東北大学大学院との共同研究で生理用ナプキンとのこすれが皮下組織に与える影響を数値化 足まわりの『中空構造』※1が肌負担の原因となるひずみ※2を42%低減できることを確認!
衛生用紙製品No.1※3ブランドの「エリエール」を展開する大王製紙株式会社(住所:東京都千代田区)は、東北大学大学院工学研究科の堀切川教授らと共同で、摩擦が生じた際に肌の皮下組織まで及んでいるひずみを数値化する方法を確立。その結果、生理用ナプキンの足まわりにあたる部分に『中空構造』を設けることで、ひずみを42%低減できることを実証しました。
1.研究のまとめ
生理用ナプキンと人工皮膚片(以下、皮膚片)とをすべらせた際に、摩擦により肌内部で生じるひずみについて、デジタル画像相関法による解析を行いました。これにより、肌内部で発生するひずみを低減する構造として、『中空構造』が有効であることを実証しました。
~堀切川 一男(ほっきりがわ かずお)教授のコメント~
生理用ナプキンと肌との摩擦によって生ずる肌内部のひずみ挙動を様々な条件のもとで解明し、これらの知見に基づいて、皮下組織のダメージの大幅な低減が期待できるナプキン構造を見出せたことは、極めて肌に優しい生理用ナプキンの実現につながるものであり、喜ばしい大きな研究成果です。
2.背景
わが国の人口減少に伴い、生理用ナプキン市場は年々縮小していくことが見込まれる中で、肌にやさしい生理用ナプキンへの需要は高まっています。特に肌の変化が起こりやすい30代前後では、「肌へのやさしさ」をナプキン購入時の最重要項目とする割合が15.3%(2019年)から26.4%(2021年) ※4と増加しており、その傾向が高くなっています。一方で、これまで生理用ナプキンのこすれによる肌への負荷の評価を、摩擦や滑らかさで評価することが多かったものの、実際の使用感を評価する官能評価試験※5との整合性がとりづらいといった問題点があります。
そこで、大王製紙株式会社と東北大学大学院工学研究科の堀切川教授との共同で、生理用ナプキンの摩擦特性を明らかにし、官能評価値と高い相関を示す手触り感評価パラメータを提案することを目的とした研究を行っています。その中で、生理用ナプキンと肌との間に摩擦が発生した際に生じる、肌内部のひずみについて検証を行いました。
※1:不織布間に中空のスペース(未接着部)を設けた構造
※2:物体に力が加わった際の形状変化、ゆがみ
※3:インテージSRI+ ティシュー市場、トイレットペーパー市場、キッチンペーパー市場、ペーパータオル市場の合算(2020年度メーカー別売上金額)
※4:2019年9月(n=1,961)、2021年10月(n=2,064) 生活者調査(WEB) (15~49歳女性生理用ナプキン使用者)
※5:人の五感を用いて評価する検査方法
3.研究の概要
3-1.評価サンプル
・従来品サンプル:従来の当社生理用ナプキンの足まわり内部構造を模したサンプル
・『中空構造』サンプル:足まわりの『中空構造』を模したサンプル
3-2.試験方法
図2に示される直動型すべり摩擦試験装置を用いて、指先を模擬した皮膚片(硬度15)とサンプルとを接触させた際の、皮膚片のひずみを解析しました。
直動型すべり摩擦試験装置のロードセルの下部に、図3に示すような模様をプロットした皮膚片を固定します。サンプルの他端を引っ張り、しわを伸ばしつつ、サンプル上で皮膚片をすべらせます。皮膚片上の計測領域を640個の要素に分割し、ハイスピードカメラでの撮影結果(図4参照)をもとに各要素を形成する格子点周りの光度分布の相関をとることで、変形後の格子点の位置を算出します。各要素のひずみから摩擦試験中の皮膚片のひずみ分布を求めることで解析を行いました。(デジタル画像相関法)
4.実験結果及び考察
生理用ナプキン装着時には足まわりの動きに応じて、肌と不織布の間でこすれが生じ、これにより主に肌表面から深さ2~3mmの真皮に相当する肌内部まで、ひずみが発生します。(図5参照)
従来品サンプルでは、足まわりが接触する不織布間が接着されているため、皮膚片内部で大きなひずみが発生しています。一方で、不織布間の接着をなくし、不織布同士がすべる仕様とした『中空構造』サンプルでは、皮膚片内部で生じるひずみが42%低減、と有意に減少しており、ひずみが不織布内で吸収されています。(図6、7参照)
※6:グラフの実線は測定値の平均値、積み上げで示した箇所は試行回数ごとのばらつき
以上の結果は、生理用ナプキンとのこすれが皮下組織に与える影響を数値化することが可能であることを示しています。また、生理用ナプキンに中空構造を設けることは、肌への負担の原因となるこすれによる肌内部のひずみを低減させる方法として、有効であることを示しています。
東北大学大学院 工学研究科 堀切川 一男教授
<経歴>
1956年、青森県八戸市生まれ。1984年東北大学大学院工学研究科機械工学専攻博士課程後期3年の課程修了。工学博士。
東北大学工学部助手、講師、助教授、山形大学工学部助教授を経て、2001年6月より東北大学大学院工学研究科教授、現在に至る。
専門はトライボロジー(摩擦・摩耗・潤滑に関する総合科学技術)。
これまで行った主な研究は、摩耗形態図による摩耗理論の体系化に関する研究、長野五輪 日本チーム用低摩擦ボブスレーランナーの開発、米ぬかを原料とする硬質多孔性炭素材料「RBセラミックス」の開発と応用など。産学官連携による開発、製品化は230件以上。
文部科学大臣賞(科学技術振興功績者表彰)、内閣府科学技術政策担当大臣賞(産学官連携功労者表彰)、イノベーションコーディネーター大賞・文部科学大臣賞、第5回経済産業省ものづくり日本大賞(優秀賞)、2013年度日本トライボロジー学会技術賞、第6回経済産業省ものづくり日本大賞(東北経済産業局長賞)、日本機械学会東北支部技術研究賞などを受賞。
モットーは、地域に根ざし世界を目指す研究、夢の実現を目指した研究。ニックネームは、ドクターホッキー。
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