千葉大学キャンパス内で「歩車分離」 学生の発案で実現
千葉大学はキャンパス内を通行する歩行者の安全確保を目的に、一部の道路において自動車進入禁止とし、歩行者と自転車の通行レーンを分ける「歩車分離」の実証実験を2019年4月~8月にかけて行いました。実験の結果、安全性が高まることが確認できたため、10月1日から本格導入することとなりました。
- 概要
千葉大学西千葉キャンパスは自転車の利用者が多いため、歩行者の安全確保の観点から、環境ISO学生委員会が歩車分離の企画を大学側に提案しました。学生委員会が事前調査を行い、実証実験の時期、専用レーンの仕様などを検討して企画を進め、施設環境部がレーンを施工し、2019年4月からの約4ヶ月間、弥生通りにおいて歩車分離の実証実験を行いました。
その間、学生委員会がビデオ撮影による映像分析とアンケート分析を行い、歩車分離の効果が出ていると分かったため、本格導入に関する提案書を大学側に提出しました。その結果、10月1日から歩車分離を本格的に導入することとなりました。- 歩車分離の実証実験について
普段のキャンパス生活の中で、自転車と歩行者の動線が錯綜していることから起こる接触事故の危険性に課題を感じていた環境ISO学生委員会の学生が、歩行者の安全確保の観点から歩車分離の必要性を感じ、2017年7月に大学側に歩車分離実現のための企画書を提出し、本企画がスタートしました。
千葉大学キャンパスマスタープラン2017の基本整備方針の中にも、「事故のない安全・安心なキャンパスの実現」とあり、大学側もかねてから対策を考えていたことから、キャンパス整備企画室と施設環境部が協力し、実証実験を行うこととなりました。
<経緯>
2018年には環境ISO学生委員会が、実証実験前のデータとして1年生に対してアンケートを実施したほか、実験の場所や期間、レーンに使用するテープ、監視員の配置やビデオ撮影の配置などについて大学側と相談しながら決め、施設環境部から業者に発注してレーンを施工しました。
<内容>
期間:2019年4月5日(金)~8月2日(金)
場所:千葉大学西千葉キャンパスの弥生通り
方法:車止めを使い、自動車進入禁止としたほか、路面用テープを使い、歩行者・自転車専用のレーンを作り、通行を分離しました。自転車レーンには中央線を引き、左側通行させるようにしたほか、レーンを広くしないことで、並走させず、徐行させる効果も期待しました。また、ポスターや全学生・教職員に対する一斉配信メールなどで周知を行ったほか、学生委員会が通りの途中で呼びかけをする活動を行いました。
<分析方法とその結果>
1.動画分析
方法:
学生委員会がビデオカメラで通りを撮影し、授業前や昼休みの自転車・歩行者の通行者数とレーンの違反者数を計測し、違反率を求めました。分析した動画は4~6月の34日間分で、学生20名が分担して行いました。
結果:
・全体的に違反率は低下傾向にある。(歩車分離が定着した。呼びかけの効果などがある。)
・歩行者より自転車の方が違反率は高い(1人の歩行者の違反が複数の自転車の違反に影響するため)
・午後(昼、4限前、5限前)の違反率が、午前(朝、2限前)を上回る。(午前は教室に向かう目的があるが、昼や午後は行く先が異なるためと思われる)
・自転車が歩行者と一緒にいる時の違反が多い
・自転車レーン内の「左側通行」が守れていない自転車が多い
2.アンケート分析
方法:
歩車分離の効果や意識を調査するために、全学生・教職員を対象に、5/27~6/7の期間に、Webアンケート調査を行いました。(回答者数1,282名(キャンパス利用者の約1%))
結果:
・歩車分離の効果はある(実験の認知度は91%/分離を意識して通行している人が7~8割/「通行しやすくなった」と感じている人が「しにくくなった」を1.5~2倍上回っている/事故の危険性も減少/分離を継続することへの賛成64%(反対12%))。
・分離ルールの周知徹底が必要(特に歩行者は自転車レーンを歩かないこと、歩行者と歩く自転車は降りて歩行者側を歩くこと)
・交通ルール・マナー(ながらスマホ、イヤホン、傘差し運転など)の周知が必要。
・レーンの改善(位置、幅、質、マーク、交差点など)を検討する必要がある。
- 実証実験のその後
実証実験の結果、歩行者の安全性を高める上で歩車分離には効果があることから、2019年7月、環境ISO学生委員会が大学側に以下の3点を提案しました。
