『紙おむつによる乳幼児の肌荒れメカニズムとその低減策の提案』について第44回日本小児皮膚科学会学術大会にて発表
エリエールブランドのベビー用紙おむつ「グーン」を展開する大王製紙株式会社(住所:東京都千代田区)は、グリセリンを含む保湿剤を不織布に塗布することで不織布表面の摩擦抵抗値が低減することを実証しました。また、東京工科大学 正木仁教授と共同研究を行い、乳幼児の皮膚に近い三次元幼若皮膚モデルを用いて、同不織布が肌に触れた時に肌荒れリスクが低減するか検証しました。本研究内容を第44回日本小児皮膚科学会学術大会(オンライン開催)にて発表しました。
■背景
1.グリセリン処理不織布による摩擦刺激低減について
グリセリンを主成分とする保湿剤を表面に処理した不織布の摩擦刺激低減効果についてグリセリンを処理していない一般的な不織布と、グリセリンを処理した不織布のKES装置※1による摩擦データを比較しました。表面を触ったときの「すべりにくさ」を表す数値(左グラフ)、表面を擦ったときの「ざらつき」を表す数値(右グラフ)の両方について、グリセリン処理によって低下する傾向にありました。上記の結果から不織布にグリセリンを処理することで「すべりやすく、なめらか」となることがわかりました。
※1 KES装置 …人が手で触れる動作を機械化し、客観的な数値データとして「なめらかさ」「ざらつき感」等を定量化する装置
2.三次元幼若皮膚モデルによる皮膚刺激低減メカニズムの解析
三次元幼若皮膚モデルを用いて、グリセリン処理にて表面の摩擦抵抗値を低減させた不織布の肌荒れリスク低減効果のメカニズムを解析しました。
【三次元幼若皮膚モデルを用いた解析方法】
再生表皮モデル※2の中でも乳幼児の皮膚に近い幼若皮膚モデルの上に不織布サンプルを乗せ3日間培養したのち、肌荒れに関係する因子の量の変化を観察しました。『炎症性サイトカインIL-1α』は皮膚の炎症に応答して分泌される物質で、多いほどトラブルの起きやすい肌となります。『フィラグリン』は角層細胞で水分を保持する天然保湿因子NMFの前駆タンパク質であり、少ないほどトラブルの起きやすい肌となります。
※2 再生表皮モデル …ヒト表皮細胞を培養し、人の表皮を再現したもの。実際の人の皮膚の代わりに皮膚刺激性を評価することができる
皮膚モデルの上に不織布を乗せない場合(未処理コントロール)に比べ、一般的な不織布を上に乗せた場合(未処理不織布モデル)の方が、図2の『炎症性サイトカインIL-1α』の分泌量の数値が高く、かつ図3の緑色で染色されている『フィラグリン』の発現量が低くなっていることから、外部刺激を受けてトラブルの起きやすい皮膚となっていることがわかりました。一方、上に乗せる不織布をグリセリン処理不織布にした場合、一般的な不織布を乗せた場合に比べてIL-1αの分泌量が低く、フィラグリンの発現量が高くなる傾向が見られました。これにより、グリセリンを付与することによって比較的、不織布による皮膚刺激性が軽減されることがわかりました。
■まとめ
三次元皮膚モデルの結果から、不織布が接触することで『炎症性サイトカインIL-1α』の分泌量が増加し、天然保湿因NMFの前駆タンパクである『フィラグリン』の発現量が低下することが確認されました。
それに対し、グリセリン処理により摩擦抵抗を低下させた不織布では上記現象が低減していたことから、紙おむつにグリセリン処理不織布を採用することによって肌荒れリスクを低減させ得る可能性があることがわかりました。
今回の検証では、不織布の肌への接触における刺激を低減させることによって、肌荒れを引き起こす因子の変化が抑制されることがわかりました。子育て中の77%の方がお子様のお尻の肌トラブルを経験している今、乳幼児の肌に直接あたるおむつ表面の不織布をできる限りなめらかにすることで、肌トラブルのリスクを低減させることが可能になると考えます。今回の技術を用いて、表面がなめらかで肌刺激の少ない紙おむつの商品開発を行っていきます。
当社は今後も、生活者の方がどんなときも安心して使える紙おむつを目指し、肌トラブルを防ぐための研究を多様な観点から進めてまいります。
■正木 仁 教授 プロフィール
東京工科大学 応用生物学部 応用生物学科教授。
皮膚科学、化粧品学、光生物学、細胞生物学を専門とし、紫外線や活性酸素による皮膚への影響、肌トラブルの原因、メカニズムについて研究を行っています。
