国際女性デー:女性の命を守るための「安全な中絶」を

​3月8日の国際女性デーを前に、国境なき医師団(MSF)は、保健医療の行き届かない国や紛争地で行われている危険な妊娠中絶の状況を報告する。MSFの活動地の多くでは、危険な方法で中絶を試みた女性たちが命を落としており、その実態はあまり知られていない。「安全でない中絶」による死は他の妊産婦死因と違い、唯一完全に防げるものであり、MSFは医療・人道援助団体として、女性の命を守るため安全な中絶処置の提供を続けていく。

妊産婦死因の12分の1は危険な中絶

世界保健機関(WHO)によると、「安全でない中絶」とは、望まない妊娠を打ち切るための処置で、必要な技能を持たない人の手によるものか、最低限の医療水準のない環境で行われるか、またはその両方と定義され、今も世界中の妊産婦死因の12分の1以上を占めている。大量出血、重度の感染症、血圧異常、閉塞分娩など他の直接的な妊産婦死因が、1990年以降減少しているのに対し、安全でない中絶がもたらす状況はほとんど改善されていない。

2018年に米グットマッカー研究所が発表した報告によると、世界の中絶例の約45%は安全でないと考えられ、毎年、2万2000人余りの女性や少女が安全でない中絶によって亡くなるという。安全でない中絶とその関連死の約97%がアフリカ、中南米、南・西アジアで発生しており、これはいずれもMSFが医療援助を提供している地域だ。

2017年、MSFは中絶合併症の女性2万3000人余りを治療した。活動地の一部の病院では、安全でない中絶が原因と疑われる産科合併症が全体の30%を占めている。こうした女性たちは、技術のない人物を頼ったり、自力で中絶を試みたりしたと思われる。鋭い棒状の物を膣から頸部、子宮まで挿入したり、漂白剤などの毒性物質を注射したり、薬草の調合物を膣に入れる、腹部への殴打や転倒で外傷を与えるといった危険な方法も目立つ。その多くは全く効果がないばかりか、身体に長期的な傷害を及ぼしかねない。

安全な医療行為を阻むもの

MSFは活動の現場で、多くの女性や少女が望まない妊娠をしていることを見てきた。避妊薬を手に入れられない人、避妊薬を使っても効かなかった人、妊娠を強制させられた人、性暴力によって妊娠した人もいる。また、危機的状況の中で望まない妊娠をし、命からがら避難した人もいる。

妊娠中絶は安全で効果的な医療行為であり、通常は錠剤か、局部麻酔による子宮内容除去術(MVA)で行われる。こうした処置は、技能を持った助産師や看護師であれば、病院や診療所で提供できる。しかし保健医療のひっ迫した場所や紛争地では難しい面もある。スタッフが手順に確信を持てなかったり、現場で中絶の是非を問われたり、偏見にあうこともある。中絶が法的に禁じられていない場合でも、意思決定者が正しい知識を持たないために実践が阻まれる例もあり、研修や制度の後押し、指導や手引きが必要となる。

女性の命を守る安全な中絶

「安全な中絶」とは、安全に妊娠を終わらせること、中絶合併症への対応、避妊薬の提供といった必須の保健医療サービスを包括したものであり、患者にとって適切な時に、しかるべき教育・訓練を受けた者が、信頼性と匿名性と技能と思いやりをもって行われなければならない。

 避妊は望まない妊娠と、その結果としての中絶や予定外の出産を減らすことに欠かせないが、それだけでは解決策としては十分ではない。避妊と安全な中絶処置は、望まない妊娠、安全でない中絶、妊産婦死亡を減らすための両輪だ。MSFは医療・人道援助団体として、活動地の住民、保健当局、他の保健医療NGOと協力し、医療の受けられない女性や人道危機に巻き込まれた女性のために、避妊薬、中絶後ケア、妊娠の安全な中断の普及を図っている。
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