リビア:首都トリポリの武力衝突 国内に勾留中の難民・移民にも被害
リビアの首都トリポリで8月26日、対立する武装勢力の間で激しい戦闘が勃発。市街地で3日間続いた争いに巻き込まれ、民間人を含む死傷者が出た。現地で医療・人道援助活動を行う国境なき医師団(MSF)は、この戦闘によって、リビア人とともに、国内に不当に勾留されている難民・移民、庇護希望者らの生命が危険にさらされていると指摘。欧州各国政府はリビアが安全な場所ではないと認め、不当勾留されている最弱者の援助に当たる責務があると訴えている。
勾留者の解放と安全な場所への避難が急務
今回の戦闘では住宅街にも激しい砲撃戦があり、トリポリ市内各地の収容センターに勾留されている推定8000人もの難民・移民、庇護希望者にも被害が及んだ。戦闘が激しかった地域の収容センターでは、食料が全く手に入らない状況が2日間続いた。中には解放された人もいるが、近隣地区に逃げ込むしかなく、砲火にさらされた恐れがある。
トリポリ市内の収容センターにおける人道援助ニーズは以前から警戒水準に達していたが、戦闘勃発以降さらに増大した。MSFも医療活動を開始するとともに、まだ収容センターに勾留されている人に、食糧・水・栄養補助食を提供している。しかし地域への立ち入りには制限がありMSFを含む援助団体は援助ニーズが高いと見込まれる場所に充分に近づけていない。リビアでは、トリポリの周辺地域でも戦闘の影響が及んでおり、医療は受けづらくなってきている。
リビアでMSFの活動責任者を務めるイブラヒム・ユニスは、「今回はっきりしたのは、難民・移民らにとってリビアは安全な場所ではないということです。多くの人は、自国の内戦を逃れてきたり、人身売買業者に騙され長期間ひどい扱いを受けたりした後に、こうした収容センターに押し込められています。すでに極めて弱い立場にあるところへ、またも武力衝突に巻き込まれ、逃げることもできません。安全な場所や、よりよい暮らしを求めてきたというだけの理由で、身柄を拘束されています。こうした人たちを安全かつ尊厳を保った方法ですぐに解放し、安全な場所へ避難させることが求められています」と話す。
安全な避難を妨げる政策
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、収容センター勾留者の半数近くは、エリトリア、エチオピア、ソマリア、スーダンといった紛争を抱える地域の出身である。こうした人びとは国際法の下に、庇護を受ける権利があるにも関わらず、リビア当局や安全な国の政府および国連は、庇護申し立て審理に有効な体制を整備できてない。欧州各国にいたっては、庇護希望者のリビア出国を未然に防ぐ政策を打ち出してさえいる。
難民・移民らが地中海を渡る避難ルートも同様の政策によって妨げられている。欧州の後援を受けたリビアの沿岸警備隊が海上で救助された人をリビアに連れ戻しているからだ。現在収容センターにいる人の大多数は、海上で拿捕され、リビアへ送還された人たちである。トリポリにある収容センターは、もともと貧弱だった設備に加えて、定員超過のために直近数ヵ月間で状況はさらに悪化、清潔な水、下水設備、医療が不足し、心身の不調を訴える人が増えている。
MSFはリビアで2011年から活動。その後2016年にトリポリ収容センターで活動を開始し、一次医療、心理ケア、給排水・衛生活動を担っている。現在緊急搬送を担う唯一の医療団体であり、収容センター内の難民・移民・庇護希望者を病院に搬送している。MSFはフムス、ズリタン、ミスラタ市内の収容センターでも活動し、バニワリドでも診療を行っている。
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