「結婚指輪」戦線に異変 コロナで偏る人気、高級ブランド独り勝ち ジュエリー市場は2年ぶり拡大も「二極化」鮮明に
デジタル商談などチャネル多様化も進む 中国向け「ライブコマース」も好調
帝国データバンクは、2021年度のジュエリー市場の見通しと今後の展望について調査・分析を行った。
<調査結果(要旨)>
2020年度は、コロナ禍で売り上げの多くを占めていたインバウンド売り上げが消失。緊急事態宣言をはじめ人流抑制の影響で、百貨店やショッピングモールを中心に店頭での対面販売ができず、来店客数が大きく落ち込んだ。一方で、21年度は中間層や富裕層を中心にリベンジ消費が発生。株高なども背景に、高額商品の売り上げが好調だった。オンラインなどEC販売の導入も進み、通販チャネルでの顧客獲得も順調で、さらなる業況回復への期待感も高まった。ただ、高額なハイジュエリーに人気が偏り、男性のギフト需要などに支えられた中低価格のファインジュエリーでは逆に客足の回復が鈍いなど、業況の回復には二極化の側面がみられた。
「モノ消費」志向で進む二極化 ティファニー・カルティエは好調、中低価格帯は苦戦
2022年1月までの企業業績(予想を含む)から、2021年度のジュエリー市場を推計したところ、前年から3%増の5200億円前後となることが分かった。過去最も高い水準で、9000億円を超えた2007年度からは半分程度にとどまるものの、前年度比で約2割の減少となった20年度に比べると業況は回復傾向がみられ、2年ぶりに前年を上回る見込みとなっている。
富裕層を中心とした高額消費も旺盛だ。年収1000万円以上の中間層・富裕層における2021年のジュエリー消費は、他の年収階層に比べて小幅な落ち込みとなった。コロナ前の水準には届かないものの、株高に加えてレジャーや旅行に回っていたマネーが「モノ消費」の形でハイジュエリーに流れ込み、「購入単価は上昇した」といった動きが強まった。
この結果、こうした2021年の高級志向をより多くつかんだのがハイジュエリーを得意とする海外ブランドとなった。米ジュエリー大手のティファニーを傘下に持つ高級ブランド、フランスのLVMHモエ・ヘネシー・ルイヴィトンにおける21年通期の売上高が前年比2ケタの大幅増収、コロナ前の実績を上回る。なかでも時計・ジュエリー部門の伸びが著しく、日本市場も10月以降は2ケタ増収となるなど好調だった。カルティエやピアジェを傘下に持つスイスのハイジュエリーメーカー、フィナンシエール・リシュモンも、10~12月期で前年から3割増と好調だった。
ジュエリーブランド「カナル4℃」のヨンドシーHDは、コロナ禍で出会いの場や機会が失われたほか、「主力のギフトやブライダルジュエリーの需要が縮小した」(同社)ことで、2022年2月期の連結業績予想を下方修正した。多くのジュエリーショップでも、クリスマス商戦でシルバー製品の販売は前年より伸びたものの、全体で落ち込んだ業績を回復するまでは至らなかった。これまで、縮小する国内市場に対応するため、男性用の贈答アクセサリーやブライダルジュエリーをはじめ販売量が見込める低価格帯に焦点を絞ってきた、戦略の見直しを余儀なくされている。
足元では、12月のボーナス商戦やクリスマス商戦は好調など前向きな話も多い。ただ、急速に感染が拡大するオミクロン株で「先行きが不安」など、再度の需要冷え込みを懸念する声もあがっている。間近に控えるバレンタイン・ホワイトデー商戦の動向に不安を抱える企業もあるほか、行動制限が緩和されたあともレジャーや旅行など「コト消費」が回復することで、21年度のようなモノ消費は選別され、「今後は有名ブランドしか生き残れないのでは」(都内ジュエリーショップ)との懸念も抱える。コロナ前は大きなシェアが見込めたインバウンド(訪日外国人)による購買も難しく、そのため国内の中間層や富裕層の取り込みが当面の課題となる。
こうしたなか、落ち込んだ店頭売り上げを回復すべく「ネットとリアルの融合」による売り場の創出が進んでいる。店舗からビデオ通話を通じて顧客に商品を提案するオンライン商談や、ウェブからオーダーできるシステムが普及。ウェブ化によって通販部門が拡大したほか、対面・長時間接客から、「接客時間の短縮と成約率の向上を両立させている」などのメリットが聞かれる。また、都内のパール専門店では新たに中国向けのライブコマースを開始したところ反響が高く、「売り上げが1割近く伸びた」など手応えもみられた。オンラインでの新たなビジネスの展開など、コロナ禍で新たに生まれたチャンスを掴めるかが、ジュエリーショップの今後のキーワードとなりそうだ。
- 2021年度のジュエリー市場、コロナ前から2割減の5200億円予想 2年ぶり市場拡大へ
- 結婚指輪をはじめとする「ハイブランド」志向が顕著 中低価格帯のジュエリーでは苦戦がみられる
