女性管理職の平均割合、過去最高も8.9%にとどまる
男性の育休取得推進、大企業は前向きも中小企業は足踏み
就業人口の減少や共働き世帯の増加などもあり、女性活躍は企業にとって必要不可欠となっている。家事負担の軽減などによる女性活躍の推進を主な目的に、2021年6月には男性の育児休業促進策を盛り込んだ育児・介護休業法が改正された。こうした動きがある一方で、政府が2020年までの目標達成を掲げていた「指導的地位に占める女性の割合30%」は未達成となり、期日は「2020年代の早期達成」へ修正されるなど、女性活躍社会を実現する道筋には厳しさが続いている。
<調査結果(要旨)>
■調査期間は2021年7月15日~31日、調査対象は全国2万4,285社で、有効回答企業数は1万992社(回答率45.3%)。なお、女性登用に関する調査は、2013年以降、毎年7月に実施し、今回で9回目
■本調査の詳細なデータは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している
女性管理職の平均割合は8.9%で過去最高、「女性管理職30%」達成企業は8.6%に
自社における従業員に占める女性の割合を尋ねたところ、女性従業員割合は平均26.5%となった(前年比0.7ポイント増)。「30%以上」と回答した企業[1]は33.0%となり、比較可能な2014年以降で最も高くなっている。また、女性従業員割合が10%に満たない企業は27.3%(「10%未満」と「0%(全員男性)」の合計)となり、前年から1.0ポイント減少した。
自社の管理職(課長相当職以上)に占める女性の割合は平均8.9%となり、過去最高を更新した。前年比1.1ポイント増となり、伸び幅もこれまでで最も大きい。また政府が目標として掲げている「女性管理職30%」を上回っている企業は8.6%で、依然として1ケタ台にとどまるものの過去最高となった。
自社の役員(社長を含む)に占める女性の割合は平均11.8%と、同1.0ポイント増加した。また、役員が全員男性とする企業は半数超にのぼった。
また、「女性管理職30%」を超えている企業を細かくみると、女性管理職割合の平均と同様の傾向がみられ、規模別では「小規模企業」が最も高かった。業界別では『小売』『不動産』が上位となり、『製造』『建設』『運輸・倉庫』の3業界は低水準にとどまっている。なお、従業員数別の2区分は、ほぼ同じ水準だった。
自社における女性管理職割合は5年前と比較してどのように変わったか尋ねたところ、「増加した」企業は20.7%となった。一方、「変わらない」とする企業は70.4%で7割を上回った。また、現在と比較して今後どのように変わると考えているか尋ねたところ、女性管理職の割合が「増加する」と見込んでいる企業は22.6%(前年比0.9ポイント増)で、前年までは減少傾向だったが今回調査では増加に転じた。「変わらない」は58.9%(同1.4ポイント減)だった。女性役員については、5年前と比較して「増加した」企業は8.7%(同横ばい)、今後「増加する」と考えている企業は7.9%(同1.0ポイント増)となった。いずれにおいても「変わらない」が7割以上を占めている。
自社において女性登用を進めているか尋ねたところ、進めている企業[1]は46.9%となった。過去最高だった2019年(50.0%)には達していないものの、大きく減少した2020年(42.6%)より4.3ポイント増加した。女性登用を進めている企業の内訳をみると、「社内人材の登用を進めている」は40.7%(前年比3.0ポイント増)、「社外からの登用を進めている」は11.5%(同1.3ポイント増)となり、それぞれ増加している。他方、約4割の企業では女性登用を「進めていない」結果となった。
男性の育休取得推進は大企業では前向きも、中小企業では人員の課題が浮き彫りに
2021年6月、出産や育児などによる労働者の離職防止や仕事と育児の両立を目的に、改正育児・介護休業法が施行された。なかでも2022年4月からは、男性の柔軟な育児休業取得の推進に向けた枠組みが創設される予定となっている。そこで、自社における男性の育休取得に関する推進状況を尋ねたところ、「積極的に取得を推進している」企業は9.5%だった。また、「今後推進する」[1]とした企業は41.1%となり、合わせて約半数の企業が男性の育休取得推進に前向きに考えている結果となった。一方で、「特に何もしない」と回答した企業は39.5%だった。
