市議会議員によるコリアン差別のSNS投稿の削除及び損害を認めた大阪地裁判決についての弁護団声明
2025年10月24日株式会社TryHard Japan(大阪市中央区)の取締役である李香代氏が
泉南市議会議員・添田詩織氏を被告として損害賠償訴訟判決言渡後に弁護団が声明文を発表
【令和6年ワ第4903号】
(以下、本件判決に関する弁護団の声明を掲載いたします。)
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『大阪地方裁判所第16民事部(山本拓裁判長)は、市議会議員である添田詩織氏から
人種差別的権利侵害を受けた李香代さんの請求を一部認める勝訴判決を言い渡した。
【本訴訟の特質と判決の意義】
本訴訟は、名誉毀損、プライバシー侵害、肖像権侵害を伴うSNSでの投稿を侵害行為とするもの
である。しかし、本件は通常の同種事件と異なり、以下の特質を有している。
・政治家である市議会議員から一私人に対してなされた人権侵害行為であること。
・その表現内容が被害者の民族的属性に着眼してなされ、市民を扇動する人種差別事件であること。
昨今、国民の「知る権利」という大義名分のもと、政治家によるSNSを通した権利侵害が散見
され、人権侵害がはびこっている状況が蔓延していることは、断じて容認できない。
また、日本において2016年にヘイトスピーチ解消法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)が制定されたにもかかわらず、依然として人種差別がなくならないのも現実である。本訴訟は、政治家のSNS利用による人権侵害行為や人種差別に警鐘を鳴らし、
歯止めをかけるための重大な意義を有している。
本判決が、添田詩織氏の投稿について、権利侵害を認定したことは、政治家のSNS利用のあり方に一石を投じる重要な意味を持つものである。
【判決への評価と今後の決意】
まず、今回の判決は、投稿が人種差別的意識をもってなされたこと等の背景事情について、認定が
なされたとは言い難い。この点については、大きな課題を残すものであり、添田詩織氏の差別的言動
に対する評価としては極めて不十分である。
ただ、それ以外の李香代さんの請求については、損害額を除きほぼ全面的に認める内容となっている。名誉毀損、プライバシー侵害、肖像権侵害については李香代さんの主張を踏まえて、添田詩織氏の言動の違法性を認めている。
さらに、特筆すべきは、判決は添田詩織氏の投稿の削除も命じている点である。投稿削除を認めた
裁判例はいまだ極めて少ない中で画期的なものと評価できる。その理由としては、添田詩織氏の投稿によって、李香代さん個人が特定され、さらなる攻撃を誘発する危険を認めており、我々の主張してきた犬笛型ヘイトの構造を認めたものである。李香代さんの救済実現に加えて、類似事案に対する抑止を期待することもできる。
損害額が550万円から減額されたことは残念であるが、添田詩織氏のSNS投稿による損害を認めた点では、評価できるところである。
私たち李香代さん弁護団は、引き続き、添田詩織氏から権利侵害を受けた李香代さんの完全な権利回復を実現するため、今後も全力で闘い抜く決意であることをここに表明する。』
【2025年10月24日 弁護団長 弁護士 田中俊】

【お問い合わせ先(弁護団)】
弁護士法人・響 大阪オフィス
弁護士 河野・藤田
TEL:06-6208-2341
FAX:06-6208-2342
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