再生可能エネルギーで電力を自給できる「電力永続地帯」の市町村が全国で1割超え

「永続地帯2019年度版報告書」の公表

国立大学法人千葉大学

千葉大学倉阪研究室と認定NPO法人環境エネルギー政策研究所は、日本国内の市町村別の再生可能エネルギーの供給実態などを把握する「永続地帯」研究を進めており、その14年目の報告書を公表しました( https://sustainable-zone.com/)。
  • 2019年度報告書概要

永続地帯2019年度版報告書永続地帯2019年度版報告書

「永続地帯」研究の最新結果では、2019 年3月末時点で稼働している再生可能エネルギー設備を把握し、その設備が年間にわたって稼働した場合のエネルギー供給量を推計しました(一部は実績値を採用)。
※「永続地帯(sustainablezone)」とは、その区域で得られる再生可能エネルギーと食料によって、その区域におけるエネルギー需要と食料需要のすべてを賄うことができる区域のこと
※「エネルギー永続地帯」とは、再生可能エネルギーで自給できる市町村のことで、域内の民生用・農林水産業用エネルギー需要を域内で生み出された再生可能エネルギーで供給できる市町村のこと
※「電力永続地帯」とは、域内の民生用・農林水産業用電力需要を上回る量の再生可能エネルギー電力を生み出している市町村のこと
「永続地帯2019年度版報告書」は下記サイトに掲載中
https://sustainable-zone.com/
 
  • 今回の試算結果
今回の試算の結果、以下の事実が明らかになりました。

(1)前年度と比べて2018年度の太陽光発電の発電量は16%増加。太陽光発電の伸び率が下げ止まる。
2012年7月に施行された再生可能エネルギー特別措置法に基づく固定価格買取制度の影響で増加した太陽光発電の発電量は、2018年度は前年比で16%増加しました。前年比の増加率は、2014年度は約6割、2015年度は約4割、2016年度25%、2017年度14%と推移しており、伸び率の低下が止まった状況です(表1)。


(2)太陽光以外の再エネ発電は、風力発電9%増加。バイオマス発電5%増加、小水力発電は横ばい。地熱発電は微減。
その他の再生可能エネルギー発電の中では、風力発電が対前年度比9%増加、バイオマス発電が5%増加しました。小水力発電は引き続き横ばい状態です。地熱発電は微減しました。このように太陽光以外の再エネ発電については、固定価格買取制度の効果が十分に現れていません(表1)。

(3)再生可能エネルギー熱の供給は、ほぼ横ばい。
固定価格買取制度の対象となっていない再生可能エネルギー熱は、対前年度比99.8%とほぼ横ばい状態となっています。日本の再エネ供給量に占める再エネ熱の割合は、20.3%(2011年度)から、10.3%(2018年度)と低下しています。

(4)2011年度から2018年度にかけて、国内の再生可能エネルギー供給量は約3.3倍
再生可能エネルギー電力供給が増加した結果、2011年度に比べて、2018年度では、再生可能エネルギー供給は3.3倍となっています。この結果、国全体での地域的エネルギー需要(民生用+農林水産業用エネルギー需要)に占める再生可能エネルギー供給量の比率(地域的エネルギー自給率)は3.81%(2011年度)から、9.57%(2015年度)、11.38%(2016年度)、12.34%(2017年度)、13.55%(2018年度)と増加しています。

(5)100%エネルギー永続地帯市町村は119に増加、100%電力永続地帯は186に増加
域内の民生・農林水産業用エネルギー需要を上回る再生可能エネルギーを生み出している市町村(エネルギー永続地帯)は、2011年度に50団体だったところ、2012年度は55、2014年度は64、2015年度は78、2016年度は93、2017年度は103、2018年度は119と着実に増加しています。また、域内の民生・農水用電力需要を上回る量の再生可能エネルギー電力を生み出している市町村(電力永続地帯)も、2011年度に84団体でしたが、2016年度に138団体、2017年度に153団体、2018年度に186団体と、こちらも同様に増加し、はじめて全市町村数(1742団体)の1割を超えました(10.7%)。


(6)再生可能エネルギー供給が域内の民生+農水用エネルギー需要の10%を超えている都道府県が41に増加
(2014年度:21、2015年度:25、2016年度:33、2017年度:36、2018年度:41)
2012年度には、再生可能エネルギーによるエネルギー供給が域内の民生+農水用エネルギー需要の10%を超える都道府県は8県でしたが、2018年度には41道県になりました。まだ、10%に達していない都道府県は、沖縄県(7.3%)、埼玉県(7.1%)、京都府(5.7%)、神奈川県(5.0%)、大阪府(4.3%)、東京都(1.9%)の6府都県です。また、20%を超える都道府県は、21県となっています。

また、2018年度において、面積あたりの再生可能エネルギー供給量が最も多い都道府県は①大阪府、②神奈川県、③東京都、④愛知県、⑤茨城県、⑥千葉県、⑦埼玉県、⑧福岡県、⑨香川県、⑩三重県となっています。

 

 


(7)食料自給率が100%を超えた市町村は576市町村
2018年度に、食料自給率(カロリーベース)が100%を超えている市町村は、576市町村ありました。

(8)70市町村が食料自給率でも100%を超えている。
2018年度に、エネルギー永続地帯のうち70市町村が食料自給率においても100%を超えていることがわかりました(表2)。これらの市町村は、まさに「永続地帯」であると言えます。永続地帯市町村数は、2016年度に44,2017年度に58、2018年度に70と増加しています。今回、はじめて、石川県と愛知県でも永続地帯市町村が確認されました。


※なお、本報告書には、再生可能エネルギー普及に関する政策提言のほか、以下の個別調査結果を含んでいます。
7.1. 国内外の再生可能エネルギーの動向 松原弘直(認定NPO法人環境エネルギー政策研究所)
7.2. 電力会社エリア毎の電力需給にみる再生可能エネルギーの割合 松原弘直(認定NPO法人環境エネルギー政策研究所)
7.3. 福島第一原発事故による避難指示区域の状況 永続地帯研究会
7.4. 3万kW未満の水力発電まで試算対象とした場合のランキング 永続地帯研究会
7.5. 食料自給率計算の検証、経年変化、今後の課題 泉浩二(環境カウンセラー)
7.6. 営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の最新動向 馬上丈司(千葉エコ・エネルギー株式会社)
7.7. 地方自治体再生可能エネルギー政策調査にみる課題 倉阪秀史(千葉大学大学院社会科学研究院)
 
  • 報告書本体・都道府県分析表の掲載先
こちら(https://bit.ly/3aMacp5)よりダウンロードいただくか、
下記のwebサイトにアクセスしてください。
・永続地帯 Web サイト https://sustainable-zone.com/
・環境エネルギー政策研究所 Web サイト https://www.isep.or.jp/  
 
  •  本件に関するお問合わせ
contact*sustainable-zone.com (*は@に変えてください)
千葉大学大学院社会科学研究院教授 倉阪秀史
認定NPO法人環境エネルギー政策研究所 松原弘直
 

すべての画像


会社概要

国立大学法人千葉大学

71フォロワー

RSS
URL
https://www.chiba-u.ac.jp/
業種
教育・学習支援業
本社所在地
千葉県千葉市稲毛区弥生町1-33  
電話番号
043-251-1111
代表者名
横手 幸太郎
上場
未上場
資本金
-
設立
2004年04月