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株式会社帝国データバンク
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被災地企業、「いまも営業」は6割 3社に1社は震災前の売上水準に「届かず」震災関連倒産、11年累計で2000件超 132カ月連続で発生

【震災から11年】「東日本大震災関連倒産」動向調査(2022年)

株式会社帝国データバンク

東日本大震災の発生からまもなく11年を迎える。政府は、震災直後の2011年度からの5年間を「集中復興期間」、さらにその後5年を「復興・創生期間」として集中的な復興事業を推進し、再建に向けた取り組みを進めてきた。

その一方、震災による影響は津波により壊滅的な被害を受けた東北3県の太平洋沿岸部から始まり、国内サプライチェーンの寸断、相次ぐ自粛、東京電力福島第一原子力発電所事故による風評被害、取引先の被災による販路の喪失などで直接的に被害を受けなかった企業にも波及して全国各地に拡大。その結果、11年を経た今もなお東日本大震災の影響が残り倒産に至るケースも発生しており、震災により苦境に陥った企業の“復興”には厳しい道のりが続いている。
<調査結果(要旨)>
  1. 東日本大震災が発生した2011年3月から2022年2月までの11年のうち、震災被害が倒産の直接または間接的な要因となった「東日本大震災関連倒産」は累計2085件に上った。負債総額は累計1兆7189億円となった
  2. 東日本大震災発生時点で「被害甚大地域」に本社を置いていた5004社について、2022年2月時点で「事業継続」している企業は3244社(構成比64.8%)を数えた
  3. 事業継続が確認できている被災地企業約3000社の売り上げをみると、震災発生後の2011年4月以降、売上高が震災前(2010年度)の水準に「回復した/届いた」企業は全体の65%にとどまり、被災地企業の3社に1社では震災以降の11年間で、1度も売上高が震災前の水準に届いていなかった

1. 「東日本大震災関連倒産」発生状況
発生11年で累計2085件発生 単年では過去最少も、「直接被害型」割合が3年ぶり50%台

東日本大震災関連倒産 推移東日本大震災関連倒産 推移

東日本大震災が発生した2011年3月から2022年2月までの11年のうち、震災被害が倒産の直接または間接的な要因となった「東日本大震災関連倒産」は累計2085件に上った。負債総額は累計1兆7189億円となった。 

最大震度7の大地震に加え、岩手・宮城・福島の3県沿岸部を中心に襲った巨大津波、福島第一原発における事故などで、直接・間接を問わず過去に類を見ない非常に広範囲な地域が甚大な被害を受けた。企業活動も例外でなく、工場など設備の損壊、従業員・取引先の被災などで事業継続がままならなくなった企業が続出し、震災発生直後から東北3県を中心に倒産が多く発生。震災1年目だけで513件に達し、1995年に発生した「阪神・淡路大震災関連倒産」の394件、「平成28年熊本地震関連倒産」の64件(件数はともに2月時点の累計)をも優に超え、5年目にかけては毎年100件超が発生した。

6年目以降は本格化した震災復興工事をはじめ、被災地域での生活再建、地域経済の再始動も背景に関連倒産は年々沈静化の傾向をたどり、11年目となる2022年(2021年3月-2022年2月)では24件と、震災発生以降で過去最少を記録した。

「直接被害型」割合 推移「直接被害型」割合 推移

ただ、震災関連倒産のうち地震や津波による建物の倒壊・喪失など「直接被害型」の倒産が占める割合が急激に高まっている。2022年の直接被害型の割合は、3年ぶりの50%となった。震災を乗り越え、グループ補助金など政府・自治体の経営支援も活用して工場や事業所などハード面は再建したものの、取引先の廃業、需要の低迷、特に2020年以降はコロナ禍による影響で売り上げが当初想定よりも回復しないなどの理由から、最終的に経営が破綻するケースが多くみられる。こうした要因も背景に、東日本大震災関連倒産は発生から11年、132カ月連続で発生した。


累計件数で最多は旅館・ホテルなど「サービス業」「製造業」「卸売業」も累計400件を超える

業種別件数 推移業種別件数 推移

11年累計で最も件数が多かった業種は、地震・津波による宿泊施設の流失や損壊、観光客減少による客室稼働率の低下といったダメージを大きく受けた旅館・ホテルなど「サービス業」の467件だった。全業種中初めて400件に達した5年目をピークに、6年目以降は発生ペースは鈍化したが、件数では依然として多い。次いで、水産加工業など「製造業」の426件、不漁や需要低迷等で業況の回復が鈍い生鮮魚介卸など「卸売業」の424件と続いた。当初は、流通網の寸断や取扱商材の風評被害、取引先の廃業などの理由で需要が急減し、中間流通を担う卸売業者での倒産が多く目立った。しかし、ここに来て東北地方を中心に製造業の件数が増加しており、11年目では累計件数で2件差ながらも卸売業を上回った。

