名越先生も語る日本人独自の耳感覚を調査 「日本耳」は出世・昇給が早いと判明
音からの状況把握能力、想像力が豊かな「日本耳」を持っている人は、現在約10人に1人。しかし、その持ち主は出世や昇給が比較的早いことが判明。
ソニーマーケティング株式会社とマーケティングリサーチをおこなう株式会社ネオマーケティングが、20代から50代までの男女計500名を対象に聴感覚の共同調査を実施したところ、日本人には敏感かつ繊細に音を感じ取り、音からさまざまなイメージを描く能力「日本耳」を持っている人がいることがわかりました。 「日本耳」を持っている人は、想像力豊かであり、音から視覚的な想像力や相手の感情、温度感や情感まで読みとれるのです。
◇「日本耳」とは、耳から広がる想像力が欧米人とは異なる日本人特有の「耳」◇
日本人と欧米人は情報処理の仕方に違いがあり、日本人は音を全脳的に捉え、音からビジュアルを想像したり、感情を掴んだり、その場の状況を判断する力に長けていると考えられます。
例えば、日本庭園で見られる「ししおどし」ですが、このように人工的に音のなる装置は、日本が発祥です。これは音から様々なイメージを非常に大きく膨らませてしまう日本人固有の感覚から、竹が石を打つ音が持つ風情を利用し、景色と空間のイメージをさらに深く味わえるよう、設置されたのだそうです。
この古来から持つ優れた聴感覚によって、言語にも日本固有の音の表現が多く生まれました。それが「さんさんと降り注ぐ」「しんしんと積もる」などの擬音語や擬態語です。これらは和歌や、小説、歌謡曲にいたるまで幅広い分野で特定状況の些細な違いを細かに表現し、豊かに伝えるために紡がれた日本人ならではの言葉たちです。
「日本語は発音が世界一美しい言語」と言われることがありますが、そもそもこうした音に対して敏感で、些細な違いを慈しむ日本人が創った言語ですから、それも当然のことなのかもしれません。
音に対して繊細な感覚を持つことで、人の想像力、創造性は豊かになります。
<名越 康文 (なこし やすふみ)>
-精神科医-
1960年生まれ。精神科医。専門は思春期精神医学、精神療法。奈良県生まれ。
大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて精神科緊急救急病棟の設立、責任者を経て、99年同病院を退職。
引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・コメンテーター、雑誌連載、映画評論、漫画分析など、様々なメディアで活動している。
【調査結果サマリー】
■「日本耳」を持つ日本人は、現在約10人に1人
「日本耳」の定義となる「音の分析力」を7方向から調査、分析し、日本耳の度合いを高・中・低で評価分類した結果、 「高」である「日本耳」を持っている人は9.4%(47人)となりました。 敏感かつ繊細に音を感じ取り、音からさまざまなイメージを描く日本人固有の能力を、約10人に1人が持つことが明らかになりました。
■「日本耳」を持つ日本人は出世が早い
働いている人(259人)を対象に職場での出世・昇給の早さを確認した調査では、「出世・昇給が比較的早い」と感じている人の割合が全体35.9%に対し、「日本耳」を持っている人では56.0%に上る結果となり、明らかに出世・昇級が早いことがうかがえました。
■要因としては「日本耳」を持つ日本人のコミュニケーション能力の高さにあると推察
コミュニケーション能力についての分析では、7項目全てにおいて「日本耳」を持っている人は、全体結果を10~30%上回る高い数値であることが明らかになりました。このことが出世・昇給と関係があると推察されます。
■「日本耳」を持っている人は、音楽を聴くときの音質や機材(環境)に、“こだわり”を持っていることが判明
音楽を聴くとき機材(環境)に対する“こだわり” では、全体では30.8%がこだわるのに対し、「日本耳」を持っている人では7割以上(72.3%)がこだわっていると回答しています。
音質についても同様の傾向で、「日本耳」を持っている人の83.0%が「音質にこだわる」と答えており、全体(48.0%)をはるかに上回る状況になっています。
■機材(環境)や音質にこだわる「日本耳」を持つ人は、加齢に逆らい、聴く力のパワーアップが判明
「日本耳」を持っている人は数年前の若い頃よりも、現在聴く力が増していると感じている人が多く、逆にそれ以外の人はここ数年で聴く力が減少してる自覚があることがわかりました。
聴力は視力と同様、年齢と共に低下すると言われていますが、感性や想像力などに関連する「日本耳」は、機材や音質にこだわって音楽を聴くことで、加齢に反し育てていける可能性があることがわかりました。
■【まとめ】 高音質は、「日本耳」を育て、経済的な豊かさにも関連性があることを推察
