「社長の後継ぎが見つからない…」後継者がおらず倒産した企業、2021年は過去最多を更新
事業承継の「2025年問題」を前に課題は一段と鮮明に
帝国データバンクは2021年に発生した「後継者難倒産」の件数を集計し、分析を行った。
ポイント
後継者の不在や事業承継の失敗などが主な原因となり、事業の継続見込みが立たなくなったことによって生じる「後継者難倒産」。帝国データバンクの調査では、2021年に発生した後継者難倒産は466件となり、調査を開始した2013年以降で過去最多を更新した。3年連続で450件を上回り、高水準での推移が続いている。
業種別では製造業・サービス業が過去最多「後継者難倒産率」は製造業が唯一の1割超
業種別でみると、製造業(83件、前年比20.3pt増)とサービス業(84件、同33.3pt増)がそれぞれ過去最多となった。特に製造業では、後継者難倒産率が12.6%と全業種中で唯一の1割台となった。製造業は元来より工場や設備への投資負担が大きく、借入金などが増えることで有利子負債月商倍率が高くなる傾向がある。そこへ新型コロナによる業績低迷によってさらに厳しい資金繰りを強いられ、後継者難の解決も見込めないことが重なり事業を畳む決断に至る「あきらめ型倒産」のケースが散見される。実際に福井県の化学繊維機械製造業者は、設備投資などに必要な資金を借入金に依存していたなかで新型コロナの影響で受注キャンセルが生じるなど業績不振に陥り、後継者不在が追い打ちとなり事業継続を断念した。
事業承継における「2025年問題」は目前、経営者の不測の事態にも耐えうる早期の準備がカギに
いわゆる団塊の世代が後期高齢者である75歳以上となり日本に超高齢化社会が訪れるタイミングを指し、雇用や医療、福祉などさまざまな分野に影響を及ぼすとされる「2025年問題」。社長の高齢化も進行し続けていることもあり事業承継の側面でも例外ではなく、実際に2017年12月には経済産業省と中小企業庁が、社長の高齢化や後継者難の現状を放置した場合には2025年までに雇用やGDPなど多大な経済損失が発生すると試算。区切りの年まで残り3年となるなかで後継者難倒産件数が過去最多となったことは、こうした問題が今後一段と深刻になりかねないことを示唆している。
一方で、明るい兆しも見え始めている。帝国データバンクの調査では2021年の後継者不在率は61.5%となり、依然として6割台と高水準にあるものの4年連続で低下し、調査を開始した2011年以降で最低となった。改善幅も3.6ptと大きく改善し、後継者不在の状況は徐々に快方に向かっている結果が表れた。
事業承継をする際に引き継がれる項目は経営権や財産のみならず、ノウハウや許認可、取引先との信頼関係など多岐にわたる。そうした背景もあり、帝国データバンクが企業約1万社を対象に実施したアンケート調査では、後継者への移行期間としては企業の半数以上が「3年以上」と回答。後継者不在のみならず、十分な引継ぎや育成には相応の期間がともなうことにも留意が必要だ。そうした部分に焦ることなく時間をかけられるよう、可能な限り早期から準備を講じることが後継者難倒産を防ぐための第一歩となる。
- 2021年の倒産件数は「歴史的低水準」となった一方で、後継者難倒産は過去最多を更新
- 業種別では製造業・サービス業が過去最多 「後継者難倒産率」は製造業が唯一の1割超
- 事業承継における「2025年問題」は目前、経営者の不測の事態にも耐えうる早期の準備がカギに
後継者の不在や事業承継の失敗などが主な原因となり、事業の継続見込みが立たなくなったことによって生じる「後継者難倒産」。帝国データバンクの調査では、2021年に発生した後継者難倒産は466件となり、調査を開始した2013年以降で過去最多を更新した。3年連続で450件を上回り、高水準での推移が続いている。
後継者難倒産の件数は過去最多を更新した
業種別では製造業・サービス業が過去最多「後継者難倒産率」は製造業が唯一の1割超
業種別でみると、製造業(83件、前年比20.3pt増)とサービス業(84件、同33.3pt増)がそれぞれ過去最多となった。特に製造業では、後継者難倒産率が12.6%と全業種中で唯一の1割台となった。製造業は元来より工場や設備への投資負担が大きく、借入金などが増えることで有利子負債月商倍率が高くなる傾向がある。そこへ新型コロナによる業績低迷によってさらに厳しい資金繰りを強いられ、後継者難の解決も見込めないことが重なり事業を畳む決断に至る「あきらめ型倒産」のケースが散見される。実際に福井県の化学繊維機械製造業者は、設備投資などに必要な資金を借入金に依存していたなかで新型コロナの影響で受注キャンセルが生じるなど業績不振に陥り、後継者不在が追い打ちとなり事業継続を断念した。
件数では製造業・サービス業が過去最多
事業承継における「2025年問題」は目前、経営者の不測の事態にも耐えうる早期の準備がカギに
いわゆる団塊の世代が後期高齢者である75歳以上となり日本に超高齢化社会が訪れるタイミングを指し、雇用や医療、福祉などさまざまな分野に影響を及ぼすとされる「2025年問題」。社長の高齢化も進行し続けていることもあり事業承継の側面でも例外ではなく、実際に2017年12月には経済産業省と中小企業庁が、社長の高齢化や後継者難の現状を放置した場合には2025年までに雇用やGDPなど多大な経済損失が発生すると試算。区切りの年まで残り3年となるなかで後継者難倒産件数が過去最多となったことは、こうした問題が今後一段と深刻になりかねないことを示唆している。
一方で、明るい兆しも見え始めている。帝国データバンクの調査では2021年の後継者不在率は61.5%となり、依然として6割台と高水準にあるものの4年連続で低下し、調査を開始した2011年以降で最低となった。改善幅も3.6ptと大きく改善し、後継者不在の状況は徐々に快方に向かっている結果が表れた。
2021年の後継者不在率は61.5%で過去最低、 改善幅も例年より高かった
官民によるM&A仲介件数は いずれも増加し続けている
事業承継をする際に引き継がれる項目は経営権や財産のみならず、ノウハウや許認可、取引先との信頼関係など多岐にわたる。そうした背景もあり、帝国データバンクが企業約1万社を対象に実施したアンケート調査では、後継者への移行期間としては企業の半数以上が「3年以上」と回答。後継者不在のみならず、十分な引継ぎや育成には相応の期間がともなうことにも留意が必要だ。そうした部分に焦ることなく時間をかけられるよう、可能な限り早期から準備を講じることが後継者難倒産を防ぐための第一歩となる。
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