イラン国境で深刻化するアフガン帰還民危機ー緊迫する情勢と強制送還

ワールド・ビジョンは主要な国境であるイスラム・カラで緊急支援を行っています

アフガニスタンに帰還した人々が集まる国境

イランからアフガニスタンへ帰還する人々の数が、今、かつてないほど急増しています。

人口の半分以上が人道支援に頼るアフガニスタンは、すでに深刻な人道危機にあります。

多くの人々が隣国イランに避難していた中、イラン当局は、200万人のアフガニスタン出身の在留者が就労し、公的サービスを受けるために不可欠な「人口登録証」の無効化を開始。不安定な中東情勢の緊迫化も重なり、2025年7月6日の出国期限が設定された2025年3月以降、64万人以上のアフガニスタン人がイランから帰還しています。主要な国境検問所のあるイスラム・カラだけでも6月1か月の間に22万2,729人が国境を越え、7月1日には1日で過去最高の2万4,333人が帰還しました。

しかし、受け入れ体制は脆弱で、帰還民の多くは、十分な食料も水もなく、住まいのあてもないまま国境に到着し、過酷な環境の中に立ち尽くしています。新たな人道危機が生まれています。

●砂埃の中で帰る家を求めて

「ヘラート市から西へ、イランとの国境へと向かう道。赤茶けた砂埃が視界を覆い、日中は焼けつくような熱気、夜には急激に気温が下がる過酷な環境で、大きな荷物を背負って背を丸めた人々や、泣き叫ぶ子どもを連れた疲れた様子の多くの家族が、ビニール袋やぼろぼろのスーツケースを積んだ手押し車を押す姿が列をなしていました。中には、歩くことのできない高齢者、障害者、病人を運ぶ人々の姿もあります。小さなカバンや袋しか持っていない人も少なくありません」

ワールド・ビジョン・アフガニスタンのアドボカシーならびにコミュニケーション責任者のマーク・カルダーは、現地の状況を報告しています。

今年だけでも、イランとパキスタンから120万人以上が帰還、または強制的に帰還させられていますが、その多くが帰る家や、これからの生計をたてる目途のないまま、祖国にたどりついています。

●帰還を強いられる現実──奪われる選択肢

ワールド・ビジョンが活動しているアフガニスタン西部の多くの農村では、働き盛りの大人の多くが女性です。男性の多くは、最低限の生活費を稼ぐためにイランへ渡っていました。

イランで日雇い労働をしていたという帰還民の一人アブドゥル・ワヒドさんは語ります。

「大家族を抱えていて、ここで仕事がなかったから、仕方なくイランへ行ったのです。子どもたちに食べさせることも、住む場所を与えることもできず、子どもたちの将来が心配です。私たちには住まいもお金もなく、どうしたらよいのか分かりません」

国境沿いのテントや仮設の施設の入り口には、基本的な物資の支援や治療を求めて人々が詰めかけています。何も持たずに帰還した若者たちが、旅費や、家族に連絡をとるために携帯電話やSIMカードを手に入れるために、悪質な業者によって過酷な労働を強いられる例も報告されています。しかし、押し寄せる帰還民に対して、支援体制は約500人分に限られているのが実情です。

●限界に達する支援と悪化する人道状況

アフガニスタンの経済は、不安定な政治のもとで、脆弱なインフラと公共サービス、特に女性や女児にとって限られた教育や技能訓練へのアクセス、雇用や生計の機会の不足が続いています。これらに加え、干ばつや洪水、季節外れの厳しい気象といった気候変動の影響が追い打ちをかけ、状況はさらに悪化しています。貧困が原因で、アフガニスタンでは350万人の子どもたちが急性栄養不良に陥っています。

国際社会の支援に頼らざるを得ない中で、資金援助額が今年に入り40%減少したことで、450の保健センターが閉鎖されました。最低限の生活費を稼ぐためにイランへ渡っていた人々の帰還は、すでに不足している支援への需要をさらに膨れ上がらせています。

●増大するニーズにワールド・ビジョンは対応しています                 

ワールド・ビジョンは、イランとの主要な国境検問所イスラム・カラのヘルプデスクを通じて現地で活動し、離散家族の再会を支援し、帰還民の緊急シェルター、食料、水、医療につなげています。

2025年3月と4月にはアフガニスタンで、36万9,738人に医療・教育・食料・生計支援を行いました。(うち9万5,226人は女の子)

■健康・栄養分野

  • 10万6,229人に、診療所での診察や初期治療を提供

  • 1万1,369人が母子保健サービス

  • 1万5,389人の5歳未満児の栄養観察を行い、栄養不良の1,897人の子ども に、栄養改善の取り組み開始

■水・食糧・衛生分野

  • 27万人以上に食料支援

  • 7万2,038人へ、清潔な水と衛生設備の支援

■教育分野

  • 690人の子どもにライフスキル教育 (※)

  • 207人が補習授業に参加

※ライフスキル:日常生活の問題に対処する能力。対人コミュニケーション、 感情のコントロール、ストレス対処等の方法

ワールド・ビジョンの建設した水道で安全な水を得る家族(2024年10月)

●難民支援募金にご協力ください

ワールド・ビジョンでは、アフガニスタンを始め、紛争の影響下にある国や地域で、水・衛生、食糧、栄養、教育など、今の困難を乗り越え未来を築くための支援を届けています。


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◆ワールド・ビジョン・ジャパンとは

キリスト教精神に基づき、貧困や紛争、自然災害等のために困難な状況で生きる子どもたちのために活動する国際NGO。国連経済社会理事会に公認・登録された、約100カ国で活動するワールド・ビジョンの日本事務所です。

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会社概要

URL
http://www.worldvision.jp/
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都中野区本町1-32-2 ハーモニータワー3F
電話番号
03-5334-5350
代表者名
片山信彦
上場
未上場
資本金
-
設立
1987年10月