音楽を高音質で聴くことは、日本人のコミュニケーション能力、創造性の向上に好影響があり、「日本耳」を育てる効果があること、また、「日本耳」を持つことは、日常生活でも出世や昇給など経済的豊かさにも作用する可能性があることが推察されました。
◇音楽心理カウンセラー 齋藤寛氏が解説 ~“日本耳”の存在と、繊細な音を楽しむことの有意性~◇
今回の調査結果から、現代において、日本人特有の“日本耳”が減少していることも見てとれます。些細な音に耳を澄まし、聴感覚を研ぎ澄ます機会、あるいは繊細な音を楽しむ環境が失われつつあるのかもしれません。
日本文化を様々な点で発展させ、築いてきた“日本耳” が失われていくのは大変忍びないことだと思います。日常生活を豊かに暮らしていく上で、感性に働きかける五感が優れているに越したことはありません。
しかし、「日本耳」を育てる、取り戻す方法はあります。日々の生活で出来る限り本来の音を忠実に再現する「高音質」に触れ、繊細な音に耳を澄ませ、想像力を広げる楽しみを持つことが重要です。「日本耳」を育て、守ることは、日本人ならではの感性や意識を守り育てるという視点からも大切なことであると考えています。
<齋藤 寛 (さいとうひろし)>
-音環境コンサルタント、音楽心理カウンセラーー 群馬県出身。
新潟大学教育学部芸術学科でピアノ演奏と音楽心理学を専攻。音や音楽が人の感情におよぼす影響について研究する。
飲食店やオフィスなど商用BGMに関するコンサルティング、ビジネス書、専門誌への寄稿、医療学会での講演、ラジオ、
テレビ、雑誌などメディア露出も多数。BGMアドバイザーとして音楽を提供する企業への協力や、個人向けに音楽心理
カウンセリング(音で心を整える)をおこなうなどその活動は多岐に渡る。
◇「日本耳の方にも満足いただけるウォークマン® 忠実再現性を求めてさらに進化します」 ◇
「オンガクには、オンガクの音。」を掲げるウォークマン®は、楽曲製作者が意図した音や楽器本来の音の響き・臨場感を忠実に再現することが、高音質へのこだわりであると考え、より一層の臨場感あふれる音楽体験を提供しています。
今回の調査では、「日本耳の持ち主は、音楽を聴くときの音質や機材(環境)にこだわりを持っている」ことがわかりましたが、これは私たちのこだわりと合致しており、非常に喜ばしいことだと思います。ウォークマン®は、お客さまの音楽環境の質の向上にも貢献するとともに、携帯型音楽プレーヤーの世界ブランドとして、音質やスタミナにも徹底してこだわっています。圧倒的な音質、音楽の新しい楽しみ方、スタミナなど、音楽プレーヤーとしての使い勝手を追求したウォークマン®で、是非繊細な音の世界をお楽しみ頂ければと思います。
ソニー株式会社
ホームエンタテインメント&サウンド事業本部
商品企画部門Sound商品企画部企画1課
小野木 康裕
【調査結果について】
■「日本耳」の定義
今回の調査では、「日本耳」の定義について、7つの質問項目を設定し、それぞれに「そう思う」 「まあそう思う」「あまりそう思わない」「そう思わない」の4段階で自己評価いただき、それを点数化し、合計点を「高(10~14点)/中(5~9点)/低(0~4点)」に三等分し、最も点数が高い群を「(客観的)日本耳」と定義しました。
<「日本耳」の客観的評価の7項目>
①音をきちんと聞く力がある
②音からその場の環境や状況を把握する力に長けている
③耳を澄ませてきちんと音を聞く
④「雑多な音」から必要な情報を聞き分けられる
⑤人と話していても、その話以外の音が聞き分けられる
⑥英語を聞いた時、意味が分かるかを別として単語自体を聞き取れる
⑦漫画を読む時、擬音と言葉を「一緒に感じる」(音を前脳的に捉えることができる)
■「日本耳」の特徴
①「日本耳」を持つ日本人は、現在10人に1人
上述の通り「(客観的)日本耳」の度合いを高・中・低で評価分類した結果、「高」である 「日本耳」を持っている人は9.4%(47人)となりました。敏感かつ繊細に音を感じ取り、音からさまざまなイメージを描く日本人固有の能力を、約10人に1人が持つことが明らかになりました(表1)。
②「日本耳」を持っている人は、音から想像力を喚起する能力が高い
音から視覚的な想像力を働かせられるかを、物を見ずに音を聞き分けることができるか、という形で聞くと、「日本耳」を持っている人はすべての項目においてそうでない層より視覚的な想像力が勝っていました(グラフ2)。また、聞いた音や声から「見た目」が思い浮かぶことがあるかについても、「日本耳」を持っている人はすべての項目において想像力が高い結果となっています(グラフ3)。
また、音から感情や風情などを感じるかどうかを聞くと、音から「感情」を想像する力も(グラフ4)、「風情」を想像する力も(グラフ5)、「日本耳」を持っている人がすべての項目において勝っています。
③日本耳を持っている人は、人生を豊かに過ごしている
<「日本耳」を持つ日本人は出世が早い>