中小・小規模企業における人手不足が、育休の取得促進に向けて大きな課題
本調査によると、女性管理職(課長相当職以上)の平均割合は、前年からの増加幅とともに過去最高を更新した。政府目標である「女性管理職30%」を超えている企業の割合も増加し、女性役員や従業員も同様の傾向となるなど、総じて低水準ながらも上向いている結果となった。しかし、女性活躍を進めていない企業は約4割、女性管理職割合が今後も変わらないとする企業は約6割にのぼる。特に建設業、運輸・倉庫業からは、取り組みに前向きな意見もみられる一方で、採用面などにおいて難しさを感じているという声が多くみられた。
また、男性の育休取得に関する推進状況では、積極的に推進している企業は約1割となり、今後推進する企業を含めると約半数が前向きに考えている結果となった。しかし企業規模による差は大きく、中小・小規模企業では男性の育休取得推進に積極的ではない様子が色濃く表れている。
厚生労働省が7月30日に発表した「雇用均等基本調査」によると、2020年度における男性の育休取得率は12.65%となった。前年度比5.17ポイント増とこれまでより大幅に上昇し過去最高を更新したものの、政府が掲げていた「2020年までに13%」という目標には届かなかった。本調査からは「産休・育休と休業が続く場合に、代わりとなる人材がほとんどいないため、その間の業務の対応が課題」(金物卸売、愛知県)といった意見が少なくない。主に中小・小規模企業における人手不足が、育休の取得促進に向けて大きな課題となっている。
近年では国外でSDGsやESG投資の動きが広がり、国内においても管理職や役員への女性登用は企業価値の向上において重要な要素になりつつある。男性の育休推進など制度面の改善に加えて、女性登用を進めるためには経営の幹部候補となり得る女性を育成し、輩出することが欠かせない。しかし、「登用に向けてさまざまな制度を見直すなかで、育成や定着には相当の時間を要すると感じる」(界面活性剤製造、大阪府)との声にあるように、次世代の幹部候補が控えていない場合に急な管理職への登用は対応が難しいという側面がある。そのため、女性管理職の輩出に向けて、将来を見据えて現段階からリーダーシップ教育や職業訓練などを通じた人材育成に取り組む必要があろう。
- 女性管理職の割合は平均8.9%で、依然として低水準ながらも過去最高を更新した。前年比1.1ポイント増も過去最大の増加幅となった。政府目標である「女性管理職30%以上」を超えている企業は8.6%(同1.1ポイント増)だった。また、女性従業員の割合は平均26.5%(同0.7ポイント増)で、女性役員の割合は平均11.8%(同1.0ポイント増)
- 今後、女性管理職の割合が増えると見込んでいる企業は22.6%となり、前年より0.9ポイント増加した。大企業では33.9%となったが、中小・小規模企業ではそれぞれ19.1%、11.4%にとどまった。一方で、今後も「変わらない」と見込んでいる企業は58.9%と6割近くにのぼる
- 女性活躍を進めている企業の割合は46.9%となった。大きく落ち込んだ2020年(42.6%)から4.3ポイント増加している。その内訳をみると、「社内人材の登用を進めている」が40.7%(前年比3.0ポイント増)、「社外からの登用を進めている」が11.5%(同1.3ポイント増)だった。一方で、約4割の企業では女性登用を「進めていない」結果となった
- 自社における男性の育児休業取得に関する推進状況を尋ねたところ、「積極的に取得を推進している」企業は9.5%だった。「今後推進する」は41.1%となり、合わせて約半数の企業が男性の育休取得に対して前向きに考えていた。しかし、中小・小規模企業では大企業を大きく下回っており、育休により生じる人員不足への対応が難しいとの課題が浮き彫りとなった