当社調べでは子育て中の77%の人がお子様のおしりに肌トラブルが発生した経験があると回答しており、そのメカニズムの解明と対策が求められています。そこで本研究では、おむつ装着による肌荒れのリスクを軽減させるために、紙おむつの表面シート不織布に保湿剤を塗布することで肌への刺激が軽減できるか検証を行いました。
■結果
1.グリセリン処理不織布による摩擦刺激低減について
グリセリンを主成分とする保湿剤を表面に処理した不織布の摩擦刺激低減効果についてグリセリンを処理していない一般的な不織布と、グリセリンを処理した不織布のKES装置※1による摩擦データを比較しました。表面を触ったときの「すべりにくさ」を表す数値(左グラフ)、表面を擦ったときの「ざらつき」を表す数値(右グラフ)の両方について、グリセリン処理によって低下する傾向にありました。上記の結果から不織布にグリセリンを処理することで「すべりやすく、なめらか」となることがわかりました。
※1 KES装置 …人が手で触れる動作を機械化し、客観的な数値データとして「なめらかさ」「ざらつき感」等を定量化する装置
図1.グリセリン処理による摩擦抵抗値の変化
2.三次元幼若皮膚モデルによる皮膚刺激低減メカニズムの解析
三次元幼若皮膚モデルを用いて、グリセリン処理にて表面の摩擦抵抗値を低減させた不織布の肌荒れリスク低減効果のメカニズムを解析しました。
【三次元幼若皮膚モデルを用いた解析方法】
再生表皮モデル※2の中でも乳幼児の皮膚に近い幼若皮膚モデルの上に不織布サンプルを乗せ3日間培養したのち、肌荒れに関係する因子の量の変化を観察しました。『炎症性サイトカインIL-1α』は皮膚の炎症に応答して分泌される物質で、多いほどトラブルの起きやすい肌となります。『フィラグリン』は角層細胞で水分を保持する天然保湿因子NMFの前駆タンパク質であり、少ないほどトラブルの起きやすい肌となります。
※2 再生表皮モデル …ヒト表皮細胞を培養し、人の表皮を再現したもの。実際の人の皮膚の代わりに皮膚刺激性を評価することができる
皮膚モデルの上に不織布を乗せない場合(未処理コントロール)に比べ、一般的な不織布を上に乗せた場合(未処理不織布モデル)の方が、図2の『炎症性サイトカインIL-1α』の分泌量の数値が高く、かつ図3の緑色で染色されている『フィラグリン』の発現量が低くなっていることから、外部刺激を受けてトラブルの起きやすい皮膚となっていることがわかりました。一方、上に乗せる不織布をグリセリン処理不織布にした場合、一般的な不織布を乗せた場合に比べてIL-1αの分泌量が低く、フィラグリンの発現量が高くなる傾向が見られました。これにより、グリセリンを付与することによって比較的、不織布による皮膚刺激性が軽減されることがわかりました。
図2.三次元幼若皮膚モデルにおけるIL-1αの分泌量 測定結果
図3.三次元幼若皮膚モデルにおけるフィラグリン染色の結果
■まとめ
三次元皮膚モデルの結果から、不織布が接触することで『炎症性サイトカインIL-1α』の分泌量が増加し、天然保湿因NMFの前駆タンパクである『フィラグリン』の発現量が低下することが確認されました。
それに対し、グリセリン処理により摩擦抵抗を低下させた不織布では上記現象が低減していたことから、紙おむつにグリセリン処理不織布を採用することによって肌荒れリスクを低減させ得る可能性があることがわかりました。
■当社のコメント
今回の検証では、不織布の肌への接触における刺激を低減させることによって、肌荒れを引き起こす因子の変化が抑制されることがわかりました。子育て中の77%の方がお子様のお尻の肌トラブルを経験している今、乳幼児の肌に直接あたるおむつ表面の不織布をできる限りなめらかにすることで、肌トラブルのリスクを低減させることが可能になると考えます。今回の技術を用いて、表面がなめらかで肌刺激の少ない紙おむつの商品開発を行っていきます。
当社は今後も、生活者の方がどんなときも安心して使える紙おむつを目指し、肌トラブルを防ぐための研究を多様な観点から進めてまいります。
■正木 仁 教授 プロフィール
東京工科大学 応用生物学部 応用生物学科教授。
皮膚科学、化粧品学、光生物学、細胞生物学を専門とし、紫外線や活性酸素による皮膚への影響、肌トラブルの原因、メカニズムについて研究を行っています。
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