は世界中で高まっており、政府や自治体のみならず近年は民間企業にも求められるケースが目立っている。ESGの観点からもSDGsの達成に向けた取り組みは重要視されており、企業の見られ方や魅力の向上にとって外せないキーワードとなっている。
こうしたなか、本調査ではSDGsに積極的な企業は前年から大幅に上昇し約4割となったが、取り組んでいない企業は5割以上となった。SDGsに対する意識は前年より着実に広がっているものの、取り組んでいない企業が多数を占める結果となった。掲げられている17目標の中で現在力を入れている及び今後取り組みたい項目では、いずれも「働きがいも経済成長も」に関心のある企業が多い。他にも「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」や「気候変動に具体的な対策を」は上位となった。しかし、企業からは「目標が大きすぎて何から手を付けて良いか見えてこない」(新車自動車小売、兵庫県)との意見が多くみられた。
SDGsの達成に向けた取り組みは、既存事業の拡大や新規事業の開拓、ステークホルダーとの信頼構築など企業にとってさまざまなメリットが期待されている。SDGsへの取り組みが進んでいない企業は多いが、「普段から活動している内容がSDGsの項目と合致している部分もあり、この部分を継続的に行いつつ他の目標もできることから始めたい」(包装用品卸売、宮崎県)のように、自社の事業が既にSDGsの17目標に該当していることを新たに発見できたという声も少なくない。こうした発見は、自社の強みの再確認やビジネスチャンスを拡げるきっかけにもなり得る。今後は企業がSDGsに対して意欲的になれるよう、官民が一体となって取り組む価値やその事例を効果的に発信していくことが肝要となろう。
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