■調査期間は2021年7月15日~31日、調査対象は全国2万4,285社で、有効回答企業数は1万992社(回答率45.3%)。なお、女性登用に関する調査は、2013年以降、毎年7月に実施し、今回で9回目
■本調査の詳細なデータは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している
女性管理職の平均割合は8.9%で過去最高、「女性管理職30%」達成企業は8.6%に
自社における従業員に占める女性の割合を尋ねたところ、女性従業員割合は平均26.5%となった(前年比0.7ポイント増)。「30%以上」と回答した企業[1]は33.0%となり、比較可能な2014年以降で最も高くなっている。また、女性従業員割合が10%に満たない企業は27.3%(「10%未満」と「0%(全員男性)」の合計)となり、前年から1.0ポイント減少した。
自社の管理職(課長相当職以上)に占める女性の割合は平均8.9%となり、過去最高を更新した。前年比1.1ポイント増となり、伸び幅もこれまでで最も大きい。また政府が目標として掲げている「女性管理職30%」を上回っている企業は8.6%で、依然として1ケタ台にとどまるものの過去最高となった。
自社の役員(社長を含む)に占める女性の割合は平均11.8%と、同1.0ポイント増加した。また、役員が全員男性とする企業は半数超にのぼった。
- 「30%以上」は、「100%(全員女性)」「70%以上100%未満」「50%以上70%未満」「30%以上50%未満」の合計。「10%未満」は、「5%以上10%未満」「5%未満」の合計
また、女性活躍推進法は2022年4月に改正法が施行され、女性活躍に関する情報公開の対象が、従業員数301人以上から101人以上の企業に拡大される予定となっている。それぞれの区分で女性管理職割合の平均をみると、従業員数が「301人以上」では6.5%(前年比0.3ポイント増)、「101人以上」では5.8%(同0.1ポイント増)だった。いずれの区分も前年度から微増となっているなか、今後は新たに情報公開の対象となる従業員数101人以上の企業において、どのような変化が表れるかが注目となろう。
また、「女性管理職30%」を超えている企業を細かくみると、女性管理職割合の平均と同様の傾向がみられ、規模別では「小規模企業」が最も高かった。業界別では『小売』『不動産』が上位となり、『製造』『建設』『運輸・倉庫』の3業界は低水準にとどまっている。なお、従業員数別の2区分は、ほぼ同じ水準だった。
女性の管理職割合が今後増加すると見込む企業は22.6%、前年比0.9ポイント増
自社における女性管理職割合は5年前と比較してどのように変わったか尋ねたところ、「増加した」企業は20.7%となった。一方、「変わらない」とする企業は70.4%で7割を上回った。また、現在と比較して今後どのように変わると考えているか尋ねたところ、女性管理職の割合が「増加する」と見込んでいる企業は22.6%(前年比0.9ポイント増)で、前年までは減少傾向だったが今回調査では増加に転じた。「変わらない」は58.9%(同1.4ポイント減)だった。女性役員については、5年前と比較して「増加した」企業は8.7%(同横ばい)、今後「増加する」と考えている企業は7.9%(同1.0ポイント増)となった。いずれにおいても「変わらない」が7割以上を占めている。
また、女性管理職割合が今後「増加する」と見込む割合を規模別にみると、大企業では39.9%となり全体(22.6%)を大きく上回った一方で、中小企業(19.1%)、小規模企業は(11.4%)は大企業を大きく下回った。女性役員割合についても同様の傾向がみられる。
女性登用を進めている企業は46.9%、落ち込んだ前年から4.3ポイント増加
自社において女性登用を進めているか尋ねたところ、進めている企業[1]は46.9%となった。過去最高だった2019年(50.0%)には達していないものの、大きく減少した2020年(42.6%)より4.3ポイント増加した。女性登用を進めている企業の内訳をみると、「社内人材の登用を進めている」は40.7%(前年比3.0ポイント増)、「社外からの登用を進めている」は11.5%(同1.3ポイント増)となり、それぞれ増加している。他方、約4割の企業では女性登用を「進めていない」結果となった。
