IBMとNASA、Hugging Faceで最大の地理空間基盤モデルをオープンソース化
NASAの地理空間情報に関する地球科学データへのアクセスを拡大し、気候変動の影響に関する発見の加速を目指す
【米国ニューヨーク州ヨークタウンハイツ-2023年8月3日(現地時間)発】
IBMとオープンソースAIプラットフォームであるHugging Face( https://huggingface.co/ )は本日、NASAの衛星データから構築されたIBMのwatsonx.ai地理空間基盤モデルが、Hugging Face上でオープンに利用可能になることを発表しました。これは、Hugging Face上で最大の地理空間基盤モデルとなり、NASAと共同で構築された初のオープンソースAI基盤モデルになります。
環境状況が刻々と変化することによる気候変動などを扱う自然科学において、最新データへのアクセスは依然として重要な課題となっています。NASAは、2024年までに科学者が新しいミッションから25万テラバイトのデータを入手すると試算( https://science.nasa.gov/science-red/s3fs-public/atoms/files/SDMWG%20Strategy_Final.pdf )するなど、データ量が増加している一方、科学者や研究者は、こうした大規模なデータ・セットの分析が追いつかないといった問題に直面しています。IBMは今年初め、NASA とのSpace Act Agreementの一環として、地理空間データのAI基盤モデルの構築に着手しました。そしてこの度、オープンソースのリーダーであり、全てのTransformerモデルのリポジトリーでもあるHugging Faceを通じて、地理空間基盤モデルを手軽に利用できるようにしました。これにより、AIへのアクセスと応用の民主化を進め、気候変動などの自然科学と地球科学における新たなイノベーションを生み出すことができます。
IBM Research AIのバイス・プレジデントであるスリラム・ラガヴァン(Sriram Raghavan)は次のように述べています。「気候変動のような重要な分野の発見を加速するためにオープンソース・テクノロジーが果たす役割は、かつてないほど明確になっています。柔軟で再利用可能なAIシステムの構築を目指したIBMの基盤モデルへの取り組みと、NASAの地球衛星データのリポジトリーを組み合わせ、オープンソースの主要なAIプラットフォームであるHugging Faceで利用できるようにすることで、コラボレーションの力を活用し、地球を改善するための、より迅速でインパクトのあるソリューションを実装することができます」
Hugging Faceのプロダクト&グロース責任者であるジェフ・ブーディエ氏(Jeff Boudier)は次のように述べています。「AIは科学によって成長する分野であり、科学は情報共有と協力によってのみ進歩できます。したがって、AIの継続的な進歩には、オープンに公開されているAIやモデル、データ・セットが不可欠であり、これによって多くの人々に利益がもたらされると確信しています」
NASAのチーフ・サイエンス・データ・オフィサーであるケビン・マーフィー氏(Kevin Murphy)は次のように述べています。「私たちは、基盤モデルが観測データの分析方法を変え、地球をよりよく理解するのに役立つ可能性があると信じています。そして、このモデルをオープンソース化し、世界中に公開することで、その影響力を倍増させたいと考えています」
IBMとNASA( https://www.earthdata.nasa.gov/news/impact-ibm-hls-foundation-model )が共同開発したこの基盤モデルは、米国本土の1年間にわたるHarmonized Landsat Sentinel-2データ(HLS)( https://hls.gsfc.nasa.gov/ )を使って学習され、洪水や火事の焼け跡のマッピング用にラベル付けされたデータでファイン・チューニング(微調整)されました。この基盤モデルは、最先端の技術に比べて半分の量のラベル付けされたデータを使用しても、15%の改善を実証しています。さらに微調整を加えれば、森林伐採の追跡、農作物の収量予測、温室効果ガスの検出と監視などのタスクに基盤モデルを再展開することができます。また、IBMとNASAの研究者はクラーク大学と協力して、このモデルを時系列セグメンテーションや類似性研究などにも適用させています。
本件は、今年2月のIBMとNASAによる、衛星画像の分析を高速化し、科学的発見を促進するAIモデルを構築するために協業を開始するという発表( https://jp.newsroom.ibm.com/2023-02-02-IBM-and-NASA-Collaborate-to-Research-Impact-of-Climate-Change-with-AI )に続くものです。これはまた、よりアクセスしやすく、包括的で協力的な科学コミュニティーの構築に向けた、NASAの10年にわたるオープンソース・サイエンス・イニシアチブ( https://science.nasa.gov/open-science-overview )の一環でもあります。NASAは、ホワイトハウスや他の連邦政府機関とともに、2023年を「オープンサイエンスの年」( https://www.whitehouse.gov/ostp/news-updates/2023/01/11/fact-sheet-biden-harris-administration-announces-new-actions-to-advance-open-and-equitable-research/ )と定め、データ、情報、知識のオープンな共有によって恩恵と成功を生み出すために取り組んでいます。
このモデルはIBMの基盤モデル技術( https://www.ibm.com/blogs/think/jp-ja/what-are-foundation-models/ )を活用したもので、さまざまなタスクに使用でき、ある状況からの情報を別の状況に適用できるAIモデルを作成・訓練するIBMの大規模な取り組みの一環です。IBMは7月に、企業が信頼できるデータを用いて最先端のAI活用の拡大・加速を可能にするAIとデータ・プラットフォームであるwatsonx( https://www.ibm.com/jp-ja/watsonx )の提供開始を発表( https://jp.newsroom.ibm.com/2023-07-12-blog-IBM-watsonx-capabilities-are-now-available-to-help-meet-enterprises-AI-for-business-needs )しました。IBM watsonxの一部である地理空間モデルの商用バージョンは、今年後半にIBM Environmental Intelligence Suite(EIS)( https://www.ibm.com/jp-ja/products/environmental-intelligence-suite )を通じて提供開始する予定です。
IBMの将来の方向性および指針に関する記述は、予告なく変更または撤回される場合があります。これらは目標および目的を提示するものにすぎません。
当報道資料は、2023年8月3日(現地時間)にIBM Corporationが発表したプレスリリースの抄訳です。原文はこちらを参照ください。
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