東京電力福島第一原発事故で、「東日本壊滅」を想定した複数の極秘シナリオが書かれていた! 日本の危機管理体制に警鐘を鳴らす『原発事故 最悪のシナリオ』が発売
第64回JCJ賞※受賞のNHK ETV特集を書籍化。関係者100名以上への独自取材をもとに、日本の危機管理の実像に迫るノンフィクション
福島第一原発事故から11年となる今年、福島県では一部帰還困難区域への住民帰還が本格化します。大熊町や双葉町では、昨年から帰還に向けた準備宿泊もはじまっています。
2021年春に放送され、大きな注目を浴びたドキュメンタリー番組「原発事故“最悪のシナリオ”~そのとき誰が命を懸けるのか~」。番組の担当ディレクターが筆を執り、菅直人元首相、北澤俊美元防衛相ら当時の危機管理担当者へのロングインタビューなど取材成果をまとめたノンフィクション、『原発事故 最悪のシナリオ』が、2022年2月18日にNHK出版より発売されます。
2021年春に放送され、大きな注目を浴びたドキュメンタリー番組「原発事故“最悪のシナリオ”~そのとき誰が命を懸けるのか~」。番組の担当ディレクターが筆を執り、菅直人元首相、北澤俊美元防衛相ら当時の危機管理担当者へのロングインタビューなど取材成果をまとめたノンフィクション、『原発事故 最悪のシナリオ』が、2022年2月18日にNHK出版より発売されます。
事故発生直後、国も東京電力も「危機の全体像」を国民に説明していませんでした。起きている危機が、最悪の場合、どこまで拡大する怖れがあり、それを防ぐために何を行うべきなのか。予期せぬ事態が続き、後手に回る危機管理当事者たちの対応。いわゆる「最悪のシナリオ」が想定されているようには思えない――。著者は、2011年当時、「最悪のシナリオ」の不在こそが、この国の危機管理の根底に潜む課題ではないかと仮説を立てます。
しかし、事故発生からおよそ10か月後の2012年1月6日、福島第一原発事故対応をめぐる「最悪のシナリオ」の存在が明らかになります。
細野豪志元原発事故担当相が、閣議後の記者会見で、「最悪のシナリオ」――1号機の原子炉は爆発して制御不能、そして4号機の使用済み燃料プールは水がなくなり、燃料が損傷するという事態を想定――を政府内で作成していたと公表したのです。「最悪のシナリオ」は存在しなかったわけではなく、国民に開示されなかっただけでした。
翌1月7日には、事故発生直後に策定されるべき「最悪のシナリオ」が、発生から2週間経った2011年3月25日に菅元首相に届けられたという事実も報道されます。
危機管理の要諦ともいわれる、「最悪のシナリオ」。進行する危機の全体状況を把握し、現状がどの地点にあり、どんな対策を打てばよいのか。シナリオは、それらを判断する指針となります。とすれば、「最悪のシナリオ」は、事故が起きる以前、あるいは事故の最初期にこそ必要なものではないか――。
「事故発生から2週間のタイムラグ」という謎を、危機管理の観点から検証したい。著者たち取材班がそう考えた2020年春は、日本社会がまたしても、命や暮らしを脅かす未知の存在に揺れはじめていた時期でした。
新型コロナウイルス感染症。危機管理という言葉も、メディアに散見されるようになっていました。水際対策をどうするか、医療体制の拡充をどうするか、困窮者支援をどうするか……。緊急対策の必要性が叫ばれる一方で、Go Toキャンペーンやオリンピックの開催など、ウイルス拡散にもつながりかねない施策も打ち出され、政府の対応は議論を呼んでいました。はたして、10年前の経験は十分に総括され、危機管理の教訓として、日本社会に生かされているのか。
取材班は、独自取材により、「最悪のシナリオ」をめぐる謎の解明に乗り出します。
シナリオの成立過程に、当時の危機管理のあり方をめぐる未解明の問題が潜んでいるのではないか、その検証から、現在にも通じる日本社会固有の課題が浮かび上がるのではないか、と。
「この10年の間に公表された資料の読み込みや、政府、東京電力、自衛隊、アメリカ政府、アメリカ軍の幹部や関係者への直接取材を通じ、その謎の輪郭は徐々に明らかになっていった。3月25日に政府に提出された『最悪のシナリオ』以外にも、東京電力や自衛隊、アメリカ政府などが『最悪の事態』の想定について、それぞれ独自に検討を行っており、それらは有機的に結びつきながら事故直後の混沌を生み出していた。
政府と東電の間の『撤退』をめぐる確執、安全保障問題にも波及しかねない日米両政府間での不信感の高まり、そして、民主主義国家における『命の犠牲』をどう考えるのかという究極の問い……。『最悪のシナリオ』の成立過程の追跡は、戦後日本の国としてのあり方を問うという、巨大な地下水脈へ通じる道となっていたのだった。」(プロローグより)
本書が、福島第一原発事故の事故対応の検証を通じて明らかにするのは、日本の危機管理体制の実相。今後の日米関係や安全保障、組織やリーダーシップのあり方についても示唆に富んだ、思想的立場を越えて読まれるべき一冊です。
※JCJ賞(主催:日本ジャーナリスト会議)は、新聞・放送・出版などにおける優れたジャーナリズムの仕事を顕彰するもので、7月から翌年6月までの間の報道、番組、著作などから毎年選考。
※本書は、NHK ETV特集「原発事故“最悪のシナリオ”~そのとき誰が命を懸けるのか~」 (2021年3月6日放送)の取材成果をもとに書き下ろしたノンフィクションです
【著者】
石原 大史 (いしはら・ひろし)
2003年NHK入局。長崎放送局、大型企画開発センターなどを経て現在、制作局ETV特集班ディレクター。担当した番組にETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」(第66回文化庁芸術祭大賞)、「薬禍の歳月 サリドマイド事件50年」(第70回文化庁芸術祭大賞、第41回放送文化基金賞・最優秀賞)、「お父さんに会いたい “じゃぱゆきさん” の子どもたち」、NHKスペシャル「空白の初期被爆 消えたヨウ素131を追う」(第56回JCJ賞)など。共著に『ホットスポット ネットワークでつくる放射能汚染地図』(講談社)。
■『原発事故 最悪のシナリオ』構成
プロローグ 「最悪のシナリオ」の謎
第1章 沈黙
Too Late――遅すぎたシナリオ
3月12日、1号機水素爆発の衝撃
パニックへの恐怖
動き出したアメリカ
第2章 責任と判断
怖れていた連鎖――3月14日、3号機水素爆発
東電本店の危機感
巻き込まれた自衛隊
アメリカの焦り
「撤退か否か」――判断を迫られた、官邸の政治家たち
15日早朝、やってきた〝そのとき〞
第3章 反転攻勢
関東圏に到達した放射能
それは〝誤認〞だった
「使用済み燃料プール」という名のモンスター
ヘリ放水作戦開始
英雄的行為
分水嶺
第4章 終結
吉田所長の〝遺言〞
東電-自衛隊、非公式会談
アメリカの大規模退避計画
自衛隊の覚悟
日本政府版「最悪のシナリオ」とは何だったのか
最後の謎
エピローグ 「最悪のシナリオ」が残したもの
あとがき
■商品情報
出版社:NHK出版
発売日:2022年2月18日
定価:1,870円(本体1,700円)
判型:四六判
ページ数:312ページ
ISBN:978-4-14-081897-8
URL:https://www.amazon.co.jp/dp/4140818972
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