動物のアフリカ・トリパノソーマ症撲滅に向け、新たなパートナーシップを締結
- ビル&メリンダ・ゲイツ財団、英国政府外務・英連邦・開発省(外務省)、ベーリンガーインゲルハイム、およびGALVmedが協力し、動物のアフリカ・トリパノソーマ症（AAT）に対する医学的ソリューションを探求
2023年9月5日 ドイツ／インゲルハイム
ビル&メリンダ・ゲイツ財団、英国政府外務・英連邦・開発省、ベーリンガーインゲルハイム、およびGALVmed(グローバル・アライアンス・フォア・ライブストック・ベトナリー・メディシン、ライブストック医薬品のためのグローバルアライアンス）は、動物のアフリカ・トリパノソーマ症（AAT）の撲滅に向けたソリューションを探索する新たなパートナーシップを締結したことを発表しました。
AATは、脊椎動物の疾病で、牛、水牛、馬、羊、山羊、豚、犬などに影響を及ぼします。AATは、寄生原虫類のTrypanosoma congolense、Trypanosoma vivax、また、発生率は低いもののTrypanosoma brucei bruceiによって引き起こされる病気で、主にツェツェバエ（Glossina spp.）によって伝播し、アフリカでは大きな問題となっています。Trypanosoma vivaxによる感染は南米の北部でも見られ、サシバエ（Stomoxys）やアブ（Tabanid）などの刺咬性ハエによって伝播します。さらに最近では、中東でも報告されています。
感染すると、感染性寄生虫が宿主動物の血液中で増殖し、発熱、虚弱、倦怠感、貧血などを引き起こし、体重減少、繁殖能力や乳量の低下につながり、死に至る場合もあります。
AATは、アフリカでツェツェバエの分布が確認されている地域(ツェツェベルト地帯)の5,000万頭以上の牛が感染の脅威にさらされています(1)。しかしながら、牛の行動や移牧、および刺咬性ハエによるT. Vivaxの伝播リスクなどからツェツェベルト地帯以外の牛への影響も考慮すると、その影響は9,000万頭にも上ると推定されます(2)。また、AATによる牛の死亡は、年間300万頭と考えられています(2)。肉・乳生産量の減少といったAAIに直接的に起因する損害と、治療やツェツェバエの防除にかかる費用は合計で年間10億米ドルを超えると推定され(3)、農業関連の国内総生産（GDP）における損害は、アフリカの感染地域全体において年間45億米ドルにも上ると考えられます(4)。
世界保健機関（WHO）が撲滅の対象に挙げているヒト・アフリカ・トリパノソーマ症に関しては、官民の連携関係により大きな進展が見られています（WHO, 2020a）(5)。それとは対照的に、AATに対するコントロールは限定的なものにとどまっています。AATは、宿主となる畜種の多様性、寄生虫と媒介するハエの関係性、感染源が野生動物であることなど、多くの理由からヒト・アフリカ・トリパノソーマ症よりも複雑で管理しにくい疾病です。ワクチンが存在せず、費用効果の高い診断ツールもなく、現在使われているAAT治療薬は偽造や薬物耐性の課題を抱えているなど、既存の疾病管理方法では不十分であると考えられています。さらに、AAT発生国のほとんどが発展途上国であり、家畜の風土病を監視・管理するリソースが限られています。今回、新たに発表されたビル&メリンダ・ゲイツ財団、英国政府外務・英連邦・開発省、ベーリンガーインゲルハイム、およびGALVmedによる提携は、AATに対処する新しいソリューションを見出し、提供することを目的としたものです。
ビル&メリンダ・ゲイツ財団、英国政府外務・英連邦・開発省、ベーリンガーインゲルハイム、およびGALVmedは、他の学術・国際プロジェクトと協力して研究を行い、AATに対処するソリューションの開発を進めていきます。新しい動物用医薬品の開発には、長い年月がかかります。また、複雑なプロセスであるため、極めて有望な新たなソリューションを生み出して届けられるまでには、パートナーシップを通じて多くの作業が必要になります。このパートナーシップでは、AATに対する新たなソリューションを2030年までに上市することを目指しています。
参照:
1.Cecchi G, Mattioli RC. Geospatial datasets and analyses for an environmental approach to African trypanosomiasis. PAAT technical and Scientific Series 9. Rome: FAO, 2009.
2. de Mendonça C. “Nagana” Info for Coms. [Presentation]. BIV, 2021.
3. Grace D, Songe M, Knight-Jones T. Impact of neglected diseases on animal productivity and public health in Africa. Proceedings of 21st Conference of the World Organisation for Animal Health (OIE) regional commission for Africa, 16-20 February 2015, Rabat, Morocco: Nairobi. ILRI; p 16.
4. Shaw APM. Economics of African trypanosomiasis. In: Maudlin I, Holmes PH, Miles MA, editors. The Trypanosomiases. Wallingford: CABI International; 2004. p. 169–402. doi: 10.1079/9780851994758.0369
5. WHO: Ending the neglect to attain the sustainable development goals: a road map for neglected tropical diseases 2021–2030. World Health Organization, Geneva. 2020a.
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（アニュアルレポート 英語）
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この資料は、ドイツのベーリンガーインゲルハイム（Boehringer Ingelheim GmbH）が9月5日に発表したプレスリリースをもとに日本語に翻訳したものです。なお、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈については英語のオリジナルが優先することをご了承ください。
https://prtimes.jp/a/?f=d2981-364-7895608a8eb4f124d3e24f77ba72c8ca.pdf
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