1)弥生通りにおける歩車分離の本格導入(恒久化等)
2)その際に求められる対策(レーン等)
3)弥生通り以外への導入の検討(特に南門から弥生通りまで)
2.大学運営会議で本格導入を決定
学生の提案を受けたキャンパス整備企画室が7月の大学運営会議に諮り、正式に歩車分離の導入が決定しました。
3.本格導入に向けて
2019年8月に、学生委員会とキャンパス整備企画室と施設環境部で会議を設け、車止め対策、レーンやポスターの改善についての検討を行い、下記の点について改善を加えることとなりました。
・車が進入しないように車止めを改善、英語表記も加える・歩行者が自転車レーンに入らないように、また、自転車がレーン内の左側通行を守るように、マークだけでなく「自転車専用」の文字と矢印を入れる
・歩行者の安全確保のため、交差する横断歩道の手前に停止線と注意マークを入れる
・留学生を意識してマークはユニバーサルマークを使用する
・レーンの存在を目立たせるために花壇を等間隔で配置し、花壇にも目立つ表示を置く
・ポスターを目立つ色に変え、歩きスマホ禁止のメッセージを入れる
・留学生を意識してポスターにも英語表記を入れる
以上を踏まえて、9月中に施設環境部が自転車レーンを施工し、学生委員会がポスターを作り直し、10月1日に本格導入を迎えました。
4.本格導入後について
本格導入後も継続して映像分析などを行い、歩車分離の定着状況や危険箇所の有無について確認していきます。長期にわたり経過を観察し、必要に応じて改善していく予定です。
- 本企画を担当した環境ISO学生委員会構内環境班の歴代班長のコメント
構内環境班は自分たちが普段使うキャンパスをより快適に過ごせる場にすることを目標に様々な活動を行っています。大学の設備や運営に関わる内容もあり、1班長の代だけでは見つけた課題について考えて新しい活動へと「提案するだけ」で終わってしまいがちです。しかし、本企画は私の代で発案したことですが、後輩の代がさらなる努力のもとしっかりと繋げてくれたので実現できたと思っています。この場を借りて後輩のみんなにありがとうを伝えたいです。
2018年担当・志賀萌花(園芸学部3年)
学生に向けたアンケートで、私の想像以上に多くの人が通行中危険な場面に遭遇していることが分かり、本企画を必ず実現したいと思いました。しかし、単に歩行者と自転車を分けるだけという甘い考えがあり、実際にやってみると企画に具体性を持たせるのにとても苦労しました。そこで先生方や周りの人にアドバイスをいただき企画書を仕上げていきました。企画の本格化で皆が当たり前のように安全に通行できることを願っています。
2019年担当・杉浦匡哉(工学部2年)
歩行者と自転車利用者の安全を考え、なおかつ、通行者にわかりやすくするため一年間かけて案を練り、今年の4月から実証実験を行うことができました。実証実験中は動画を分析して問題点を改善していきました。その結果、多くの方の賛同をいただき本格導入をすることが決まりました。これまでにたくさんの人に助けてもらいながら頑張ってきたことを成功させることができてとても嬉しいです。今後もより良くしていけるように頑張ります。
- 千葉大学環境ISO学生委員会とは
千葉大学において学生主体で環境活動を行っている学生団体。千葉大学がISO14001の取得に動き出した2003年に発足し、それ以後、大学の環境マネジメントの運営組織の一部としてEMSの運営を担ってきました。毎年1~3年生まで約200名が所属。内部監査員や環境報告書の作成のほか、エネルギー班、紙班、ごみ班、堆肥化班、学内緑化班、構内美化班、学外教育班、環境報告書班など、活動の内容に応じて20ほどの班や担当があり、環境負荷削減の意識啓発活動や、小中学校幼稚園への環境教育活動、緑化や堆肥化といった活動、エコグッズの作成など、幅広い活動を行っています。
また、2009年にNPO法人格も取得し、NPO法人としての活動も行っています。
NPO法人として、企業と協力して里山保全活動を行ったり、地域の学校へ環境出前授業を行ったりしています。
- 本件に対するお問い合わせ先
施設環境部施設企画課施設総務係
Tel:043-290-2117
千葉大学環境ISO事務局
Tel:043-290-3572
すべての画像