【国立科学博物館】新種の大型肉食恐竜の発見!アルゼンチンの白亜紀末期地層から ~メガラプトル類最大級・最後の種の可能性も~

 独立行政法人国立科学博物館(館長:篠田 謙一)の真鍋 真副館長、對比地 孝亘研究主幹(地学研究部 生命進化史研究グループ)、アルゼンチン国立自然科学博物館のフェルナンド・ノヴァス博士らは、2020年3月にアルゼンチン・パタゴニア南部の白亜紀最末期の地層(約7000 万年前)から、大型肉食恐竜の化石を発掘しました。
 化石のクリーニングを経て、研究の結果、新種であることなどが判明し、論文がScientific Reports 誌(4月26日付:日本時間4月27日)に掲載されることになりました。
【研究のポイント】
以下4点が当研究で判明しました。
  • 本種はメガラプトル類の新種であること。
  • メガラプトル類の中でも最大級であること。
  • メガラプトル類の中でも白亜紀末の大量絶滅前の最後の種だった可能性があること。
  • 白亜紀末期には、北半球のティラノサウルス類に対して、南半球ではメガラプトル類が食物連鎖の頂点の座を確立していたらしいこと。
 
  • ​研究の背景
 国立科学博物館では、これまで恐竜などの大量絶滅に関する調査研究を実施し、常設展示、特別展などでその成果を公開してきました。
 今から約6600 万年前のある日、巨大な隕石が現在のメキシコ周辺の海に衝突したことに起因して地球全体が寒冷化し、鳥類以外の恐竜などが絶滅してしまったことが知られています。実は、この大量絶滅は全地球的な現象でありながら、北アメリカ以外の生態系の変化については謎が多いのが現状で、当館で開催した特別展「恐竜博2019」で紹介したのも、北アメリカでの最新の研究成果でした。そこへ、同展開催に際し、当館との共同研究のために来日していたアルゼンチン国立自然科学博物館のフェルナンド・ノヴァス博士から、南アメリカ・パタゴニア南部で、隕石衝突時の地層を特定するとともに前後の生態系の変化を解明できそうな新化石産地があるとの情報がもたらされました(図1)。
 そして程なく、アルゼンチンと日本で共同研究を新しく立ち上げることが合意され、2020 年 3 月、第1 回目の現地調査が実施されました。

図1 調査地域からみるペリトモレノ氷河図1 調査地域からみるペリトモレノ氷河


<発掘された化石の分類等>
分類:獣脚類・メガラプトル類
学名:Maip macrothorax (学名の日本語表記:マイプ・マクロソラックス)
産地:アルゼンチン・サンタクルス州エルカラファテ市から約30km 西(図2)
地層名:チョリロ層
時代:白亜紀後期マーストリヒト期(約7000 万年前)と推測されている。(現在地質調査継続中のため、確定はしていません。)
発見された骨:椎骨(ついこつ)、肋骨、腹肋骨、烏口骨(うこうこつ)など(図4)を、縦3 メートル、横5 メートル、深さ1 メートルほどの範囲から発見(図3)
 

図2 白亜紀最末期の古地理図にパタゴニア南部の調査地を示す。南アメリカと南極大陸、オーストラリアと陸続きの大きな大陸の一部だった。(約6800万年前の古地理図と現在のアルゼンチンの地図)図2 白亜紀最末期の古地理図にパタゴニア南部の調査地を示す。南アメリカと南極大陸、オーストラリアと陸続きの大きな大陸の一部だった。(約6800万年前の古地理図と現在のアルゼンチンの地図)

図3:化石の発掘地図3:化石の発掘地

  
  • 本種の発見で判明したこと
①  本種は新種であること。
 これまでに報告されているメガラプトル類の実物化石、レプリカ、3次元データ、文献と比較した結果、椎骨(背骨)や烏口骨の形、肋骨の骨密度などの特徴から、本標本はメガラプトル類の既存の種に該当しない新種であることがわかりました。。学名(マイプ・マクロソラックス)のマイプとは、パタゴニア地方の伝説に登場する冷たい風で凍え死にさせる悪霊の名前、マクロは大きな、ソラックスは胴体を意味します。胴椎(椎骨の一部)と左右の肋骨を組み合わせてみると、胴体の幅が約1.2 メートルと推定されることから(図5)、とてもがっしりしていたと想像されます。

図4 標本の写真と確認されている部位図4 標本の写真と確認されている部位

 

