気候・自然・脱炭素社会への移行計画の3つのレポートを統合した「TCFD/TNFDレポート」を公開(国内不動業初)

~ネットゼロおよびネイチャーポジティブへの貢献の統合的な開示を推進~

東急不動産

 東急不動産ホールディングス株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:西川 弘典、以下「当社」)は、TCFD*1およびTNFD*2に基づきこれまで開示した、「TCFD提言に基づく開示」、「脱炭素社会への移行計画」、「TNFDレポート(第3版)」(以下、「TNFDレポート」)の3つの気候・自然関連財務情報開示を統合した「TCFD/TNFDレポート」(以下、「本レポート」)を策定いたしましたので、お知らせします。

 TNFDの開示枠組みは、環境関連の情報開示で先行し現在では標準化したTCFDの枠組みと合致しており、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)でも同様の枠組みが踏襲されるなど、気候関連課題と自然関連課題の統合的な開示が推奨されています。また、脱炭素社会への移行計画は、TCFDを中心にガイドラインが整備されていることから、その開示項目の一部が重複しています。加えて、気候と自然は密接に関係しており、投資家等の読み手のより深い理解の促進も求められています。

 このような外部動向を勘案するとともに、当社は、全社方針である「環境経営」により、「脱炭素社会」「循環型社会」「生物多様性」を環境重点課題と捉えて、事業の中で環境課題を統合的に推進している経営戦略を踏まえて、既存情報開示を統合いたしました。各レポート内容は全て本レポートに含まれております。なお、現在、各所で高い評価を受けつつあるTNFDレポートも当面の間、開示を継続いたします。

 

 当社は、気候変動は事業活動にとってリスクであると同時に新たな事業機会であると考え、2019年3月にTCFD提言に賛同しました。その後、2020年度にシナリオ分析の対象範囲を拡大、2022年3月にはTCFD提言に沿った開示、2023年7月にはTCFDなどのガイダンスに沿って作成した国内不動産業初の「脱炭素社会への移行計画」レポート発行するなど、積極的な開示取り組みを行ってまいりました。

 

 自然については、当社グループの事業が、都市部でも地方でも、自然に密接に関連していることを鑑み、2023年6月TNFDフォーラム参加、同年8月には「TNFDベータ版v.0.4」を参照して、TNFDレポート(第1版)を国内不動産業で初めて策定し、バリューチェーン全体での概観と、注力する事業エリアである広域渋谷圏におけるネイチャーポジティブへの貢献について分析・開示いたしました。

 その後、2024年1月には「TNFD最終提言」を参照した「TNFDレポート(第2版)」、同年7月にはリゾート事業を追加した「TNFDレポート(第3版)」を開示しています。

 

*1 気候関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Climate-related Financial Disclosures, またはTCFD)とは、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示および金融機関の対応をどのように行うかを検討するために設立された、国際的イニシアティブ(2017年6月最終報告書発表)。2023年10月解散を発表し、今後はISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が引き継ぐ。

 *2 自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures, またはTNFD)とは、2021年に発足した、自然関連の依存・インパクト、リスク・機会を適切に評価し、開示することを要請する国際的なタスクフォース(2023年9月最終提言発表)。TCFDと連動したフレームワークを提示し、気候と自然の統合的な開示を推奨している。

■統合の理由

 今般、3つのレポートを統合的に開示することとしたのは、主に以下の理由です。

 

1.気候関連課題と自然関連課題は密に連動している

 気候変動により自然・生態系サービスが劣化する一方、森林など自然の劣化がCO2排出・吸収源の減少につながるなど、気候と自然は密接に関連しているため、合わせて分析するほうが全体の状態を把握しやすく、また、CO2排出量などの非財務情報と企業の財務情報の関係性を示すために、脱炭素社会への移行計画を統合いたしました。

 

2.投資家などの読み手にとっての有用性

 重複する内容を整理し、同じ項目を一つに合わせて表記する等により、投資家などの読み手がマテリアルな情報を効果的に理解できます。実務上も、投資家とのエンゲージメントにおいて統合をリクエストされる機会が増えています。

