地中海での海難救助、強制停止へーー欧州による溺死宣告

​国境なき医師団(MSF)と市民団体「SOSメディテラネ」は12月7日(日本時間)、イタリア政府をはじめ欧州各国政府の協調介入により、地中海で共同運航している海難救助船「アクエリアス号」が活動停止に追い込まれたことを発表した。

フランス南部マルセイユ港に停泊したまま活動停止となったアクエリアス号フランス南部マルセイユ港に停泊したまま活動停止となったアクエリアス号


世界で最も危険な航路で人びとが避難し続けるなか、直近の2ヵ月間にわたりアクエリアス号は港に停泊させられ、人道援助活動ができないでいた。イタリア政府をはじめ欧州各国政府の協調介入により、援助団体の活動は非合法とみなされ、危機に直面する人びとへの援助活動は妨げられている。移民に関するEUの対外政策、および協調介入は国際法と人道原則を揺るがしている。早急な解決策のないまま、MSFと「SOSメディテラネ」はアクエリアス号の活動停止を余儀なくされた。

意図的な救命活動の妨害

「暗黒の日です」とMSFオランダの事務局長、ネルケ・マンダースは話す。「欧州は海難救助体制を整備しなかったばかりか、意図的に救命活動を妨害しています。アクエリアス号の活動中止は、より多くの命が海上で失われ、避けられたはずの死が目撃されることもなく続くことを意味しています」

過去18ヵ月間、人権に対して最も抑圧的な国による施策を元に、EU加盟国は人道援助団体による海難救助活動を攻撃してきた。アクエリアス号は、当局の規制を遵守しているにもかかわらず、今年2度も船籍を剥奪され、現在は、不当な犯罪活動の容疑がかけられている。こうした中傷的な協調介入と国際法を歪める捜査が続くなか、海で救助された人びとが安全な港への上陸を拒否され、他の船の援助も拒まれ、何週間も海を漂流している。

2000人以上が地中海で命を落とす

このたびのアクエリアス号の援助活動の強制終了は、危機的な状況下で起きている。2018年には推定2133人が地中海で命を落とした。大多数は、リビアから出航した人びとである。EU加盟国は、リビア沿岸警備隊に1万4000人を超える人を海上で拿捕(だほ)させたうえ、リビアへ強制送還し、人びとはさらなる苦境に立たされている。これらは、明らかに国際法に違反している。2015年、国連安全保証理事会で欧州は海難救助された人をリビアへは強制送還しないと公約した。

 「現在、欧州は強制送還を直接支援しつつ、移民対策は成功だと主張しています」。MSFの緊急対応責任者、カルリーヌ・クライジャーは話す。「彼らの言う『成功』が何を意味しているのか明確にさせましょう。海上での救命活動がなく、子ども、女性、男性が理不尽な勾留に押し戻され実質的に逃げる見込みもないこと、全ての船に対し、海難者の救助を思いとどまらせること。これらが彼らのいう『成功』なのです」

 2016年2月に捜索救助活動を開始して以来、リビア、イタリア、マルタ島の海上で、アクエリアス号は3万人弱を援助した。アクエリアス号による海難救助活動は、2018年10月4日に58人を救助し、マルセイユ港に到着したのが最後になりました。それ以前に活動していたMSFの海難救助船─バーボン・アルゴス、ディグニティ、プルーデンス、フィーニックス─の分も合計すると、2015年以来、地中海でMSFが救助、または援助した人は8万人を超える。他のNGOによる努力にもかかわらず、地中海では現在、救助専用船は活動していない。

「地中海で溺れる人びとや、リビアで身柄を拘束されている人びとがいる限り、MSFは全力で医療・人道援助を届ける方法を見つけ出していきます」とクライジャーは訴えた。

写真:© Ikram Ngadi
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