- 富裕層の取り込みが課題 「ネットとリアルの融合」による売り場創出、ライブコマースなども好調
ハイジュエリーを中心に売上が回復する一方、男性のギフト需要などは苦戦がみられる(写真=イメージ)
2020年度は、コロナ禍で売り上げの多くを占めていたインバウンド売り上げが消失。緊急事態宣言をはじめ人流抑制の影響で、百貨店やショッピングモールを中心に店頭での対面販売ができず、来店客数が大きく落ち込んだ。一方で、21年度は中間層や富裕層を中心にリベンジ消費が発生。株高なども背景に、高額商品の売り上げが好調だった。オンラインなどEC販売の導入も進み、通販チャネルでの顧客獲得も順調で、さらなる業況回復への期待感も高まった。ただ、高額なハイジュエリーに人気が偏り、男性のギフト需要などに支えられた中低価格のファインジュエリーでは逆に客足の回復が鈍いなど、業況の回復には二極化の側面がみられた。
「モノ消費」志向で進む二極化 ティファニー・カルティエは好調、中低価格帯は苦戦
2022年1月までの企業業績(予想を含む)から、2021年度のジュエリー市場を推計したところ、前年から3%増の5200億円前後となることが分かった。過去最も高い水準で、9000億円を超えた2007年度からは半分程度にとどまるものの、前年度比で約2割の減少となった20年度に比べると業況は回復傾向がみられ、2年ぶりに前年を上回る見込みとなっている。
コロナショックから脱出し、 ジュエリー市場は回復傾向に
富裕層を中心とした高額消費も旺盛だ。年収1000万円以上の中間層・富裕層における2021年のジュエリー消費は、他の年収階層に比べて小幅な落ち込みとなった。コロナ前の水準には届かないものの、株高に加えてレジャーや旅行に回っていたマネーが「モノ消費」の形でハイジュエリーに流れ込み、「購入単価は上昇した」といった動きが強まった。
この結果、こうした2021年の高級志向をより多くつかんだのがハイジュエリーを得意とする海外ブランドとなった。米ジュエリー大手のティファニーを傘下に持つ高級ブランド、フランスのLVMHモエ・ヘネシー・ルイヴィトンにおける21年通期の売上高が前年比2ケタの大幅増収、コロナ前の実績を上回る。なかでも時計・ジュエリー部門の伸びが著しく、日本市場も10月以降は2ケタ増収となるなど好調だった。カルティエやピアジェを傘下に持つスイスのハイジュエリーメーカー、フィナンシエール・リシュモンも、10~12月期で前年から3割増と好調だった。
結婚指輪の購入予算は過去最高 ジュエリー購入も中間・富裕層で回復
ジュエリーブランド「カナル4℃」のヨンドシーHDは、コロナ禍で出会いの場や機会が失われたほか、「主力のギフトやブライダルジュエリーの需要が縮小した」(同社)ことで、2022年2月期の連結業績予想を下方修正した。多くのジュエリーショップでも、クリスマス商戦でシルバー製品の販売は前年より伸びたものの、全体で落ち込んだ業績を回復するまでは至らなかった。これまで、縮小する国内市場に対応するため、男性用の贈答アクセサリーやブライダルジュエリーをはじめ販売量が見込める低価格帯に焦点を絞ってきた、戦略の見直しを余儀なくされている。
コロナで売り上げは落ち込んだものの、 その後の回復には各社で差が出ている
足元では、12月のボーナス商戦やクリスマス商戦は好調など前向きな話も多い。ただ、急速に感染が拡大するオミクロン株で「先行きが不安」など、再度の需要冷え込みを懸念する声もあがっている。間近に控えるバレンタイン・ホワイトデー商戦の動向に不安を抱える企業もあるほか、行動制限が緩和されたあともレジャーや旅行など「コト消費」が回復することで、21年度のようなモノ消費は選別され、「今後は有名ブランドしか生き残れないのでは」(都内ジュエリーショップ)との懸念も抱える。コロナ前は大きなシェアが見込めたインバウンド(訪日外国人)による購買も難しく、そのため国内の中間層や富裕層の取り込みが当面の課題となる。
こうしたなか、落ち込んだ店頭売り上げを回復すべく「ネットとリアルの融合」による売り場の創出が進んでいる。店舗からビデオ通話を通じて顧客に商品を提案するオンライン商談や、ウェブからオーダーできるシステムが普及。ウェブ化によって通販部門が拡大したほか、対面・長時間接客から、「接客時間の短縮と成約率の向上を両立させている」などのメリットが聞かれる。また、都内のパール専門店では新たに中国向けのライブコマースを開始したところ反響が高く、「売り上げが1割近く伸びた」など手応えもみられた。オンラインでの新たなビジネスの展開など、コロナ禍で新たに生まれたチャンスを掴めるかが、ジュエリーショップの今後のキーワードとなりそうだ。
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