ヘアケア研究への挑戦、大人の髪悩みに“サイエンス”で最適解を
頭皮と毛髪を科学し、根本的解決を目指すヘアケア研究
ロート製薬株式会社(本社:大阪府大阪市、社長:杉本雅史)は、安全性・有効性・メカニズムを追求するエビデンスベースの研究開発により、お客様一人ひとりに寄り添った機能性の高い製品を提供するために、うねり・白髪・ぱさつきなど毛髪の加齢による不可逆な悩みを解決すべく、ヘアケア領域の研究をすすめています。これまでのニオイやフケのような特定の悩みに対する研究に加えて、頭皮や毛髪自体に対する新たな研究にも挑戦し、今ある製品に満足していないお客さまの悩みを、再生医療着想の研究や分子レベルでの解析などサイエンスの力で解決していきます。
スキンケアだけではなくヘアケアにも“サイエンス”という選択肢を
当社がヘアケア領域の研究開発を開始したのは、オバジでのスキンケア本格参入の2001年より前、1995年。長年、ニオイ、かゆみやフケなどの頭皮トラブル、薄毛など、お客さま各々の頭皮・髪悩みに対して研究開発を行ってきました。
現在のヘアケア製品は世界観や仕上がりで選ぶことができる一方で、自分の髪悩みに応じた選択が十分にできず、自分に合うヘアケア製品がわからないという声があります。それに対して、スキンケア製品は、自分の肌悩みや肌の構造、成分の効果といった情報をもとに選ばれる傾向があります。つまり、ヘアケアではスキンケアのようにサイエンスに基づいた十分な情報が得られにくいということが、自分の髪悩みにあう製品を納得して選べていない一つの原因だと考えました。そこで、当社はヘアケアにサイエンスという新しい選択肢を提供するために、頭皮や毛髪そのものの研究に挑戦し、お客様が納得して製品を選択できるようなエビデンスに基づいた製品開発を行っています。今ある毛髪だけでなく将来の毛髪まで健やかにすべく、不可逆な変化であるエイジング悩みに代表されるような様々なお客様の髪悩みの根本解決を目指し研究に取り組んでいます。
今回は、様々な研究の中から再生医療と毛髪の構造解析に関わる下記2テーマについてレポートします。
1)脂肪幹細胞研究を応用したエイジング頭皮研究
2)毛髪の内部構造にアプローチしたうねり研究
1) 脂肪幹細胞研究を応用したエイジング頭皮研究
■ 毛包は皮膚の一部
一般的にヘアケア領域では、毛髪や毛包に着目した研究が主流とされてきましたが、近年、頭皮環境が毛包に影響を及ぼすことが注目されつつあります。私たちは、これまでに再生医療や皮膚領域において脂肪幹細胞のはたらきについて研究を重ねてきました。従来の研究に加え、毛包を皮膚の一部と捉えることで、これまでに培ってきた知見をヘアケア分野に応用することが可能であると考え、脂肪幹細胞に焦点を当て研究を開始しました。
■ 脂肪幹細胞の頭皮での役割
女性では30代後半から70代にかけて、頭皮の皮下組織の厚みが減少し菲薄化、いわゆる「頭皮やせ」の状態になることが知られています。皮下組織は脂肪幹細胞が分化した脂肪細胞によって作られており、この脂肪幹細胞は、加齢によりその数が減少することが報告されています。また、脂肪幹細胞は様々な分泌因子を放出することで、毛周期や毛幹伸長に関与しています。そこで私たちは、脂肪幹細胞は頭皮の状態を整えるだけではなく、健やかで美しい毛髪を維持するために重要であると考え、脂肪幹細胞の数を増やすアプローチについて検討を行いました。
■ 脂肪幹細胞の増殖を促進するアプローチ
再生医療研究から、脂肪幹細胞の増殖には足場が重要であり、中でもコラーゲンは脂肪幹細胞の生育によい環境を提供することが報告されています。脂肪幹細胞はコラーゲンを産生する力を持っていますので、脂肪幹細胞に作用しコラーゲンの産生を促進する素材の探索を行い、細胞の生育の場を拡張することを期待しました。
その結果、加水分解シロバナルーピンタンパクに非常に高いコラーゲン産生促進作用があることを見出しました(図3)。また、これまでのスキンケア研究の知見を活かして、脂肪幹細胞の増殖に直接作用するトリペプチド1-銅、細胞の遊走に作用するカプロオイルテトラペプチド-3を組み合わせることで、効果的な脂肪幹細胞の増加が期待できます。
2) 毛髪の内部構造にアプローチしたうねり研究
■ うねりの原因は毛髪内部のゆがみ
これまでの調査*で、くせ毛に悩む女性の多くが年齢を重ねるにつれて髪質の変化やうねりを感じていることがわかりました。毛髪は多数の組織で成り立っていることが知られており、うねりは組織のゆがみで生じることが知られています。一方で毛髪組織の詳細な内部構造の解析や毛髪に作用する成分の作用メカニズムについての知見は少なく、うねり改善効果があると知られている成分であるトステア(アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウム)についても効果を裏付ける作用メカニズムや浸透の状態は明らかにされていませんでした。
*クセ毛悩みのある40代女性への調査、髪質の変化が気になる方85%、年齢を重ねてうねりが強くなったと感じる方71%(n=172、2023年9月、ロート製薬調べ
■ 大型放射光施設SPring-8にて解析を行い毛髪内部IF構造の変化をミクロレベルで分析
今回の研究では、トステア(アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウム)が毛髪内部に及ぼす影響をミクロレベルで解明するために、物質の原子・分子レベルの形や機能を調べることができるSPring-8にて評価を行いました。カールの強い縮れ毛を用いて、くせ毛の評価として毛髪を構成するミクロな繊維であるIntermediate Filament** (以下、IF)に着目し、うねり改善評価を行いました。
縮れ毛にトステア(アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウム)を処理したものをSPring-8にてX線構造解析を行い、内部構造の乱れを表した可視化画像よりIFの乱れ幅を計測しました。未処理毛ではIFの乱れ幅が大きく(図5-1)、処理毛では小さく出ていました(図5-2)。乱れ幅がねじれの程度を反映しているため、未処理ではIFのねじれが強く、処理したものについてはIFのねじれが小さくなっていることがわかりました。つまり、トステア(アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウム)の毛髪うねり改善メカニズムの一つを解明することができました。
**コルテックス細胞を形成するケラチン繊維のこと。髪の弾力や形状に関与すると知られている重要な部分。
■ 顕微鏡を用いて毛髪のうねりの変化をマクロに観察
トステア(アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウム)を配合したヘアケア製剤を作製し、縮れ毛へ塗布、ドライヤーブローを行ったところ、同箇所のうねり改善が見られました(図6)。この結果から、毛髪内部構造の変化のようなミクロレベルだけではなく毛髪表面の見た目のようなマクロレベルでもうねりが改善していることが確認できました。
今後の展望
本研究成果は、当社が毛髪の加齢による不可逆な変化を解決するための第一歩となり、今後のヘアケア商品の開発へつながることが期待されます。今後も頭皮や毛髪構造を理解し、悩みの原因を探り、最適なアプローチ方法を探求していくことで、ヘアケア領域における新しい試みに挑戦していきます。
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