調査対象500人中、働いている人(259人)を対象に職場での出世・昇給の早さを確認すると、「出世・昇給が比較的早い」人の割合は全体では35.9%なのに対し、「日本耳」を持っている人は56.0%に上る結果となり、明らかに出世・昇給が早いことがわかりました。さらに、「日本耳」を持っている人は、仕事が「できる方」(76.0%)で「職場の中では給料がいい」(52.0%)という、経済的に豊かな人が多いことが明らかになりました(グラフ6)。
<出世の早さの要因は、「日本耳」を持つ人のコミュニケーション能力の高さにあると推察>
コミュニケーション能力についての分析では、「日本耳」を持っている人は「コミュニケーション力が高く」(66.0%)、 「世渡りが上手」(46.8%)で 、「人付きあいが得意」(55.3%)などと自負しており、7項目全てにおいて「日本耳」を持っている人は、全体結果より10~30%高い数値であることが明らかになりました。このようなコミュニケーション能力の高さが出世・昇給の早さと関係があると推察されます(グラフ7)。
<クリエイティビティが身につく日本耳>
感性やセンス、クリエイティビティについて見てみると、日本耳を持っている人は、「感受性が強く」(80.9%)、「バイトや仕事で自分なりの工夫をする方」(74.5%)で、「面白い」(76.6%)「アイデアマン」(55.3%)と評価される傾向があり、自他共にクリエイティブな才能が評価されています(グラフ8)。
<日本耳は、語学習得にも効果がある>
語学力については、外国語が苦手な日本人らしく、残念ながら全体的に低い評価となっています。
しかしながら、「日本耳」を持っている人は「ヒアリングが得意」(66.0%)で、「発音が上手い」(46.8%)と評価され、半数は「英語が得意」(42.6%)で、3人に1人は「英語以外に得意な言語がある」(34.0%)と答え、語学学習能力に長けています(グラフ9)。「日本耳」は、語学習得にも効果があると言えるかもしれません。
■「日本耳」とよい機材、高音質
①「日本耳」を持っている人は、音楽を聴くときの音質や機材に対し、“こだわり”を持っていることが判明
音楽を聴くときの機材へのこだわりは、全体では30.8%がこだわるのに対し、「日本耳」を持っている人は7割以上(72.3%)が機材にこだわっており、その差は顕著です(グラフ10)。
音質についても同様の傾向で、「日本耳」を持っている人の83.0%が「音質にこだわる」と答えており、全体(48.0%)を大きく上回る状況です(グラフ11)。
②「日本耳」を持っている人は、いい機材といい音質で音楽を聴くことが、想像力を広げ、感性を豊かにしてくれると実感
いい機材で聴く音楽と想像力や感性の関係について聞くと、全体の6割以上がいい機材で音楽を聴くと「想像力が喚起され」(66.8%)、「感性が豊かになる」(65.6%)と答えていますが、日本耳を持っている人では「想像力が喚起される」(89.4%) 、「感性が豊かになる」(91.5%)ともに9割近くがその効果を認めています(グラフ12)。
いい音質で聴く音楽についても同様の傾向で、全体では7割(「想像力が喚起される」70.8%/「感性が豊かになる」71.4%)程度なのに対し、日本耳を持っている人では9割近く(「想像力が喚起される」87.2%、「感性が豊かになる」89.4% )がその効果を認めています(グラフ13)。
③機材や音質にこだわる「日本耳」を持つ人は、加齢に逆らい、聴く力がパワーアップすることが判明
「日本耳」を持っている人は数年前の若い頃よりも、現在聴く力が増していると感じている人が多く、そうではない人は逆にここ数年で聴く力が減りつつあることがわかりました。
聴く力が以前と比べて増した割合を見ると、「アナウンスや街頭のスピーカーなど雑多な音から必要な情報を聞き分ける能力」では、「日本耳」得点ランクが「低」の人が5.4%なのに対し、「日本耳」を持っている人(=「日本耳」得点ランク「高」の人)は51.1%(グラフ14-1)、「人と話していてもそれ以外の音を聞き分ける能力」は、「日本耳」得点ランク「低」の人は7.1%なのに対し、「日本耳」を持っている人は42.6%(グラフ14-2)。
「音から生じる想像力」は、「日本耳」得点ランク「低」の人の7.1%に対し、「日本耳」を持っている人は55.3%(グラフ14-3)、「音からその場の環境や情報を察する能力」は、「日本耳」得点ランク「低」の人の8.8%に対し、「日本耳」を持っている人は53.2%(グラフ14-4)と、「日本耳」を持っている人の成長ぶりがます。それ以外の人では、「減った」人の方が多いこととは対照的です。
聴力は視力と同様、年齢と共に低下すると言われていますが、感性や想像力も関連する総合力である「日本耳」の能力については、機材や音質にこだわって音楽を聴くことで、加齢に反し育てていける可能性があることがわかりました。
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