腸内細菌がミネラルの吸収を向上させる 必須超微量元素セレンを効率よく吸収する仕組みを解明
千葉大学 大学院薬学研究院 予防薬学研究室の小椋康光 教授と千葉大学 大学院医学薬学府博士課程3年の髙橋一聡 氏は、体の中では非常に微量にしか存在しないものの、健康の維持には必須であるセレンという元素が、腸内細菌叢による代謝が協調的に作用することにより、効率よく生体内に取り込まれる仕組みを解明しました。本研究成果は、2020年3月17日に食品化学分野の専門誌「Food Chemistry」に掲載されました。
- 研究の背景
- 研究成果
成果1:様々なセレン化合物はセレノメチオニンに代謝される
本研究グループでは、セレンの代謝に腸内細菌が関係しているという仮説のもと、ラットを用いた実験を行いました。その結果、宿主であるラットが摂取した様々な化学構造のセレン化合物は、腸内細菌叢によって特定の化学構造を持つセレン化合物、セレノメチオニンへと代謝されることが明らかになりました。これは、腸内細菌によって、宿主がセレノメチオニンという単一の栄養源として利用できるよう変換されることを意味しており、食事の嗜好によって摂取するセレン化合物に偏りがあっても、腸内細菌叢が宿主のセレン利用を補助する体内機構があることが明らかになりました。
成果2:セレンは腸内細菌叢で貯蔵される
さらに、セレンの代謝の機構を詳細に調べたところ、セレン化合物から代謝されたセレノメチオニンは腸内細菌の菌体内で貯蔵されているということが明らかになりました。
研究成果1と2の結果から、食品中から微量にしか摂取できないセレン化合物を腸内細菌叢がセレノメチオニンとして代謝し、さらに貯蔵するという協調的な作用により、効果的なミネラル摂取のサポートをしていることが明らかになりました。このようなミネラル代謝における腸内細菌叢の役割が解明されたのは、初めての例です。
- 研究者のコメント
- 研究プロジェクトについて
・内閣府食品安全委員会 食品健康影響評価技術研究(課題番号1601)
・公益財団法人 三島海雲記念財団個人研究奨励金
・科学研究費補助金(16H05812, 17H04001, 18H03380, 18K19387, 19H01081)
・科学研究費補助金 新学術領域研究「生命金属科学」(19H05772)
- 論文情報
雑誌名:Food Chemistry.
DOI: https://doi.org/10.1016/j.foodchem.2020.126537
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