Hacobu、一橋大学と共同研究成果を発表。MOVO Fleetデータを活用し、トラックドライバーの労働時間規制への影響を実証分析

データの力で物流課題を解決する株式会社 Hacobu は、国立大学法人一橋大学(所在地:東京都国立市、学長:中野 聡、以下「一橋大学」)と共同で、動態管理サービス「MOVO Fleet」の運行データをもとに、物流の「2024年問題」が、トラックドライバーの働き方に与える影響を実証研究しました。本研究成果は、2025年9月21日に開催された労働政策研究会議にて発表されました。

本研究の背景と取り組み意義
日本の物流を支えるトラックドライバーの長時間労働は、依然として深刻な社会課題です。2024年4月に施行された、自動車運転者の時間外労働時間の上限規制(年間960時間)は、ドライバーのワークライフバランス改善を目指す一方で、輸送能力の低下による物流クライシスへの懸念も広がっています。
こうした課題に対応するには、ドライバーの労働実態を正確に把握することが不可欠です。従来の公的統計や業界団体の調査でも労働時間や賃金のデータは収集されてきましたが、その多くは年1回の調査や事業者単位のアンケート形式にとどまり、日々の運行実態をドライバー単位で捉えることは困難でした。
このような背景から、一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科よりHacobuに研究協力の依頼がありました。
Hacobuが掲げる「Data-Driven Logistics®」と本研究の趣旨と合致し、動態管理サービス「MOVO Fleet」に記録されたデータを提供しました(※1)。2022年から2024年までの延べ20万件に及ぶ運行データを活用することで、ドライバー単位・事業所単位の精緻な分析を実現し、規制前後における労働時間や長時間運行の変化を、従来にない粒度で明らかにしました。
この取り組みは、まさに「Data-Driven Logistics® が社会課題を解決する」というHacobuの信念を体現するものです。
※1:個人や個社を特定できる情報は含まない
研究概要
研究期間:2022年〜2024年のデータを対象に分析
対象データ:動態管理サービス「MOVO Fleet」に記録された延べ約20万件の運行データ
分析対象:事業所単位・ドライバー単位・日単位の運行記録
分析手法:固定効果モデルを用いて、規制前後の運行時間や長時間運行の変化を検証
着目点:
運行時間の推移
長時間運行(1日13時間超)の発生割合
規制前後の変化(特に2023年と2024年を中心に比較)
研究チーム
一橋大学 ソーシャル・データサイエンス研究科 今井 晋 教授、小野田 祐 氏
労働政策研究・研修機構 小松 恭子 研究員
株式会社Hacobu 執行役員 CTO戸井田 裕貴
本研究の成果
本研究では、2022年から2024年にかけて「MOVO Fleet」に蓄積された延べ約20万件の運行データを用いて、労働時間規制がドライバーの働き方に与えた影響を分析しました。その結果、以下の3つの知見が得られました。
1.長時間運行を行っていた事業所ほど改善が顕著
規制前に長時間運行が多かった事業所では、2023年に最大約4時間、2024年に最大約1時間の運行時間の削減が確認されました。とくに長時間労働を抱えていた事業所ほど、規制に対応する形で改善を進めていたと考えられます。
2.規制開始前から運行時間の削減が進んでいた
2024年4月の規制施行直後よりも、2023年の同時期に運行時間の減少幅が大きいことが確認されました。規制が2024年4月から適用されることは約5年前から決まっていたため、事業者は猶予期間を活用して労働時間削減の取り組みを先行的に進めていたと考えられます。こうした事前対応の成果が、データ上でも確認されました。
3.ドライバー単位での労働時間の平準化
ドライバーごとの分析では、特に長時間運行を行っていたドライバーが、年間で長時間運行を減らす傾向が見られました。結果として、ドライバー間の負担が分散され、労働時間が平準化している傾向が確認されました。
本研究は、システムに記録された日々の運行記録レベルの運行データを用いて労働実態を分析したことで、従来の統計では把握できなかった、事業所・ドライバーごとの継続的な行動変化を可視化することができました。分析では事業所およびドライバーに固有の特性を統制していますが、今回の結果は規制の直接的な因果効果を結論づけるものではありません。
コメント
一橋大学 ソーシャル・データサイエンス研究科 今井 晋 教授

コメント:
「今をときめくeコマース、インターネット流通等において、実際の配送を担うトラック・ドライバーの方々こそがその大事な土台であり、本研究は詳細な運行記録のデータをもとにトラック・ドライバーの方々の日々の運行、そしてその労働条件の改善を目指す政策に焦点を当てました。データをご提供いただきましたHacobu社や関係者の皆様に厚くお礼を申し上げます。」
プロフィール:
一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科教授。1987年東京大学経済学部卒業、1998年ミネソタ大学大学院経済学博士号取得。
一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科博士前期課程 小野田 祐 氏

