【武蔵野大学】「主婦が日本の家電を進化させた」研究が世界で高評価! 武蔵野大学 経営学部 平野 貴士准教授が『Business History Review』年間最優秀論文賞を受賞
ハーバード・ビジネス・スクール発行の世界的学術誌『Business History Review』の年間最優秀論文賞「The Henrietta Larson Article Award」を受賞
武蔵野大学(東京都江東区、学長:小西 聖子)の経営学部経営学科の平野 貴士准教授が筆頭著者を務めた研究論文「Housewives and the Growth of the Japanese Electrical Appliance Industry, 1950–1990(主婦と日本の家電産業の発展、1950~1990年)」が、ハーバード・ビジネス・スクール発行の経営史分野における世界的な学術誌『Business History Review』の年間最優秀論文賞「The Henrietta Larson Article Award」を受賞しました。

本賞は、『Business History Review』に前年掲載された論文の中から、編集諮問委員会の投票により最も優れた論文1本に授与される賞です。受賞論文では、これまで大企業や男性技術者が中心と考えられてきた日本の家電産業の発展において、家庭の主婦が製品改良に重要な役割を果たしていたことを明らかにしました。
【研究の背景:「日本の家電産業を発展させたのは企業と技術者だけ」という通説】
高度経済成長期の日本では、家電産業の発展は、大企業や男性技術者による技術革新によって実現したと考えられてきました。一方で、家電製品を日常的に使用する消費者、とりわけ家庭で家事を担っていた主婦は、企業が開発した製品を受け入れる「受け身の存在」として捉えられることがほとんどでした。
しかし、家電は実際に使う人の声によって改良されてきた側面があります。それにもかかわらず、家電の開発や普及において主婦が果たした役割については十分に明らかにされていませんでした。そこで本研究では、企業だけでなく、消費者である主婦が日本の家電産業の発展にどのような役割を果たしたのかを検証しました。
【研究内容:主婦の声が家電の進化を支えていたことを実証】
本研究では、『暮しの手帖』をはじめとする女性向け雑誌や企業の社内資料、関係者への聞き取りなど、多様な資料を分析しました。その結果、高度経済成長期の主婦は単なる消費者ではなく、家電製品の使い勝手や改善点を雑誌へ積極的に投稿し、その声が雑誌を通じて企業へ届けられていたことを明らかにしました。たとえば洗濯機です。『暮しの手帖』の商品テストは「立ったままではダイヤルが見えにくい」と指摘しました。メーカーは主婦の声を受けて設計を変更し、翌年には立ったままダイヤルが見える形に改めています。

同誌は284名の主婦から使用報告を集めるなど、生活者の視点を丹念に集めて企業へ伝えていました。企業側もそうした意見を製品開発に取り入れ、より使いやすい家電へと改良を重ねていました。つまり、日本の家電産業の発展は、企業や技術者だけで実現したものではなく、実際に製品を使う主婦と企業との対話によって支えられていたことを示した点が、本研究の大きな成果です。これは、日本の高度経済成長を支えたイノベーションの歴史を、消費者やジェンダーの視点から捉え直す新たな研究成果となっています。
本研究は、武蔵野大学図書館が所蔵する生活雑誌『暮しの手帖』との出会いをきっかけに着想を得たものであり、同誌の記事や読者投稿を分析することで、これまで見過ごされてきた主婦の役割を明らかにしました。また、女性誌が主婦の声を企業へ届ける橋渡し役を果たし、その意見が製品開発に反映されていたことも明らかにしました。
【今後の展望】
現在は『暮しの手帖』の商品テスト自体を対象に、製品を変えた「主婦の声」はどのように形づくられたのか、その過程を追っています。2026年7月にはトロント大学で開催された第3回世界経営史会議で成果の一部を報告したほか、科学研究費助成事業の共同研究「Design and value creation in the Japanese manufacturing industry (1950–2025)」にも参画し、産業の歴史をつくる側とつかう側の2つの視点で描き直そうと試みています。
【コメント】
■経営学部 経営学科 平野 貴士准教授

共著者の酒井健先生(一橋大学・東北大学)、ピエール=イヴ・ドンゼ先生(大阪大学)に心より感謝申し上げます。この受賞は、お二人との議論の積み重ねによるものです。研究は、武蔵野大学図書館で『暮しの手帖』を見つけたことから始まりました。誌面には、商品への意見を自分の言葉で伝える主婦の姿がありました。歴史は、重要だと認められた人々だけでつくられるものではありません。物語の外側に置かれた小さな声を拾い直せば、歴史の見え方は変わります。受賞を励みに、見過ごされた声を歴史へつなぐ研究を続けます。
【受賞の概要】

|
賞の名称 |
The Henrietta Larson Article Award(ヘンリエッタ・ラーソン論文賞) |
|
授与機関 |
Business History Review誌(ハーバード・ビジネス・スクール発行、1926年創刊の経営史分野の専門誌) |
|
内容 |
同誌に掲載された論文のうち最も優れた1本に対し、編集諮問委員会の投票により毎年授与される賞 |
|
受賞対象 |
Vol. 98(2024年)掲載論文 |
|
受賞論文 |
“Housewives and the Growth of the Japanese Electrical Appliance Industry, 1950–1990,” Business History Review, Volume 98, Issue 2, Summer 2024, pp. 389–416. |
|
著者 |
・平野 貴士 准教授(武蔵野大学 経営学部 経営学科)※筆頭著者 ・酒井 健 准教授(一橋大学・東北大学) ・ピエール=イヴ・ドンゼ 教授(大阪大学) |
【「Business History Review」と賞について】
『Business History Review』は、1926年創刊、ハーバード・ビジネス・スクールが発行する経営史分野を代表する国際的な学術誌です。「The Henrietta Larson Article Award」は、同誌に前年掲載された論文の中から、編集諮問委員会の投票により年間で最も優れた論文1本に授与される賞です。
【参考リンク】
・受賞ページ(Business History Review):
・受賞告知(ハーバード・ビジネス・スクール Business History Initiative):
https://www.hbs.edu/businesshistory
・論文ページ(DOI):
https://doi.org/10.1017/S000768052400028X
武蔵野大学について

1924年に仏教精神を根幹とした人格教育を理想に掲げ、武蔵野女子学院を設立。武蔵野女子大学を前身とし、2003年に武蔵野大学に名称変更。2004年の男女共学化以降、大学改革を推進し13学部21学科、14大学院研究科、通信教育部など学生数14,000人超の総合大学に発展。2019年に国内私立大学初のデータサイエンス学部を開設。2021年に国内初のアントレプレナーシップ学部を開設し、「AI活用」「SDGs」を必修科目とした全学共通基礎課程「武蔵野INITIAL」をスタートさせる。2023年には国内初のサステナビリティ学科を開設。2024年に創立100周年を迎え、世界初のウェルビーイング学部を開設。2026年には通信教育の新たな学びの形を提案する通信教育部国際データサイエンス学部を開設した。2050年の未来に向けてクリエイティブな人材を育成するため、大学改革を進めている。
武蔵野大学HP:https://www.musashino-u.ac.jp/
【関連リンク】
■経営学部経営学科:
https://www.musashino-u.ac.jp/academics/faculty/business_administration/
■経営学科特設ページ:https://musashino-u-ka.com/
■学問の地平から 教員が語る、研究の最前線
~第89回 経営学(イノベーション) 経営学部 経営学科 平野 貴士准教授~:
https://www.musashino-u.ac.jp/research/interview/89_hirano/index.html
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像
