宇都宮ライトレール開業直前！LIFULL HOME'S PRESSが沿線の賃貸市場動向を調査
沿線物件の問合せが前年比54%増、新築賃貸への問合せは前年比587.5%増 沿線の交通利便性向上に伴う居住ニーズの高まりが明らかに
URL：https://www.homes.co.jp/cont/press/report/report_00304/
2023年8月26日（土）に芳賀・宇都宮LRT（以下、宇都宮ライトレール）の開業を予定している栃木県宇都宮市・芳賀町は、国内では75年ぶりに路面電車が新設される地域となります。LRT（Light Rail Transit：ライトレールトランジット）とは、車両や駅のみならず、乗降のアクセス性や他交通機関との連続性といったソフト面を含めた概念で、まちづくりと密接に関係した交通システムです。LRTの整備をはじめとした公共交通網の再編によって誰もが移動しやすい交通環境が作られることで、軌道や停留所の周辺だけでなく広い範囲にその恩恵が波及することが期待されています。
今回新設される宇都宮ライトレールでは、JR宇都宮駅東口から芳賀・高根沢工業団地までの14.6kmの軌道と19の停留所が整備され、東西の基幹交通となることで、沿線の交通利便性が高まり、それに伴う居住ニーズの上昇が想定されます。そこでLIFULL HOME’Sでは沿線の賃貸市場動向を調査しました。
沿線の賃貸物件への問合せは前年比54.0%増！ 周辺地域と比べて問合せが増加
2023年3月にLIFULL HOME'Sに掲載された居住用賃貸物件へ寄せられたユーザーからの問合せのうち、宇都宮ライトレール沿線の物件への問合せは、前年同月比で＋54.0%となりました。一方、宇都宮市・芳賀町のその他の町域では同－1.9%となっています。掲載物件数は沿線で同＋7.6%、その他で同＋5.1%の増加にとどまっていることから、地域内において宇都宮ライトレール沿線の居住ニーズが増加しているといえます。
新築物件はさらに顕著！ 沿線の新築賃貸への問合せは前年比587.5%増
新築賃貸物件に限ると、2023年3月に宇都宮ライトレール沿線の物件へ寄せられた問合せは、前年同月から＋587.5%となりました。同地域では掲載された新築物件の数も＋142.7%となるなど、例年より多くの新築物件が供給されているにもかかわらず、問合せ数の増加幅は物件数の増加幅と比べても大きいものとなっています。なお、その他町域の2023年3月の新築物件への問合せ数は前年同月比＋8.1%、新築物件の数は同－16.7%となっています。
沿線では、賃料水準も上昇中
宇都宮ライトレール沿線では賃料水準にも上昇がみられます。2023年4月の沿線の平均賃料は6万7,626円で前年同月比＋10.9%となりました。一方、その他町域の平均賃料は5万8,100円で同＋4.8%にとどまり、沿線はその他町域よりも賃料の上昇幅が大きくなっています。
宇都宮ライトレールは当初2022年3月の開業を予定していましたが、2021年1月に新型コロナウイルス感染症の影響などで開業の1年延期を発表。その後、工事の遅れからさらに開業が遅れることとなり、2022年8月に地元新聞が、2023年8月の開業を報じました。沿線の平均賃料は最初の開業延期が判明した後下落に転じますが、再度開業月が報道された2022年の夏以降は、現在まで上昇を続けています。
新築物件に限ると平均賃料は2020年10月から2023年4月にかけて宇都宮ライトレール沿線では31.9%上昇、その他町域では19.6%の上昇となっていて、沿線では供給される新築物件の賃料水準がその他町域よりも上昇しています。沿線での賃料水準の上昇には、こうした新築物件の供給が増加したことも影響していると推察されます。
調査担当 LIFULL HOME'S PRESS編集部 渋谷 雄大（しぶや たけひろ）のコメント
LRTは現在世界約240の都市で導入され、市街地への自動車の進入規制やトランジットモールの整備などの施策とセットで、交通渋滞の改善を促し、街への来訪者を増加させるなど、都市を変化させています。一方日本では、交通インフラが基本的に独立採算で運営されるなどの導入ハードルの高さゆえ、先行都市では富山ライトレールなどがありますが、新設都市としては今のところ宇都宮市と芳賀町のみであり、LRTが両都市の街の活性化にどのようにつながるのか、関心がもたれます。
海外の研究では、LRTの駅近くの住宅とそれ以外の住宅を比較したとき、11都市中9都市でLRT駅近くの住宅賃料（または価格）の上昇が大きかったということも報告もされています(※)。宇都宮市・芳賀町においては直近1年でLRT沿線の住宅賃料が他の地域よりも上昇傾向にあり、さらに宇都宮駅西側への延伸も計画されていることから、今後の動向にも注目です。
LRTは都市のインフラです。導入後の効果を最大化するために、他交通機関との連携強化、歩行者中心の道路空間の整備などに引き続き取組むことが求められます。そのためには、行政だけでなく、街に住む人がLRTをきっかけとした魅力あるまちづくりをしていくことが大切だと考えます。
※ Carmen Hass-Klau, Graham Crampton and Rabia Benjari(2004). Economic Impact of Light Rail: the results of 15 urban areas in France, Germany, UK and North America, Environmental and Transport Planning, pp. 1-2
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URL：https://www.homes.co.jp/cont/press/report/report_00304/
調査概要
調査対象：
LIFULL HOME'Sに掲載された以下の地域の居住用賃貸物件
【宇都宮ライトレールの沿線】
軌道敷から2kmの範囲に町域をもつ町丁のうち、一定数以上の物件が掲載されている町丁（宇都宮市ゆいの杜1～8丁目、越戸1～4丁目、下平出町、刈沼町、宮みらい、元今泉1～ 8丁目、宿郷1～3・5丁目、城東1・2丁目、清原台1～5丁目、石井町、川向町、泉が丘1～7丁目、竹下町、中久保1・2丁目、中今泉1～5丁目、東今泉1・2丁目、東宿郷1～6丁目、東峰町、東簗瀬、板戸町、氷室町、平出町、平松町、平松本町、峰1～4丁目、峰町、野高谷町、陽東1～8丁目、簗瀬3・4丁目、鐺山町、芳賀町大字下高根沢、大字東水沼）
【その他の町域】
宇都宮市・芳賀町のうち、「宇都宮ライトレールの沿線」をのぞく町丁
期間：2021年10月～2023年4月
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