 

3. 統合的・全体的な開示

  TNFD提言における一般要件である「他のサステナビリティ関連の開示の統合」において、「自然関連の開示は、可能な限り、他のビジネスやサステナビリティに関連する開示と統合し、報告書利用者に組織の財務的な状況と見通しを統合的かつ全体的に示すべきであるといえます。気候・自然関連の開示の統合は、特に重要である。」とされており、統合的・全体的に開示することが推奨されています。

 以上に加えて、TCFDとTNFDは、海外では既に多くの企業で統合的な開示が進んでいること、国内でも一部の企業で統合の流れが見られることから、今般、当社でも、脱炭素社会に向けた移行計画も加えた形で、統合開示に至りました。

 

 

■本レポートの策定に関して

1.全体概要

 本レポートでは、共通した項目(ガバナンス、戦略、リスク・インパクト管理、測定指標・ターゲット)ごとに、〔気候〕TCFDおよび脱炭素社会への移行計画、および〔自然〕TNFDの内容を盛り込みました。

2.統合にあたっての留意点

 統合にあたっては、3つの開示内容が一体化し分量も多くなることから、読み手にとって見やすくなるよう、エグゼクティブサマリーの記載のほか、以下を工夫いたしました。

 

(1)共通項目の一覧化

  ①共通事項をまとめて重複のないように整理(ガバナンス、リスク・インパクト管理)

  ②別々だった表をまとめて一つにし、一覧性により効率的な理解を促進

   ・重要なリスク・機会

    自然における事業ごとのリスク・機会は個別性が高いため別表にいたしました。

   ・測定指標(気候、自然、グローバル指標)

 

(2)気候または自然のみの内容は独立した記載を採用

  ①シナリオ分析による財務影響

  (先行作成の気候のみ。なお、自然については次年度以降に作成予定。)

  ②依存・インパクト(TNFD特有の事項の記載)

  ③脱炭素社会への移行計画(TCFDと重複していない内容の記載)

 

(3)ページごとのアイコンの記載
  開示内容が、複雑で専門的なフレームワークのどの部分に該当するか分かりやすくするため、
  ページごとに、気候・自然、4つの柱、LEAP等のアイコンを記載。

3.本レポートで新たに分析を行った項目(森林の多面的機能を追加分析)

 東急リゾートタウン蓼科の分析の中で、森林の多面的機能を取り上げており、TNFDレポート(第3版)では炭素吸収機能を分析しています。同時に、森林は水源涵養および水資源の供給、土砂災害防止など、環境だけでなく社会にポジティブな効果を発揮する多面的機能を有しています。

 本レポートでは、重要な森林機能である水源涵養機能および土壌流出抑制機能の分析を追加いたしました。

(1)水源涵養機能

 水源涵養(かんよう)とは、森林によって土壌が保持されることにより雨水等の降水が地中に染み込む現象です。水は地中をゆっくりと流れ、森林は水資源の貯留に寄与しています。

 東急リゾートタウン蓼科は、総敷地面積約660ヘクタールで、ホテル、ゴルフ場、スキー場、別荘、レストラン、地域共生施設等などを備える大型複合リゾートであり、施設独自の上水場を完備し、タウン内の複数の天然の水源から取水して、タウン全体の水道水をまかなっている自給型のリゾート施設です。持続可能な水源の確保と水道供給のためには、タウンの森林の水源涵養機能が重要な役割を担っていると考え、本レポートでは、東急リゾートタウン蓼科で管理する森林を対象に水源涵養量を評価し、リゾートタウンで使用する水量との関係を分析しました。

東急リゾートタウン蓼科の水源涵養量の分布
水の循環のイメージ図

 分析の結果、タウン内の森林全体の水源涵養量は年間約532万m3と算出されました。タウン全体での取水量は、年間約16万m3(2023年度実績)であり、水源涵養量全体の3.1%にとどまることが分かり、タウン内の水使用量の全てが、タウン内の森林の水源涵養量によりまかなうことができていることが確認され、持続可能性が高いと評価されました。 

