角層細胞のうるおい状態を可視化する新技術を開発
~うるおい状態の経時的な測定や、異なる製剤間でのうるおい状態の比較が可能に~
この研究成果の一部は、日本顕微鏡学会第79回学術講演会(2023年6月26~28日・島根県)にて発表しました。
*1 微小な領域の赤外線吸収スペクトルを測定し、タンパク質や脂質、アミノ酸などの物質の分布情報を取得する方法
背景
肌の乾燥やかさつきは、年間を通じて直面することの多い肌悩みのひとつです。この肌悩みを解決するために、肌(角層)にうるおいを与えるさまざまなスキンケア商品があります。しかし、化粧水に関して、「うるおいが足りない」「効果がわからない」といった声もあります。また、同じ商品を使っても、うるおい効果の感じ方は人それぞれ異なります。そこで、多くの方にうるおいを実感してもらう商品を開発するためには、表面的なうるおいではなく、角層細胞そのもののうるおいを客観的に把握できる方法が必要と考え、研究に取り組みました。
従来、角層のうるおい評価は、専用の電極を肌に押し当てた際の、電気の通りやすさを指標としてきました。しかしこの方法では、肌に浸透せず肌表面に残っている成分の寄与も含んでしまっていたため、角層内部に浸透した成分のみを測定することができませんでした。そこで今回、角層内部のうるおいの程度を、細胞レベルで検出する手法の開発に着手しました。
顕微ATR-IRイメージング法を用いた、うるおい分布画像の取得
特殊な粘着テープで前腕内側部のヒト角層細胞を採取し、粘着面内(200μm角)を顕微ATR-IRイメージング法で測定し、赤外吸収スペクトルの分布データを取得しました。その中から、細胞を構成する主成分であるタンパク質の信号成分を取り出し、細胞像を作成しました(図1・左/細胞像)。角層細胞の継ぎ目には、細胞2層分のタンパク質があるために、細胞像には明るい網目状の構造が確認できます。
次に赤外吸収スペクトルから、タンパク質当たりのうるおい成分(水・ポリオール類のOH基)の信号強度比(含水比)を算出し、画像化しました(図1・右/うるおい像)。
化粧水製剤塗布前後での、角層細胞のうるおい状態の比較
次に、うるおい保持効果の異なることが想定される2種類のプロトタイプの化粧水製剤(A・B)を用いて、肌に塗布した際の角層細胞のうるおい状態の違いを調べました。まず、6人の被験者の前腕の角層細胞を採取し、その後化粧水を塗布し、ふき取り処理を行ったうえで再度角層細胞を採取しました。採取した角層細胞を、顕微ATR-IRイメージング法を用いて解析しました。
その結果、いずれのプロトタイプも、塗布直後よりも塗布4時間後の方が角層細胞のうるおいの程度が高いことがわかりました。これは、角層細胞内部にうるおい成分が浸透したことによるものと考えられます。また、2種のプロトタイプ間では、角層細胞のうるおい状態の変化が大きく異なることも確認でき、プロトタイプAでは8時間後も角層細胞にうるおい成分が多く含まれていることが確認できました(図2)。
まとめ
花王は、顕微ATR-IRイメージング法を用いた独自の解析技術により、肌(角層)のうるおい状態を角層細胞レベルで可視化、及び数値化する技術を開発しました。
今後、本技術を、角層細胞のうるおい状態を解析する技術のひとつとして、スキンケアの開発に応用し、多くの方が抱える乾燥やかさつき悩みの解決、そして美しい肌の実現に貢献していきます。
https://prtimes.jp/a/?f=d70897-322-cc6ff4a052f95076e3c5528923c7af9a.pdf
■ニュースリリースURL
https://www.kao.com/jp/newsroom/news/release/2023/20230822-002/
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