- 「女性登用を進めている」は、「社内人材の登用を進めている」または「社外からの登用を進めている」のいずれかを回答した企業
男性の育休取得推進は大企業では前向きも、中小企業では人員の課題が浮き彫りに
2021年6月、出産や育児などによる労働者の離職防止や仕事と育児の両立を目的に、改正育児・介護休業法が施行された。なかでも2022年4月からは、男性の柔軟な育児休業取得の推進に向けた枠組みが創設される予定となっている。そこで、自社における男性の育休取得に関する推進状況を尋ねたところ、「積極的に取得を推進している」企業は9.5%だった。また、「今後推進する」[1]とした企業は41.1%となり、合わせて約半数の企業が男性の育休取得推進に前向きに考えている結果となった。一方で、「特に何もしない」と回答した企業は39.5%だった。
各割合を規模別にみると、「積極的に推進している」に加えて、特に「今後推進する」において大きく差が表れている。大企業では51.4%にのぼる一方で、中小企業では39.0%、小規模企業では28.8%にとどまっている。中小企業からは、「規模の小さい企業では育休などによる不足人員を埋めるのは、金銭的に厳しい」(一般機械器具卸売、福岡県)や「育休の影響によって派遣社員の雇用など期間限定の補充も視野に入れているが、復職後の時短勤務も会社および社員にとって負担が大きい」(飲食料品・飼料製造、静岡県)など、人員面に対する課題をあげる意見が多くみられた。
- 「利用実績が少ないが、今後取得を推進していく」と「取得しやすいように社内規定など(就業規則以外)を整備する」の合計
中小・小規模企業における人手不足が、育休の取得促進に向けて大きな課題
本調査によると、女性管理職(課長相当職以上)の平均割合は、前年からの増加幅とともに過去最高を更新した。政府目標である「女性管理職30%」を超えている企業の割合も増加し、女性役員や従業員も同様の傾向となるなど、総じて低水準ながらも上向いている結果となった。しかし、女性活躍を進めていない企業は約4割、女性管理職割合が今後も変わらないとする企業は約6割にのぼる。特に建設業、運輸・倉庫業からは、取り組みに前向きな意見もみられる一方で、採用面などにおいて難しさを感じているという声が多くみられた。
また、男性の育休取得に関する推進状況では、積極的に推進している企業は約1割となり、今後推進する企業を含めると約半数が前向きに考えている結果となった。しかし企業規模による差は大きく、中小・小規模企業では男性の育休取得推進に積極的ではない様子が色濃く表れている。
厚生労働省が7月30日に発表した「雇用均等基本調査」によると、2020年度における男性の育休取得率は12.65%となった。前年度比5.17ポイント増とこれまでより大幅に上昇し過去最高を更新したものの、政府が掲げていた「2020年までに13%」という目標には届かなかった。本調査からは「産休・育休と休業が続く場合に、代わりとなる人材がほとんどいないため、その間の業務の対応が課題」(金物卸売、愛知県)といった意見が少なくない。主に中小・小規模企業における人手不足が、育休の取得促進に向けて大きな課題となっている。
近年では国外でSDGsやESG投資の動きが広がり、国内においても管理職や役員への女性登用は企業価値の向上において重要な要素になりつつある。男性の育休推進など制度面の改善に加えて、女性登用を進めるためには経営の幹部候補となり得る女性を育成し、輩出することが欠かせない。しかし、「登用に向けてさまざまな制度を見直すなかで、育成や定着には相当の時間を要すると感じる」(界面活性剤製造、大阪府)との声にあるように、次世代の幹部候補が控えていない場合に急な管理職への登用は対応が難しいという側面がある。そのため、女性管理職の輩出に向けて、将来を見据えて現段階からリーダーシップ教育や職業訓練などを通じた人材育成に取り組む必要があろう。
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