(2)土壌流出抑制機能

 森林は降雨などによる土壌流出を抑制する機能を有しています。今回は、土壌流出量を定量的に予測し、東急リゾートタウン蓼科の森林による土壌流出抑制効果を評価しました。

 分析の結果、森林が維持される場合には、東急リゾートタウン蓼科における土壌流出量は年間約205tである一方、仮に、森林が荒廃し裸地となった場合には、年間1,250tまで土壌流出量が増加することが分かりました。

 森林などの環境を適切に維持しながら事業活動を行っていることにより、エリアからの土壌流出量を、荒地の場合と比較して▲83.6%抑制できていることが分かりました。森林の維持が、土壌流出による水源涵養機能の低下、それに伴う災害、水質の悪化、生態系の破壊などの、東急リゾートタウン蓼科のリスクの低減に繋がると考えられます。

TCFD/TNFDレポートはこちらをご覧ください。

(参考)環境関連開示に加え、社会の取組みに関する開示の強化

    ~都市のレジリエンスおよび地域共生への取り組みについて~

 当社グループは、環境課題の解決とともに、地域や社会の持続が、企業の発展にとって重要な課題であると考え、事業を通じてエリアの価値向上や経済効果の創出など、さまざまな活動を行っています。今般、当社グループにおける主な取り組みを、サステナビリティサイトに開示いたしましたので、あわせてご確認ください。

 ●都市のレジリエンスとエリア価値の向上

  広域渋谷圏における都市再開発

  再開発プロジェクト

  運営施設・管理受託施設における災害対策

 ●地域共生への取り組み

  広域渋谷圏における地域共生

  都市開発事業、再生可能エネルギー事業における地域共生

  TENOHAによる地域共生

  地域密着の店舗等における地域交流の取り組み

  地域におけるまちづくり協定等の締結

 

 詳細はこちらをご参照ください。

(参考)長期ビジョン「GROUP VISION 2030」でめざす、「環境経営」と「DX」の取り組み

 当社は2021年に長期ビジョン「GROUP VISION 2030」を発表しました。多様なグリーンの力で2030年にありたい姿を実現していく私たちの姿勢を表現する「WE ARE GREEN」をスローガンに、「環境経営」「DX」を全社方針として取り組んでいます。 

 当社グループの中核企業である東急不動産では、「環境先進企業」をめざして様々な取り組みを積極的に進めており、自社で大規模に展開する再生可能エネルギー事業を活かし、2022年12月には自社の事業所及び保有施設*3の使用電力の100%再生可能エネルギーへの切り替えを完了、2024年4月には、RE100達成*4がRE100事務局であるCDPより認定されました。RE100事務局によると、日本におけるRE100を達成した事業会社*5としては初の認定となります。

 今後も、自社における再エネ電力利用の継続と共に、コーポレートPPA等の再エネ電力供給により、お客様へ環境価値を提供し、事業を通じた脱炭素社会の実現を目指してまいります。

 *3一部の共同事業案件などを除く 

 *4RE100事務局が認めるグリーンガスが国内市場に存在しないため、コジェネレーション自家発電による電力を除きます。

 なお、東京ガス様 が供給するカーボンニュートラルガスを採用することで、脱炭素を実施しております。

 *5金融機関を除く

東急不動産ホールディングス「GROUP VISION 2030」について

https://www.tokyu-fudosan-hd.co.jp/group-vision-2030/

東急不動産ホールディングス「中期経営計画2025」について

https://www.tokyu-fudosan-hd.co.jp/ir/mgtpolicy/mid-term-plan/

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会社概要

東急不動産株式会社

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URL
https://www.tokyu-land.co.jp/
業種
不動産業
本社所在地
東京都渋谷区道玄坂1-21-1 渋谷ソラスタ
電話番号
03-6455-1121
代表者名
星野 浩明
上場
未上場
資本金
575億5169万円
設立
1953年12月