製造業では、被災地を中心に補助金などを活用して工場施設を再建させるなど、地域経済復興のシンボルとして再稼働したケースは多い。しかし、工場など大規模な施設の再建やベルトコンベアなど製造機器類の新造・調達には多額の資金が必要となるなか、復興後の需要回復を見越してその大部分を借入金で賄った企業を中心に、当初の計画通りに売り上げが確保できなくなる一方で、借入金の返済負担が次第に重くのしかかり、最終的に自力での経営再建や事業継続を諦めるケースが、震災から年数を経て特に目立ち始めている。


 2. 「東日本大震災」被災地5004社の追跡調査
被災地5004社、「いまも営業」全体の6割にとどまる

事業継続率 推移事業継続率 推移

東日本大震災発生時点で「被害甚大地域」に本社を置いていた5004社について、2022年2月時点で「事業継続」している企業は3244社(構成比64.8%)を数えた。震災から2年後(2013年2月)の72.8%をピークに、以降は低下傾向で推移。2022年2月も前年を下回る水準だった。

他方、「休廃業・倒産」などで事業実態が消滅した企業は1760社(構成比35.2%)を数えた。震災から11年経たいま、事業の先行きを見越して事業活動を停止・消滅した企業が全体の3割超を占め、割合は上昇傾向にある。

岩手・宮城・福島3県の「被害甚大地域」にあった企業の活動状況を確認したところ、2022年時点で「事業継続」している企業は、それぞれ「岩手:70.3%」「宮城:72.0%」「福島:43.9%」となった。宮城・岩手両県では、依然として7割近い企業が事業を再開/継続しているものの、ピーク時に比べると休廃業などで市場から退出した企業が増えており、緩やかながら事業継続率は低下傾向が続いている。

被災3県・被害甚大地域企業 事業継続率 推移被災3県・被害甚大地域企業 事業継続率 推移

一方、福島県では岩手・宮城両県に比べて事業を再開した企業が増加傾向にある。津波被害に加え、原発事故による避難などから一時的に営業活動を中断/断念していた企業の割合が最も高く、2011年には事業継続率が2割にとどまるなど突出して低い水準だった。しかし、その後は避難を余儀なくされていた福島第一原発周辺地域におけるインフラ(工業団地、住宅、商業施設、交通等)の整備が進み、徐々に住民や企業が帰還していることなどが要因。ただ、福島県浪江町や同大熊町、同飯館村などの地域では、依然として事業継続率が2~3割台にとどまるなど、県内でも差がみられる。

被災3県・被害甚大地域 事業継続率分布被災3県・被害甚大地域 事業継続率分布

事業継続企業の3社に1社、売上高が震災前に「届かず」

また、被災後の急激な売り上げ減少以降、売上高が震災前の水準に回復しない企業が多い点が上げられる。現在、事業継続が確認できている被災地企業約3000社の売り上げをみると、震災発生後の2011年4月以降、売上高が震災前(2010年度)の水準に「回復した/届いた」企業は全体の65%にとどまり、被災地企業の3社に1社では震災以降の11年間で、1度も売上高が震災前の水準に届いていなかった。

売り上げが「未回復」となった被災地企業のうち、同割合が最も高いのは「岩手県」で36.5%、次いで「宮城県」(34.5%)「福島県」(31.8%)と続いている。岩手・宮城両県では、特に基幹産業の水産加工業が工場の被災などでダメージを受け、その後グループ補助金などを活用して再建を図ったものの、地域経済の衰退や取引企業の消失などで販路が戻らず、売り上げが回復しないなどのケースが目立つ。

売上高が震災前に「回復」するまでに 要した期間売上高が震災前に「回復」するまでに 要した期間

3.求められる「自立経営」、コロナ禍でハードルなお高く

東日本大震災に起因する関連倒産は年々沈静化に向かっており、11年目となる2021年3月~2022年2月までの1年間では24件と、前年の約6割、1年目の513件と比べても1割未満の水準に減少するなど、発生件数は減少傾向をみせている。しかし、震災から11年を経てなお未だ1件も判明しなかった月はなく、関連倒産は月平均約2件のペースで発生。被災地企業に目を向けると、震災以降も事業を継続している企業は約6割にとどまり、このうち3割の企業では震災から11年を経た今でも売上高が戻らないなど、震災後長期間経過しても経営の立て直しが容易ではない事実が浮かび上がる。

政府は、2021年3月に終了した「復興・創生期間」を引き継ぎ、復興の取り組みをさらに後押しする「第2期復興・創生期間」を2026年3月まで定めるものの、東北の復興事業は総仕上げの段階に入っている。当地での被災企業でも、今後は支援に頼らない本来の自主経営を求められることになるが、地域経済の衰退や震災で失った販路の消失など、企業努力だけでは挽回できないマイナス要素も大きい。また、新型コロナウイルスによる景況感の落ち込みなど、震災復興当時には到底想像しえなかった経営環境の激変も加わり、震災で被ったダメージから完全に回復できない事情も横たわる。今後も、業界によっては震災前の水準まで回復が及ばないことも想定されるなか、12年目以降も被災地を中心に震災に起因した「息切れ型」の倒産増加も否定できず、動向にはなお注視が求められよう。

 

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業種
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本社所在地
東京都港区南青山2-5-20
電話番号
03-5775-3000
代表者名
後藤 信夫
上場
未上場
資本金
9000万円
設立
1987年07月