私営保育所の約6割は定員超過、幼稚園の約8割は定員割れ 半数以上の園長は、保育者の「待遇改善」や「育成の取り組み」が必要と認識
~ 「第2回 幼児教育・保育についての基本調査」報告 ~
私営保育所の約6割は定員超過、幼稚園の約8割は定員割れ
半数以上の園長は、保育者の「待遇改善」や「育成の取り組み」が必要と認識
―「保育の量の拡大」とともに、保育者に対する支援による「保育の質の充実」を―
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株式会社ベネッセコーポレーション(本社:岡山市)のシンクタンク「ベネッセ次世代育成研究所」は、2012年10~12月、全国の認可保育所・幼稚園の園長を対象に、「第2回 幼児教育・保育についての基本調査」を実施しました。回答総数は、保育所が3,705、幼稚園が1,377、認定こども園が139になります。
働く女性が増えるとともに、保育所に通う子どもは年々増えており、保育所の存在は重要性を増しています。特に、この数年来の不況に伴い、働くことを希望する母親は増加しており、東京・埼玉で認可保育所に入所できなかった保護者による異議申し立てが行われたことは記憶に新しいところです。
待機児童の問題が毎年報道される一方で、幼稚園は定員割れをするという状況があり、2012年8月には、3党合意による「子ども・子育て関連3法」が成立、認定こども園の制度改善が盛り込まれました。
今回の調査は、このような環境下で、幼稚園・保育所における幼児教育・保育の実態と課題を明らかにしたものです。保育所、幼稚園の定員充足率や非正規雇用の保育者の割合、認定こども園への移行に関する意思などを調査項目に入れたことが特徴の一つです。今後検討が進む、子育て環境整備のための国・地方自治体の施策立案・実行に役立つ資料となっています。
【 調査結果概要 】 ※詳細な調査結果(数値)を4ページ以降に掲載しています。
1. 保育所(0~2歳児)は定員超過、幼稚園(3~5歳児)は定員割れのアンバランス。
私営保育所の61.8%で、0~2歳児の園児数は定員より多くなっており(4年前調査より3.4ポイント増加)、約4園に1園は、定員数の125%以上を受け入れている。一方、3~5歳児を受け入れる私立幼稚園の79.4%、国公立幼稚園の94.2%が定員割れをしている。
2. 私立幼稚園で、「条件によっては、認定こども園に移行してもよいと思う」との回答は、約3園に1園にとどまる。認定こども園への移行を決める条件は、私立幼稚園(全体)の約6割が「施設整備費の保障」。
認定こども園に「条件によっては、移行してもよいと思う」と回答したのは、私立幼稚園36.0%、私営保育所15.4%にとどまった。「詳しい内容がわからないので、判断できない」は、私立幼稚園22.4%、私営保育所30.3%、「設置者の方針によるため、判断できない」は、私立幼稚園18.5%、私営保育所22.9%であった。また「移行は考えていない」は、私立幼稚園26.7%、私営保育所31.7%であった。※複数回答
また、「認定こども園に移行するかどうかを決める際に、特に重視する条件」について、私立幼稚園の62.2%が「移行するための施設整備費の保障」を、私営保育所の41.4%が「保育者の処遇(給与)を改善するための人件費の充実」を選択している。
3. 公立の幼稚園・保育所では、非正規雇用の保育者の割合が約半数となっている。
保育者に占める非正規雇用の保育者の割合は、国公立幼稚園で47.1%、公営保育所で54.2%となっている。
私立幼稚園は14.9%、私営保育所は40.2%であった。
4. 「保育者の資質の向上」のために必要なことについて、私立の幼稚園・保育所の約8割が「保育者の待遇改善」を選択。また半数以上が、保育者の育成のための多様な取り組みを挙げている。
「保育者の資質の向上」のために必要なこととして、私立幼稚園の77.2%、私営保育所の83.4%が「保育者の待遇改善」を選択した(全体の71.8%)。次いで、全体では「養成課程の教育内容の充実」(66.2%)、「保育者同士が学び合う園の風土づくり」(61.9%)の順番であり、保育者の育成のために、園内外での多様な取り組みが求められていることが明らかになった。
今回の調査では、保育所、幼稚園における乳幼児を取り巻く環境の厳しさが、前回の調査時点から継続している状況が改めて明らかになりました。
