【新国立劇場】『ロビー・ヒーロー』公演チラシができるまで 後編
04 完成したチラシが劇場に到着
観客が公演を知るきっかけは、チラシという形だけにとどまらない。例えば、劇場に貼られたポスターをきっかけにその存在を知る人もいるのではないだろうか。そんな思いを背に、新国立劇場はチラシと並行して同デザインのポスターやバナーの制作にも精力的に取り組んでいる。
写真提供/新国立劇場
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05 チラシ束となり、より多くの人の手へ
もう一つ、劇場で受け取るものがある。それは、私たちが公演チラシを手にする機会として最も多い「チラシ束」だ。ロビーや客席に置かれているチラシ束を手に取りめくりながら、上演までの待ち時間を過ごす人々。「次は何観よう」「来月はこんな舞台があるのか」。そんな風に来る公演や新たに知る団体へ期待を馳せること。そんな風景は、劇場と公演、そして観客と作品を繋ぐ一つの象徴的なシーンではないだろうか。
①チラシの管理
写真提供/ネビュラエンタープライズ
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②折り込み作業へ
写真提供/ネビュラエンタープライズ
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③劇場へ納品
写真提供/ネビュラエンタープライズ
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一枚のチラシに携わる人々、その想い
チラシが出来上がり、チラシ束が人々の手に渡り、あとは『ロビー・ヒーロー』の開幕を心待ちにするのみとなった。一枚のチラシが、一つの作品が世の中に生まれ、誰かへと届くまで。そこには、「よりよい形で届ける」ための多くの人の想像やアイデアや工夫、そして想いがある。まだ見ぬ作品への期待を膨らませたり、観終わった後の余韻に浸ったり。チラシを眺めるそんな時間もまた、作品と過ごす豊かな時間であるのかもしれない。
それぞれの持ち場から見つめる一枚の可能性、そして演劇のチラシを通して描く少し先の未来について。最後に、そんな現場の人々の声を本レポートの締めくくりとして届けたいと思う。
幼い頃からテーマパークのチラシや地図、ゲームソフトの説明書が好きで、寝床に持ち込んでフニャフニャになるまで弄り回したものでした。大人になってからも予想を書き込んでヨレヨレになった競馬新聞に奇妙な愛着を感じて中々捨てられなかったり。兎に角、印刷を施された紙がだんだん蕩けて行く様子に何とも言えない魅力を感じてしまうのです。印刷物って本当にいいものですよね。やや話がそれましたが、演劇のチラシが人の目に触れる時間は、とても長いケースで半年。書籍などの〝商品〟と比べるとチラシが活躍する時間は圧倒的に短いのです。短いからこそ、心に引っかかる仕掛けをしていきたいし、出会いの門戸を広げられる様な役割ができたらと意識しています。これからも、人となりが感じられるチラシ作りを心がけたいです。
観客と公演団体や作品との新しい出会いを作りたい。私たちはそんな願いのもとチラシ束を作り、お配りしています。機械を使って作成するチラシ束には、最大で22枚のチラシが折り込まれています。それはすなわち22個の出会いがあるということ。その中にはこれまで観たことのなかった作品、あるいは知らなかった団体との思いがけない出会いもあります。意外性や多様性のある出会いによって、心が動かされること。そんな体験は、舞台で演劇に出会うときの喜びにそのまま精通していると感じています。これからも誰かの心に届く一枚を、チラシの数、束の数だけある出会いを作り、お届けしていきたいと思います。
印刷会社で働く僕たちはいつも、『どうすればデザイナーさんの頭の中を一枚の上で表現できるか』ということを考え続けています。共有するイメージに齟齬が生まれないよう、確認や共有を重ねることが欠かせません。やりがいのある楽しい仕事であると同時に、妥協の許されない仕事でもあること。そういう気持ちを忘れずに、「こういうものが作りたかった!」というベストな結果を今後も目指していきたいと思っています。
1枚のチラシを完成させるにあたり、多くのプロフェッショナルの方々が携わっくださっていること。そして、みなさんの手で触れ、実際の目で見極めるというその繊細な作業は想像以上のものでした。チラシは公演同様にたくさんの人の情熱や能力に支えられたものであり、同時に上演する作品の第一歩。「こんな素敵なチラシができました」という言葉には、「こんな素敵な公演にします」という意味が込められているように感じます。これからも新国立劇場の公演チラシが、舞台を創る方にとっても観る方にとってもモチベーションの上がるものであればと願っています。
取材・文=丘田ミイ子
写真(提供写真を除く)=塚田史香
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