加齢による筋力低下の治療に有効か 骨格筋の分化と再生に関わるタンパク質を同定

千葉大学大学院医学研究院の横手幸太郎教授らの研究グループは、国際医療福祉大学医学部の竹本稔主任教授と首都大学東京人間健康科学研究科の藤井宣晴教授らとの共同研究により、加齢に伴い全身の筋力が低下する「サルコペニア」や、骨格筋に関連する疾患の治療に有効と見られるタンパク質R3hdmlを同定しました。この研究成果は、2019年9月16日、ヨーロッパ分子生物学機構の科学誌「EMBO reports」に掲載されました。
  • 研究の背景
加齢に伴って骨格筋が萎縮することで筋肉量が低下する「サルコペニア」は、高齢者の日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)を著しく低下させます。超高齢化社会を迎えた日本では特に、サルコペニアの発生メカニズムの解明や治療法の確立が大きな課題となっています。サルコペニアを発生させる原因は、これまで十分に明らかになっていませんでしたが、加齢に伴う骨格筋の再生能力の低下が発生メカニズムに関与していることがわかっており、また、骨格筋の再生には、骨格筋を構成する筋繊維の間に存在する筋衛星細胞の増殖と分化が大きな鍵を握っていると見られていました。 
  • 研究の成果
研究グループは、マウス実験により、マウスの骨格筋が分化したり、再生したりする時に、筋衛星細胞からR3hdmlというタンパク質が一時的に分泌されることを突き止めました。この過程で、 R3hdmlの発現には、骨格筋分化のマスター制御因子であるMyoDが制御機能を持つことがわかりました。

また、R3hdmlを欠損させたマウスでは、筋衛星細胞の増殖能が低下し骨格筋の構造に異常をきたすことや、骨格筋の再生力が低下することを明らかにしました。さらには、R3hdmlを与えることにより、R3hdml欠損マウスの筋再生能力の低下を回復させることができました。今後、このR3hdmlの筋衛星細胞の増殖や分化を促すメカニズムを詳細に解明することで、サルコペニアの新しい治療法の開発につながることが期待されます。
  • 研究プロジェクトについて
本研究は、以下の支援を受けて行われました。
・日本医療研究開発機構(AMED)「老化メカニズムの解明・制御プロジェクト」
・日本学術振興会 科研費 (JP16K09229)「サルコペニアの治療戦略開発にむけた新規筋衛星細胞発現遺伝子R3hdmlの機能解析」
・厚生労働省 難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業) 「早老症の医療水準やQOL向上を目指す集学的研究」(H30-難治等(難)一般 009)
  • 論文タイトルと著者
論文タイトル: R3hdml regulates satellite cell proliferation and differentiation
雑誌名: EMBO Reports
 doi: https://doi.org/10.15252/embr.201947957
 
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