図5 マイプの胴体の復元図5 マイプの胴体の復元


② 本種はメガラプトル類の中でも最大級と考えられること。
 メガラプトル類の中でも骨格の完全度の高いアエロステオン(アルゼンチン)とアロサウルス(北アメリカの非メガラプトル類)の椎骨、烏口骨のサイズとを比較した結果、マイプの全長は9 メートル以上、体重5トンと推定されました。メガラプトル類でこれまで最大の種(メガラプトル、ムルスラプトルなど)は全長が7から8メートルほどと推定されていましたから、マイプはメガラプトル類の中でも最大級と考えられます。(図6)

図6 マイプの生体復元想像図(画 Agustin Ozain)図6 マイプの生体復元想像図(画 Agustin Ozain)


③マイプはメガラプトル類で最後の種だった可能性があり、白亜紀最末期にはメガラプトル類が南アメリカの食物連鎖の頂点の座を確立していたと推測されること。
 白亜紀前期(約1億4,500万年前から1億年前)の南半球では、メガラプトル類、カルカロドントサウルス類、スピノサウルス類が食物連鎖の頂点を争っていました。しかし、カルカロドントサウルス類やスピノサウルス類は白亜紀の中ごろ(約9000 万年前)までには絶滅してしまったようです。(図7A)
 マイプがパタゴニア南部の白亜紀最末期の地層(約7000万年前)から発見されたことから、メガラプトル類の最後の種である可能性があります。また、このことから、南アメリカではカルカロドントサウルス類やスピノサウルス類が絶滅した白亜紀中ごろから白亜紀最末期の間に、メガロラプトル類が食物連鎖の頂点の座を確立したらしいことが分かってきました(図7B、C)。
 メガラプトル類は白亜紀前期には北半球にも生息していました。日本のフクイラプトルがそのひとつです。白亜紀後期のメガロラプトル類は南半球でしか確認されておらず、北半球の食物連鎖の頂点にはティラノサウルス類がいました。今回のマイプの発見により、北半球のティラノサウルス類に対応する南半球の大型獣脚類はメガラプトル類だったらしいことが明らかになりました。

図7 メガラプトル類の白亜紀後期の多様化と大型化図7 メガラプトル類の白亜紀後期の多様化と大型化

 
  • 今後の研究計画
 マイプは、2023 年3 月から当館で開催予定の特別展「恐竜博2023(仮称)」で展示が予定されています。これまでマイプの発掘地からは100点ほどの骨や歯の化石が発見されましたが、頭部や前肢などはまだ発見されていません。周辺には同じ地層が広く露出しています。令和4 年度から3 年間は、日本学術振興会・科学研究費補助金(基盤C、代表者:真鍋 真)などを使用して調査研究が継続する予定です。次回の現地調査は2023 年1 月ごろに計画されています。
 

 


【国際共同研究グループ】
アルゼンチン国立自然科学博物館
Aranciaga Rolando 氏(アランシアガ・ロランド)博士課程大学院生:筆頭著者(図8)
Fernando Novas 博士(フェルナンド・ノヴァス)など
国立科学博物館副館長 真鍋 真(まなべ まこと)
地学研究部・研究主幹 對比地孝亘(ついひじ たかのぶ)
 

図8 マイプの胴椎の実物化石をもってアルゼンチン国立自然科学博物館のメガラプトル(全長7m)の前に立つアランシアガ・ロランド氏図8 マイプの胴椎の実物化石をもってアルゼンチン国立自然科学博物館のメガラプトル(全長7m)の前に立つアランシアガ・ロランド氏


【発表論文】
表題:A large Megaraptoridae (Theropoda: Coelurosauria) from Upper
   Cretaceous (Maastrichtian) of Patagonia, Argentina.
著者:Alexis M. Aranciaga Rolando, Matias J. Motta, Federico L. Agnolín, 真鍋 真,
   對比地孝亘 and Fernando E. Novas
掲載誌:Scientific Reports, https://doi.org/10.1038/s41598-022-09272-z Open Accessなので、どなたでも無料で論文をダウンロードすることが出来ます。

注)メガラプトル類はティラノサウルス類よりはアロサウルス類に近いと考えられてきましたが、近年では本論文のようにティラノサウルス類に近く、コエルロサウルス類に分類されるという系統仮説が提唱されています。


【国立科学博物館】
ホームページ:https://www.kahaku.go.jp/
筑波研究施設:https://www.kahaku.go.jp/institution/tsukuba/
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