適正価格でワクチンの開発推進をーーCEPIに対し公開書簡で訴え
今週後半、東京で「感染症流行対策イノベーション連合」(以下CEPI *)の理事会会合が開かれる。国境なき医師団(MSF)は会合に合わせ、昨年12月に改定されたCEPIの「公平なアクセス指針」は、公衆衛生のニーズを置き去りにし、ワクチンの適正価格を保証せず、医療への公平なアクセスを揺るがしていると指摘。同連合は設立意図に立ち返り、この方針転換を再考するよう、下記の公開書簡をもって同理事会に訴えている。
*CEPI(Coalition for Epidemic Preparedness Innovations):2017年1月、スイス・ダボス会議において発足した国際機関。エボラ出血熱等、世界的に重大な影響を与える可能性が高いものの、平時において需要が少ない感染症ワクチンの国際的な研究開発の推進を目的に、政府、および慈善・市民団体を含む民間のパートナーシップのもと設立された。
*CEPI(Coalition for Epidemic Preparedness Innovations):2017年1月、スイス・ダボス会議において発足した国際機関。エボラ出血熱等、世界的に重大な影響を与える可能性が高いものの、平時において需要が少ない感染症ワクチンの国際的な研究開発の推進を目的に、政府、および慈善・市民団体を含む民間のパートナーシップのもと設立された。
<公開書簡>
感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)理事会の皆様
国境なき医師団(MSF)は、公衆衛生に基づき感染症を予防するワクチンの開発推進を支援するCEPIの設立に広く寄与し、設立から2年間には理事会メンバーとして関与してまいりました。本状は、2018年12月の理事会で採択されたCEPIの「公平なアクセス指針(Equitable Access Policy)」改定への懸念と失望をお伝えするために作成しました。MSFは、公益的な研究開発に新たな領域を開こうというCEPIの創設を心強く感じておりました。科学技術の進歩が最も脆弱な人びとを含む全ての人に役立つよう努めることは私たち共通の責務だと考えるとともに、2014~2016年のエボラ出血熱流行のように効果的な対策が講じられない壊滅的な感染症流行をもう二度と目のあたりにしたくないという思いがあったからです。
医療・人道援助団体であるMSFは、医薬品やワクチンの入手機会(アクセス)の不公平がもたらす致命的な影響を日々、目にしています。この20年、私たちは、最も脆弱な人びとの健康・医療ニーズに医療革新で応じることへの共同責任を、各国政府、企業、そして市民社会に提唱してまいりました。その達成は従来の取り組みでは望めません。民間セクターなど研究パートナーとの連携において、公衆衛生重視の透明性の高いルールを採用・施行する革新的な取り組みが求められます。
MSFにとって、CEPIが改定した「公平なアクセス指針」が憂慮すべき後退と映るのは、CEPIの出資するワクチンが適正価格で提供されることを保証するものではなくなってしまったためです。これでは、CEPIは公益を目的とした投資家に対し、ワクチンの知的財産や価格について開発パートナーと合意した内容について、説明責任を果たせると思えません。改定版指針は、以前の詳細な指針を単なる原則論に置き換えたものであり、アクセス、透明性、開放性ならびに、公的責任のための新たな領域の開拓に対するかつてのCEPIの姿勢を大幅に覆すものです。そして、人びとが命を落としている現状に変革をもたらすためにCEPIに投資した全員の期待を裏切るものです。
設立当時のCEPIの暫定理事会は、出資対象のワクチンに公平なアクセスを保証するための明確な指針を守っていました。その指針の立案を支えたのが、世界保健機関(WHO)、ウェルカム・トラスト、そしてMSFの法律専門家です。そこには、透明性と情報・知識の開示に基づく価格設定や、知的財産についての実効力のある誓約など、重要なセーフガードが盛り込まれていました。しかし残念なことに、同理事会は、ワクチン開発者と交わした契約にアクセス条項が確立されるように旧指針を使うことができませんでした。むしろ、同指針に対する業界の不満を受け、早々にこの原則を曲げて、改定に踏み切ったと推測します。
MSFは昨夏、商業的デベロッパーと締結した法的取り決めをアクセスの観点から第三者的立場で検証する有識者による諮問委員会設立など、指針改定案への詳細かつ建設的な見解を繰り返し伝えてきました。また、ワクチン研究開発の過程の要所ごとにアクセスを考慮に入れる方法も提案しています。2018年10月の理事会会合では、CEPI発足時にみられたアクセスに対する献身的な姿勢が後退していることに対し、改めて懸念を表明しました。
元来のアクセス指針に組み込まれていた重要なセーフガードを維持するだけの決意は現在の貴理事会からは全く見受けられません。2018年12月にはMSFの懸念と提案をよそに、あいまいかつ実効力に乏しい骨抜きの新指針が旧指針に取って代わり、詳細な運用手順の作成は非公開のまま事務局に委ねられたと知り失望しています。
今週後半に東京で理事会会合が開かれるにあたり、CEPI本来の設立意図と相反する今回の方針転換を再考し、次の会合で「公平なアクセス指針」改定を改めて議論されるよう強く求めます。CEPIの特長は科学そのものではなく、世界の公衆衛生のために科学を活用すべく前例にないレベルで提供された公的・人道的資金にあります。CEPIはワクチン研究開発の新たな領域を開くという誓約に恥じることのない、別の方法で物事を進めるべきです。それには少なくとも貴理事会がさらなる一歩を踏み出し、適正な価格でのアクセスと透明性を目指す揺るぎない姿勢に立ち返らなければなりません。
MSFインターナショナル会長
ジョアンヌ・リュー
MSF必須医薬品キャンペーン・エグゼクティブディレクター
エルス・トレーレ
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