イタリア当局、地中海上の救助船を押収――根拠ない容疑で
イタリアの司法当局が国境なき医師団(MSF)と市民団体「SOSメディテラネ」が共同運航する捜索救助船「アクエリアス号」を押収し、MSFの銀行口座の一部凍結要請を認める判断を下した。船の廃棄物処理が不適切であったとの容疑に基づくもので、MSFは根拠のない容疑だとして抗議するとともに、当局側に海上での医療・人道援助活動を犯罪視させる意図があると厳しく非難している。
根拠のない疑い
今回の船の押収と銀行口座の凍結要請は、シチリア州カターニアの検察当局が以前から行っていた船内の廃棄物処理、特に残飯、救助された人の衣服、船上の医療活動によって出た廃棄物に関する調査を受けて出された。しかしMSFの捜索救助船は廃棄物管理を含む入港手続きにおいて、常に規定に従って処置しており、2015年の捜索救助活動開始以来、関係当局からこうした処置に関する質問を受けたことはなく、公衆衛生への有害物の存在も指摘されたことはない。
MSFはイタリア当局に全面的に協力する一方で、検察の事実認識に反論し、いかなる違法な廃棄物処理にも関わっていないとして告発の誤りを指摘していく方針。またMSFは押収命令を精査した上で内部調査を行い、容疑は事実ではなく誤解を招くとして、イタリアの再審裁判所に控訴する予定。
MSFイタリアの事務局長ガブリエレ・エミネンテは、「すべての事実を明らかにし、ルール遵守の責任をどこまでも果たしていきます。しかし、私たちはここでMSFの人道援助活動の正当性と合法性も再び強く主張します。こうした度重なる攻撃といわれのない告発は、海上で本物の犯罪を引き起こしています。今年だけでも、2000人余りが地中海で命を落としました。命を救う捜索救助船はもう残っていないにも関わらず、まだ危険な海の旅をしようとする人もいます。生きながらえた人びとはリビアに返され、非人間的で理不尽な勾留を受けています。国際海事法や難民法は無視されています」と話す。
MSFは5隻の捜索救助船を3年にわたる活動に投じ、8万人以上の救助と援助に携わってきた。これは海事当局と連携して各国法と国際法を完全に遵守した形で行われている。政治的圧力をかける協調介入の結果、アクエリアス号はこの2ヵ月で2回船籍を取り消され、現在は フランスのマルセイユ港に停泊している。
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