IBMの量子コンピューターが古典スーパーコンピューターを超える次のステップを実証

日本IBM

- Nature誌に掲載された新たな研究が、量子の有用性を実証
- この実証に基づき、すべてのIBM Quantumシステムを100量子ビットを超える大規模量子プロセッサーにアップグレード
- ボーイング、ボッシュ、クリーブランド・クリニック、CERN、DESY、E.ON、エクソン・モービル、モデルナ、オークリッジ国立研究所、シカゴ大学、理化学研究所、ウェルズ・ファーゴなどのトップ研究機関や業界リーダーが、近い将来の量子価値追求のためのワーキング・グループを結成

【ニューヨーク州アーモンク - 2023年6月14日(現地時間)発】

IBM は、100超の量子ビット規模において、量子コンピューターが古典アプローチを超える正確な結果を導き出せることを初めて実証した、科学雑誌「Nature」の表紙を飾った新たなブレイクスルーを発表しました。

 

量子コンピューティングの究極の目標のひとつは、古典コンピューターでは決して効率的にシミュレーションすることができない物質の構成要素をシミュレーションすることです。これらをモデル化できるようになることは、より効率的な肥料の設計、より優れた電池の製造、新薬の創出といった課題に取り組むための重要なステップとなります。しかし、今日の量子システムは本質的にノイズが多く、パフォーマンスを阻害するエラーが大量に発生します。これは、量子ビットの壊れやすい性質や、その環境からの外乱によるものです。

 

今回の実験で、IBMの研究チームは、システム内のエラーを学習して軽減することで、量子コンピューターが最先端の古典シミュレーションを凌駕することができることを実証しました。研究チームは、チップ上の127個の超伝導量子ビットで構成されるIBMのEagleプロセッサーを使用して、物質モデルのスピンのダイナミクスをシミュレートし、その磁化などの特性を正確に予測する、大規模なもつれ状態を生成しました。

 

このモデリングの正確性を検証するため、カリフォルニア大学バークレー校の科学者チームは、ローレンス・バークレー国立研究所の国立エネルギー研究科学計算センター(NERSC)とパデュー大学にある高度な古典コンピューターで、これらのシミュレーションを同時に実施しました。モデルの規模が大きくなるにつれて、量子コンピューターは高度なエラー軽減技術を用いて正確な結果を出し続けました。一方、古典コンピューターは最終的に行き詰まり、IBMの量子システムには及ばないという結果になりました。

 

IBMシニア・バイス・プレジデントでIBM Researchディレクターのダリオ・ギル(Darío Gil)は、次のように述べています。「今回初めて、量子コンピューターが古典的なアプローチを超えて、自然界の物理システムを正確にモデル化するのを確認しました。このマイルストーンは、今日の量子コンピューターが、古典的なシステムでは非常に困難で、おそらく不可能な問題のモデル化に使用できる、有能な科学的ツールであることを証明する重要なステップであり、私たちが今、量子コンピューターの実用化の新しい時代に入って来ていることを示すものです」

 

実証実験の詳細と結果については、IBMのブログ(英語)をご参照ください。

https://research.ibm.com/blog/utility-toward-useful-quantum

 

IBM の量子システム全体においてユーティリティー・スケールのプロセッサーに注力

 

この画期的な取り組みに続き、IBMは、クラウド上で稼働するIBM Quantumシステムおよびパートナー拠点のオンサイトで稼働するIBM Quantumシステムが、最低でも127量子ビットのプロセッサーになることも発表しました。

 

これらのプロセッサーは、特定のアプリケーションにおいて、古典的な方法を凌駕するほど大きな計算能力を提供し、コヒーレンス時間の改善やエラー率の低減を実現します。このような能力と進化を続けるエラー軽減技術が組み合わさることで、IBMの量子コンピューターは、IBMが「ユーティリティー・スケール(実用規模)」と呼ぶ、業界にとって新しい閾値に到達することができます。ユーティリティー・スケールは、量子コンピューターが、古典的なシステムでは決して解決できないかもしれない新しい規模の問題を探求する科学ツールとして機能する可能性があるポイントです。

 