コメント:
「貴重なデータをご提供いただいた株式会社Hacobuと関係者の皆さまに感謝申し上げます。本研究が、実社会のデータを用いた政策評価の議論を深める一助となれば幸いです。」
プロフィール:
一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科博士前期課程在籍中。独立行政法人労働政策研究・研修機構アソシエイトフェロ—。2016年早稲田大学政治経済学部卒業。
労働政策研究・研修機構 小松 恭子 研究員

コメント:
「急速に変化する労働環境に対応するには、現場の実態を捉えた客観的データの蓄積とそれを踏まえた政策議論が重要と考えます。今回の共同研究の知見が、労働時間管理に関する理解や今後の議論を深める一助になることを願いつつ、データ提供に多大なご協力をくださった株式会社Hacobuをはじめ関係者の皆様に心より感謝申し上げます。」
プロフィール:
独立行政法人労働政策研究・研修機構研究員。2002年一橋大学経済学部卒業、厚生労働省を経て、2022年お茶の水女子大学大学院博士課程修了、博士(社会科学)。
Hacobu 執行役員 CTO 戸井田 裕貴

コメント:
「トラックドライバーの方々の働き方を改善し、持続可能な物流を実現していくことは、社会全体にとって極めて重要なテーマです。今回の共同研究では、MOVO Fleetの実データをもとに、法改正がドライバーの行動や事業者の取り組みにどのような変化をもたらしているかを科学的に明らかにすることができました。
Hacobuが掲げる 『Data-Driven Logistics®』 は、現場から生まれるデータを社会的資産に変えるという信念です。今後も学術機関や行政、物流事業者と連携しながら、データの力で物流の課題を解決し、誰もが安心して働き、持続可能に運べる社会を実現してまいります。」
プロフィール:
2011年gloopsにて、リードエンジニアとして大規模ソーシャルゲームの新規立ち上げや運用を複数タイトル経験した後、EMとして30名のエンジニアのマネジメント業務に従事。2017年株式会社Candeeに入社し、ライブコマースサービスの新規立ち上げに携わる。2019年からHacobuの執行役員CTOとして技術統括を担う。
今後の展望
Hacobuは今回の共同研究を契機に、学術機関・行政・事業者との産学官連携をさらに強化し、ドライバーの働き方改善や物流の効率化に資する取り組みを継続してまいります。
私たちが掲げる 「Data-Driven Logistics®」 は、物流現場で日々生まれるデータを社会の資産に変え、課題解決につなげるアプローチです。今後も、研究で得られた知見を実務や現場での改善に活かし、物流全体の生産性向上と持続可能な働き方の実現を後押ししていきます。
また、MOVOシリーズを通じて蓄積される多様な物流データを活用し、学術研究や社会課題の解決に寄与する新たな取り組みを推進していきます。
動態管理サービス「MOVO Fleet」について
車両の位置情報データの取得・分析ができる、物流に特化した動態管理サービスです。専用端末を車両に取り付けることで、リアルタイムの車両位置を可視化することができます。走行ルートや速度ログ、CO2排出量目安、着荷、停留など多角的にデータを蓄積。納品管理や輸配送先からの問い合わせ工数の削減、依頼先ドライバーの長時間運行の把握・改善などにお役立ていただけます。また、取得した走行・輸配送実績データから輸配送実態を可視化し、輸配送の課題解決に貢献します。緊急時や災害時におけるBCP(Business Continuity Plan)対策としてもご活用いただけます。
※MOVO Fleetの詳細はこちら>>
株式会社Hacobuについて
クラウド物流管理ソリューション「MOVO(ムーボ)」シリーズと、物流DXコンサルティング「Hacobu Strategy(ハコブ・ストラテジー)」を展開。 5年連続シェアNo.1(※2)のトラック予約受付サービス「MOVO Berth」、動態管理サービス「MOVO Fleet」、配⾞受発注・管理サービス「MOVO Vista」、⽣産・販売・在庫管理サービス「MOVO PSI」などのクラウドサービス、ドライバー業務支援アプリ「MOVO Driver」の提供をしています。データを武器に、企業間物流の最適化を⽀援します。
※2:出典 デロイト トーマツ ミック経済研究所『スマートロジスティクス・ソリューション市場の実態と展望【2024年度版】』https://mic-r.co.jp/mr/03240/ バース管理システム市場の売上⾼および拠点数におけるシェア
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