2022年は人手不足問題が再来!? 「従業員が足りない」倒産、2021年は4年ぶり低水準も…
人手不足割合はすでにコロナ前の水準まで上昇
帝国データバンクは2021年に発生した「人手不足倒産」の件数を集計し、分析を行った。
ポイント
従業員の退職や採用難などが原因で労働力が不足し事業が継続できなくなる「人手不足倒産」。2021年に発生した件数は104件となり、185件で最も高かった2019年から2年連続で減少。2017年(106件)を下回り4年ぶりの低水準となるなど、大幅に減少する結果となった。
もともと、景況感が上向くなかで2019年末まで企業の人手不足感は慢性的な高水準で推移しており、企業の約半数が人手不足感を抱える状況だった。実際に帝国データバンクが実施した調査では、当時見込んでいた2020年における景気の懸念材料として「人手不足」が筆頭となるなど、企業経営のうえで深刻な課題の一つとしてあげられていた。
こうしたなか、2020年の年初から新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染拡大によって、外出自粛や休業などの影響で経済活動は大幅な制限が強いられたことで業務量は縮小し、様相は一変。人手不足感は急速に低下したことで、人手不足に起因する倒産は大幅に減少する結果となった。
業種別では建設業が36件で最多、人手不足倒産件数のうち3割を占める
大幅な減少となった人手不足倒産は、その他を除く全業種で前年から減少している。そうしたなかでも、建設業は36件で全体の3割以上を占めており、他業種に比べて多く発生するなど建設業における人手不足倒産が目立った。
景況感の回復にともない、2022年は既に「人手不足問題」が再来か
コロナ禍2年目となった2021年の人手不足倒産件数は、2年連続で減少し4年ぶりの低水準となった。しかし、例えばデジタル化の推進によって生産性の向上が講じられたなどの理由で人手不足が根本的に解決した企業は一部にとどまっており、コロナ禍における一時的な人手不足の緩和によるものとみるべきだ。
今後の人手不足倒産は、新型コロナの動向による景況感の回復状況に左右されるとみられる。足元では新型コロナの変異型「オミクロン株」の全国的な感染拡大によって再び一部の経済活動が制約されているが、景況感は着実に回復傾向にある。従来の人手不足が一時的に和らいでいた企業にとっては、業務量の増加は喜ばしい状況ではあるものの再び人手不足に陥る可能性が十分に考えられる。
実際に2021年12月時点における企業の人手不足割合は、正社員では47.5%、非正社員では27.7%となった。第1回緊急事態宣言の際にそれぞれ最も落ち込んだものの、既にコロナ禍の前となる2019年に近い水準まで戻っている。一時は業務が思うように進められなかったものの、「新しい生活様式」の定着によって経済活動が回復に向かったことが反映されているといえよう。
- 2021年の人手不足倒産の件数は104件、ピークだった2019年から2年連続で減少し4年ぶりの低水準に
- 業種別では建設業が36件で最多、人手不足倒産件数のうち3割を占める
- 景況感の回復にともない、2022年は「人手不足問題」が再来か
従業員の退職や採用難などが原因で労働力が不足し事業が継続できなくなる「人手不足倒産」。2021年に発生した件数は104件となり、185件で最も高かった2019年から2年連続で減少。2017年(106件)を下回り4年ぶりの低水準となるなど、大幅に減少する結果となった。
もともと、景況感が上向くなかで2019年末まで企業の人手不足感は慢性的な高水準で推移しており、企業の約半数が人手不足感を抱える状況だった。実際に帝国データバンクが実施した調査では、当時見込んでいた2020年における景気の懸念材料として「人手不足」が筆頭となるなど、企業経営のうえで深刻な課題の一つとしてあげられていた。
こうしたなか、2020年の年初から新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染拡大によって、外出自粛や休業などの影響で経済活動は大幅な制限が強いられたことで業務量は縮小し、様相は一変。人手不足感は急速に低下したことで、人手不足に起因する倒産は大幅に減少する結果となった。
業種別では建設業が36件で最多、人手不足倒産件数のうち3割を占める
大幅な減少となった人手不足倒産は、その他を除く全業種で前年から減少している。そうしたなかでも、建設業は36件で全体の3割以上を占めており、他業種に比べて多く発生するなど建設業における人手不足倒産が目立った。
帝国データバンクが実施した企業の人手不足に対する調査でも、コロナ禍となった2020年以降においても建設業の約半数が人手不足感を抱えており、直近の21年12月時点でも62.9%の企業が人手不足を訴えている。2020年4月に発出された一回目の緊急事態宣言の時期こそ飲食店や商業施設といった店舗の閉鎖や新規出店の先送りが生じ内装工事などの需要が減退したものの、活況な災害復旧工事や国土強靭化策などで土木工事は引き続き堅調。こうしたなか、業界を通して人手不足の解消に至らず、倒産件数は高水準となった。また、専門的な技術を有する「職人」の流出が事業継続にとって大打撃となることは少なくない。施工能力が低下し受注減となったケースや、受注ができても自社の施工のみで請け負えず、外注費が増加したことによって利益面で苦戦を強いられ経営に行き詰まる場合も多い。
景況感の回復にともない、2022年は既に「人手不足問題」が再来か
コロナ禍2年目となった2021年の人手不足倒産件数は、2年連続で減少し4年ぶりの低水準となった。しかし、例えばデジタル化の推進によって生産性の向上が講じられたなどの理由で人手不足が根本的に解決した企業は一部にとどまっており、コロナ禍における一時的な人手不足の緩和によるものとみるべきだ。
今後の人手不足倒産は、新型コロナの動向による景況感の回復状況に左右されるとみられる。足元では新型コロナの変異型「オミクロン株」の全国的な感染拡大によって再び一部の経済活動が制約されているが、景況感は着実に回復傾向にある。従来の人手不足が一時的に和らいでいた企業にとっては、業務量の増加は喜ばしい状況ではあるものの再び人手不足に陥る可能性が十分に考えられる。
実際に2021年12月時点における企業の人手不足割合は、正社員では47.5%、非正社員では27.7%となった。第1回緊急事態宣言の際にそれぞれ最も落ち込んだものの、既にコロナ禍の前となる2019年に近い水準まで戻っている。一時は業務が思うように進められなかったものの、「新しい生活様式」の定着によって経済活動が回復に向かったことが反映されているといえよう。
そして、既に経営者の人手不足に対する懸念が高まっている。帝国データバンクが毎年11月に実施している調査時点からみた翌年の景気見通しに対する調査では、2021年に調査した段階で2022年の景気に悪影響を及ぼす懸念材料に「人手不足」をあげた企業が30.6%を占めた。もともとは18年から20年では3年連続のトップとなり、半数近い企業がリスクとしてあげていた。そして20年から見た21年見通しの際はコロナ禍による景気の後退もあり11.1%まで落ち込み、人手不足への意識は遠ざかっていた。しかし足元では人手不足感が再び高まっていることから、今後の景気の懸念材料としてあげる企業が増加したとみられる。実際に都内の人材派遣業者は「新型コロナの対応に追われた時代は終わり、ウィズコロナが定着していくなかで滞りなく業務ができるようになった。そのなかで従来の人手不足感が戻りつつあるのではないか」と話す。このように人手不足への対処に動き出している企業は少なくないなか、今後の動向が一層注目される。
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