MSF、GSKの肺炎予防ワクチン価格引き下げ決定を歓迎
グラクソ・スミスクライン社(GSK)は2016年9月19日、肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)価格を引き下げ、難民と危機に見舞われた子どもたちを対象に活動する人道援助団体に適用すると決定した。国境なき医師団(MSF)はこの決定を歓迎するとともに、もうひとつのワクチン製造企業であるファイザー社に対してもGSKの提案にならった最低価格の適用を求めている。
命を守るワクチン、途上国にも買いやすい価格設定を
MSFは7年にわたって、世界に2社しかない肺炎予防ワクチンのメーカー、GSKとファイザーに対し、より購入しやすい価格を求めて協議を続けてきた。GSKの価格引き下げは、MSFのような人道援助団体にとって、子どもたちを病気から守るための大きな一歩となる。MSFはファイザーもGSKの提案にならうとともに、引き続き両社に対して、途上国――購買力が低くPCVワクチンを標準的な小児予防接種パッケージに含められない国々に向けたワクチン価格についても引き下げを要望している。
MSFインターナショナル会長のジョアンヌ・リュー医師は「GSKは命の危機にある子どもたちに対する重要な一歩を踏み出しました。この価格引き下げによって、緊急医療の現場では、ようやく、子どもたちをこの致命的な病気から守る活動を拡大できるようになります。GSKは、今後もワクチン価格の低減努力を進めて、肺炎から子どもたちを守る費用を出せないでいる多くの途上国も、低価格での購入対象に加えていただきたく思います」と話す。
肺炎は小児死亡率の世界的な主因であり、毎年100万人弱の子どもの命を奪っている。紛争など人道危機のもとに生きる子どもたちは、特に肺炎になりやすい。肺炎はワクチンで予防できる病気であるにも関わらず、MSFは肺炎に罹患する多くの子どもたちを目にしている。
企業の善意に依存しなくてもすむように
しかし現在にいたるまで、MSFも他の人道援助団体も肺炎予防ワクチンを適正価格では買えなかった。2016年前半、MSFは、ギリシャにいる難民の子どもたちを対象とした予防接種実施にあたって、ファイザー製のワクチン1回分に対し60ユーロ(約6799円)を支払った。GSKとファイザーが設定する最低価格の20倍にあたる額だ。そこで、MSFは両社に対し、危機下の人びとと途上国に適用する肺炎予防ワクチンの価格を子ども1人当たり5米ドル(約508円、全3回分合計)に引き下げるよう求める署名運動を実施し、170ヵ国から41万6000筆以上の署名を集め、2016年5月にファイザーとGSKに提出した。
GSKは9月19日の発表をもって、人道援助団体を対象に子ども1人あたり9米ドル(約915円)、1回あたり3.05米ドル(約310円)で提供すると明言した。GSKの決定により人道援助団体にとって肺炎予防ワクチンは大幅に利用しやすくなるが、ファイザーの肺炎予防ワクチン(PCV13)はまだMSFをはじめとした援助団体にとって、多くの国で欠かせないツールであるにも関わらず、ファイザーは自社製品について人道援助団体を対象にした購入しやすい価格設定を拒否し続けている。人道援助関係者を対象に価格を引き下げるかわりに、ファイザーの提案はこれまでのところ、寄贈プログラムにとどまっている。MSFは、任意で行われる企業の善意に依存しないですむよう、ワクチンが購入しやすく持続可能な価格に設定されるよう求めている。
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