IBMフェロー 兼IBM Quantumバイス・プレジデントのジェイ・ガンベッタ(Jay Gambetta)は、次のように述べています。「有用な量子コンピューターを世界に届けるというミッションを進める中で、まったく新しいクラスの計算問題を探求するために必要な基礎に対する確固たる証拠を得ることができました。IBM の量子システムにユーティリティー・スケールを実現するプロセッサーを搭載することで、今日の量子システムの限界を探るとともに、真の価値を引き出し始めることができるよう、お客様、パートナー、共同研究者の皆様に、それぞれの最も困難な問題を持ち込んでいただくように呼び掛けています」

 

すべてのIBM Quantumユーザーは、100量子ビットを超えるユーティリティー・スケールのプロセッサーで問題を実行できるようになります。IBM Quantum Spring Challengeに参加した2,000人以上が、より高度な量子アルゴリズムの実行を容易にする技術であるダイナミック・サーキットを探求するために、このユーティリティー・スケールのプロセッサーにアクセスしました。IBMの量子テクノロジー・スタックの拡大に伴い、ハイパフォーマンス・コンピューターや高エネルギー物理学、ヘルスケアやライフサイエンス、最適化、金融、サステナビリティーなど、すぐに量子技術が役立つ可能性が見込まれる業界全体で、研究機関や民間企業のリーダーが結集し始めています。

 

IBM Quantumで価値を追求する世界の研究者や業界リーダー

 

高度なハードウェアやエラー軽減によって現在の精度を実現する方法を探るためのツールなど、より強力な量子テクノロジーを備えることで、先駆的な組織や大学が、IBMと協力して量子コンピューティングの価値を高めています。

 

量子コンピューティングが提供する潜在的な価値を探求しているワーキング・グループは、以下の通りです:


  • ヘルスケア/ライフサイエンス:クリーブランド・クリニックやモデルナなどの組織が主導し、分子発見の加速化や患者のリスク予測モデルなどの課題に対して、量子化学や量子機械学習の応用を探索しています。

  • 高エネルギー物理学:CERNDESYなどの革新的な研究機関で構成され粒子衝突における事象の識別と再構成アルゴリズム、高エネルギー物理学の理論モデルの検討などの分野における最適な量子計算を特定するための取り組みを行っています。

  • 材料:ボーイングボッシュシカゴ大学オークリッジ国立研究所エクソン・モービル理化学研究所のチームが中心となり、材料シミュレーションのワークフローを構築するための最適な方法を探索しています

  • 最適化:E.ONウェルズ・ファーゴなどのグローバルな機関が連携し、サステナビリティーや金融におけるQuantum Advantageに最も適した最適化問題の特定を促進する重要な問題を探求しています。

 

当報道資料は、2023年6月14日(現地時間)にIBM Corporationが発表したプレスリリースの抄訳です。原文はこちらを参照ください。

 https://newsroom.ibm.com/2023-06-14-IBM-Quantum-Computer-Demonstrates-Next-Step-Towards-Moving-Beyond-Classical-Supercomputing


IBMについて

IBMは、世界をリードするハイブリッドクラウドとAI、およびコンサルティング・サービスを提供しています。世界175カ国以上のお客様の、データからの洞察の活用、ビジネス・プロセス効率化、コスト削減、そして業界における競争力向上を支援しています。金融サービス、通信、ヘルスケアなどの重要な社会インフラ領域における4,000以上の政府機関や企業が、IBMのハイブリッドクラウド・プラットフォームとRed Hat OpenShiftによって、迅速に、効率良く、かつセキュアにデジタル変革を推進しています。 IBMは、AI、量子コンピューティング、業界別のクラウド・ソリューションおよびコンサルティング・サービスなどの画期的なイノベーションを通じて、オープンで柔軟な選択肢をお客様に提供します。 これらはすべて、信頼性、透明性、責任、包括性、ならびにサービスに対するIBMのコミットメントに裏付けられています。詳細は、http://www.ibm.com/ をご覧ください。

 

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会社概要

URL
https://www.ibm.com/jp-ja
業種
情報通信
本社所在地
東京都港区虎ノ門二丁目6番1号  虎ノ門ヒルズ ステーションタワー
電話番号
03-6667-1111
代表者名
山口明夫
上場
未上場
資本金
1053億円
設立
1937年06月