20年度の映画館・シネコン市場、コロナ禍で半減し過去10年で最少「鬼滅」なければ3分の1に縮小した可能性も
21年度は一転して回復予想 今後は動画配信サービスとの「差別化戦略」が主眼に
<ポイント>
コロナ禍でエンターテイメント業界が大打撃を受けるなか、映画館やシネマコンプレックス各社も大きな打撃を受けた。帝国データバンクの調査では、業績予測や見込みなどを含めた2020年度の映画館・シネコン市場(事業者売上高ベース)は1600億円前後にとどまる見通しとなった。過去最高を記録した2019年度(3100億円)から半減となるほか、過去10年で最少を更新するなど、コロナ禍の影響が鮮明となった。
TOHOシネマズなど大規模シネコンは売上半減、収容人数制限や新作の公開延期が業績にダメージ
シネコン最大手のTOHO シネマズ(東宝)における映画興行収入は、2020年度売上高が前年度比5割にとどまる461億円となった。その他の大手も、「イオンシネマ」(イオンエンターテイメント、320億円)やユナイテッド・シネマ(133億円)、東映傘下のティ・ジョイ(116億円)などでも売上高が前年度比で約5割にとどまった。また、「MOVIX」を運営する松竹マルチプレックスシアターズ(SMT)は前年度から4割台の水準となるなど、総じてコロナ禍で映画館への客足が急速に遠のいたことが影響し、大手シネコン各社では大幅な減収を強いられた。
他方で、苦戦した大手とは対照的に地方の映画館や中小のミニシアターでは善戦傾向もみられた。大手シネコンや大型映画館では売上高が半減したのに対し、地方や中小・零細の映画館では平均で2割程度の減収にとどまった[飯島 大介3] ところが多い。規模の小さなミニシアターや名画座など、緊急事態宣言下での営業制限が大手に比べ緩やかだったほか、郊外型シネコンは自家用車で行けるメリットから客数の戻りが早い傾向がみられた。特に地方では、多くの娯楽が制限されたことから子供向け映画を目的としたファミリー層の戻りが収益回復の柱となった。
21年度の映画館・シネコン市場は回復見込むも、動画配信サービスとの差別化戦略が今後のカギに
映画興行にとっては大きな痛手となった2020年度だが、21年度は大きく落ち込んだ前年から急速に回復する見込みだ。コロナワクチンの接種状況や政府方針に左右されるなど先行きは依然として不透明なものの、集客力が期待できる新作映画の公開が控えていることなどから相応の売り上げ確保に対する期待感も高く、市場全体では過去最高の19年度には届かないものの相応の規模に落ち着きそうだ。東宝は、TOHOシネマズを含む映画興行事業の営業収入が21年5月までに128億円となり、前年同期比で200%超の大幅増収となった。大幅に減少した前年の反動増といった側面もあるものの、興行収入が100億円を突破した「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が好調なほか、今後も話題作の公開を年内に控えており、相応の集客が見込まれている。ユナイテッド・シネマも、コロナ禍で延期となった作品が順次公開される好材料を背景に、動員客数や売り上げが回復傾向に向かう見方を示している 。
- 20年度の映画館・シネコン市場は過去10年で最少の1600億円、「鬼滅」がなければ前年度の3分の1だった可能性も
- TOHOシネマズなど大規模シネコンは売上半減、収容人数制限や新作の公開延期などが業績にダメージ
- 21年度の映画館・シネコン市場は回復見込むも、動画配信サービスとの差別化戦略が今後のカギに
コロナ禍でエンターテイメント業界が大打撃を受けるなか、映画館やシネマコンプレックス各社も大きな打撃を受けた。帝国データバンクの調査では、業績予測や見込みなどを含めた2020年度の映画館・シネコン市場(事業者売上高ベース)は1600億円前後にとどまる見通しとなった。過去最高を記録した2019年度(3100億円)から半減となるほか、過去10年で最少を更新するなど、コロナ禍の影響が鮮明となった。
映画・シネコン市場は半減、 20年度は過去10年で最も少ない1600億円
TOHOシネマズなど大規模シネコンは売上半減、収容人数制限や新作の公開延期が業績にダメージ
シネコン最大手のTOHO シネマズ(東宝)における映画興行収入は、2020年度売上高が前年度比5割にとどまる461億円となった。その他の大手も、「イオンシネマ」(イオンエンターテイメント、320億円)やユナイテッド・シネマ(133億円)、東映傘下のティ・ジョイ(116億円)などでも売上高が前年度比で約5割にとどまった。また、「MOVIX」を運営する松竹マルチプレックスシアターズ(SMT)は前年度から4割台の水準となるなど、総じてコロナ禍で映画館への客足が急速に遠のいたことが影響し、大手シネコン各社では大幅な減収を強いられた。
大手各社は軒並み売り上げが半減 営業休止、制限などが大きな痛手に
他方で、苦戦した大手とは対照的に地方の映画館や中小のミニシアターでは善戦傾向もみられた。大手シネコンや大型映画館では売上高が半減したのに対し、地方や中小・零細の映画館では平均で2割程度の減収にとどまった[飯島 大介3] ところが多い。規模の小さなミニシアターや名画座など、緊急事態宣言下での営業制限が大手に比べ緩やかだったほか、郊外型シネコンは自家用車で行けるメリットから客数の戻りが早い傾向がみられた。特に地方では、多くの娯楽が制限されたことから子供向け映画を目的としたファミリー層の戻りが収益回復の柱となった。
21年度の映画館・シネコン市場は回復見込むも、動画配信サービスとの差別化戦略が今後のカギに
映画興行にとっては大きな痛手となった2020年度だが、21年度は大きく落ち込んだ前年から急速に回復する見込みだ。コロナワクチンの接種状況や政府方針に左右されるなど先行きは依然として不透明なものの、集客力が期待できる新作映画の公開が控えていることなどから相応の売り上げ確保に対する期待感も高く、市場全体では過去最高の19年度には届かないものの相応の規模に落ち着きそうだ。東宝は、TOHOシネマズを含む映画興行事業の営業収入が21年5月までに128億円となり、前年同期比で200%超の大幅増収となった。大幅に減少した前年の反動増といった側面もあるものの、興行収入が100億円を突破した「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が好調なほか、今後も話題作の公開を年内に控えており、相応の集客が見込まれている。ユナイテッド・シネマも、コロナ禍で延期となった作品が順次公開される好材料を背景に、動員客数や売り上げが回復傾向に向かう見方を示している 。
最大手のTOHO シネマズは、20年度比で4割超の売り上げ回復を見込む (写真=TOHOシネマズ外観)
ネット経由の映画支出はコロナ前から大幅増、 リアル映画館の支出は大幅減など二極化
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