光ネットワークの発展に貢献したデジタルコヒーレント光受信技術により、令和7年春の褒章において紫綬褒章を受章
光ファイバー通信で発生する信号波形ひずみを補正し、大容量・長距離の光伝送システムを実現
当社社員である星田 剛司(ほしだ たけし)が、光ファイバー通信で発生する信号波形ひずみを補正することで大容量・長距離伝送を実現する光通信技術を発明するとともに、光ファイバー伝送システムの開発を通じて日本の科学技術の発展に貢献した功績が認められ、このほど、令和7年春の褒章において紫綬褒章を受章することとなりました。
本技術は、当社の光伝送システム(製品名:「FLASHWAVE 9500」、「1FINITYシリーズ」ほか)などに搭載され、国内外で活用されており、世界中で社会基盤であるICTを支えるネットワークの大容量化に貢献しています。
受賞者および受賞技術
紫綬褒章
功績名「高ひずみ耐性デジタルコヒーレント光受信器の開発」
受章者
富士通株式会社 フォトニクスシステム事業本部 先行技術開発室長
Global Fujitsu Distinguished Engineer
星田 剛司(ほしだ たけし・54歳)
星田 剛司の主な受賞・表彰歴:
平成29年 電気科学技術奨励賞
平成30年 関東地方発明表彰 栃木県知事賞
令和 2年 文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)
令和 2年 全国発明表彰 特許庁長官賞
受章技術:
デジタルコヒーレント(注1)受信器は、従来の光ファイバー通信に用いられてきた直接検波(注2)受信器に対して、雑音に強いという特長があるとともに、光ファイバーの波長分散(注3)に起因する信号波形ひずみをデジタル信号処理で補償する能力を備えているため、光ファイバー通信システムの革新につながることが期待されていました。しかし、信号がより高速化したり、伝送距離が長距離化したりすると、非線形効果(光カー効果)(注4)や偏波モード分散(注5)など、より複雑な信号波形のひずみが顕著になり、安定した信号受信が困難になるという問題がありました。
この課題を解決するため、今回の受賞技術である、高ひずみ耐性デジタルコヒーレント光受信器が開発されました。特長の一つは、光ファイバーの有する光カー効果と波長分散の組み合わせで生じる複雑な信号波形のひずみ(非線形ひずみ)を、摂動法(注6)と呼ばれる近似解析手法を適用することで簡素な演算で推測することを可能にした点です。これにより、実用化が困難と考えられていた非線形ひずみ補償技術の実用化に世界で初めて成功しました。もう一つの特長は、偏波モード分散由来の信号波形ひずみの影響を受けない安定した受信動作を可能にする信号処理アルゴリズム(注7)を開発した点で、偏波状態の変動による受信動作の不安定性を解消し、従来のデジタルコヒーレント受信器の限界を突破する広範な伝送条件での安定動作を実現しました。
これらの開発技術により、光ファイバー通信における大容量・長距離伝送の実現に貢献しました。
産業上の応用:
本技術は、毎秒100ギガビットの光伝送を実現する当社製品「FLASHWAVE9500」に搭載し、2012年に商用導入されたのを皮切りに、国内外に出荷される各種製品に継続採用されており、最新機種「1FINITY T900」においては、毎秒1テラビット超の大容量光ファイバー通信を支える重要技術として、ICTサービスのバックボーンの進化と、社会の発展に貢献し続けています。
紫綬褒章について
紫綬褒章は、科学技術分野における発明・発見や、学術およびスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた個人に授与される国家褒章です。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
注釈
注1 デジタルコヒーレント:
強度以外の情報も電気信号に変換した上でデジタル信号処理を適用することにより、飛躍的に高い受信性能を実現する受信方式。
注2 直接検波:
光信号の強度のみを電気信号に変換する、光ファイバー通信で長らく用いられてきた受信方式。
注3 波長分散:
伝送路である光ファイバー中を進む光の速度が、光の波長によって少しずつ異なる現象。
注4 非線形効果(光カー効果):
伝送路である光ファイバーの屈折率が、光の強度によって変化する現象。
注5 偏波モード分散:
光ファイバーの断面形状がわずかに真円からずれていることなどによって発生する複屈折が累積することで、予測困難で複雑な波形ひずみを生じる現象。偏波とは、電磁波である光の電界・磁界の振動方向が、波の進行方向に対してどのような状態にあるかを表現したもの。
注6 摂動法:
数学的に厳密に解くことのできない問題について、厳密に解ける問題に小さな変更(摂動)が加えられた問題とみなすことで、比較的少ない計算量で近似解を求める方法。
注7 偏波モード分散由来の信号波形ひずみの影響を受けない安定な受信動作を可能にする信号処理アルゴリズム:
特許第5444877号「デジタルコヒーレント受信器」
関連リンク
令和2年5月27日 富士通テクニカルレビュー「光ネットワークの大容量化と長距離化を実現する非線形ひずみ補償技術」
当社のSDGsへの貢献について

2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)は、世界全体が2030年までに達成すべき共通の目標です。富士通のパーパス(存在意義)である「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」は、SDGsへの貢献を約束するものです。
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