一つ目の課題は、「保育所と幼稚園の定員充足率のアンバランス」です。働く女性の増加に伴い、保育所への入所希望が増加して、定員超過(0~2歳児)や入園できない子どもがいる一方、幼稚園では定員割れ(3~5歳児)が起きています。こうした課題に対し、国では「認定こども園」制度の改善を進め、移行する園を増やそうとしています。しかしながら、本調査では私立幼稚園の約3園に1園のみが「条件によっては、移行してもよいと思う」と回答しているにすぎないのが現状です。認定こども園への移行を希望する園に対する「施設整備費の保障」「人件費の保障・充実」などを進めるとともに、先行している認定こども園の成功事例や課題、実践上の工夫に学びながら制度設計を行うことが必要だと考えられます。
もう一つの課題は、子どもが育つ環境の質をさらに充実させるための保育者に対する支援です。社会からの要請を受け、各園もそれに応える努力を懸命に行っています。一方で、園に求められる役割の拡大や保育者を取り巻く状況の厳しさは、本調査の自由回答からも読みとれます。
保育の量的な拡大は引き続き必要ですが、それだけで十分とはいえません。保育者が安心して働ける労働条件の改善や、専門性を高めるための研修機会の保障などの多様な取り組みを通した、保育環境の質の充実も必要です。それにより、子育て世代が安心して子どもを預けられる園が増えていくことが望まれます。また、保護者の側も家庭での親子の関わりの大切さを認識し、保育者とともに子どものよりよい育ちに向けて協力していくことが重要だと考えられます。
昨年8月に制定された「子ども・子育て関連3法」に基づく「子ども・子育て会議」が開始される予定です。施策の検討にあたっては、当調査の結果も参考に、子どもが、家庭で、園でよりよく学び、育つための環境整備が進められることを期待いたします。
【 調査の設計 】
第2回となる今回は、幼稚園、保育所、認定こども園に対して、共通項目を一部用いて実施しました(第1回は、2007年に国公私立幼稚園の調査を行い、2008年に保育所の調査を行いました)。今後4~5年ごとに実施することで、経年による変化の比較を予定しています。
◆本調査の特色
・幼稚園、保育所、認定こども園を対象に、経年による比較を前提に全国規模で実施した調査は他にない。
・保育所は「認可保育所」を調査対象にしている。
◆用語について
・保育所については、公設民営園があるため、「私営」「公営」という用語で公私の区分けを行った。幼稚園については、「私立」「公立」で区分けを行っている。
・園の先生は、保育所は保育士、幼稚園は幼稚園教諭が正式名称だが、本調査では「保育者」という言葉で統一している。
【 調査概要 】
・調査時期
2012年10月~12月
(第1回幼稚園調査:2007年6月、第1回保育所調査:2008年9~10月)
・調査対象
園児数30人以上(一部、園児数不明の園も含む)の国公私立幼稚園、公私立認可保育所、認定こども園の園長等 (※)
※園長・所長・施設長、副園長(教頭)・副所長・副施設長、主任など
・調査地域
日本国内全域
・調査方法
郵送法 (自記式アンケートを郵送により配布、回収)
全体:配布29,100園(国公立幼稚園2,700、私立幼稚園5,000、公営保育所9,700、私営保育所10,900、認定こども園800)、回収5,221園
国公立幼稚園:回収456園 回収率16.9% (第1回:28.2%)
私立幼稚園:回収921園 回収率18.4% (第1回:21.2%)
公営保育所:回収1,362園 回収率14.0% (第1回:26.4%)
私営保育所:回収2,343園 回収率21.5% (第1回:23.9%)
認定こども園:回収139園 回収率17.4%
・調査の目的
園の教育・保育活動、子育て支援活動、園の体制等に関する実態と園長の意識を探る
・調査・分析
無藤 隆(監修:白梅学園大学) 、汐見 稔幸(監修:白梅学園大学)
磯部 頼子(調査顧問:ベネッセ次世代育成研究所 顧問)
後藤 憲子(同研究所 主任研究員)、持田 聖子(同研究所 研究員)
橋村 美穂子(同研究所 研究員)、真田 美恵子(同研究所 研究員・調査事務局)
・調査協力
浅村 都子(江東区白河かもめ保育園長)、安治 陽子(お茶の水女子大学)
池田 多津美(前港区立白金台幼稚園長)、塩谷 香(東京成徳大学)
高櫻 綾子(日本女子大学)、増田 まゆみ(東京家政大学)
渡邉 眞一(初音丘幼稚園長)
ベネッセ次世代育成研究所のホームページからも、本リリース資料をダウンロードできます。
http://www.benesse.co.jp/jisedaiken/
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