酸化ストレスによるバリア機能の低下と炎症の抑制に「アルギナーゼ1」の関与を発見
株式会社ファンケルは、角層のタンパク質を測定して皮膚の状態を把握する「角層バイオマーカー解析」(1)を 開発し、その解析結果で肌のカウンセリングなどを行っています。今回そのマーカーの一つである「アルギナーゼ1(以後「ARG1」と表記)」(2)が、紫外線からの酸化ストレス(3)による皮膚のバリア機能の低下を防ぎ、炎症を抑制することを発見しましたのでお知らせいたします。
本研究成果は本年7月19日~20日に富山県で開催された「第41回日本光医学・光生物学会」で発表しました.
本研究成果は本年7月19日~20日に富山県で開催された「第41回日本光医学・光生物学会」で発表しました.
<研究の目的>
「角層バイオマーカー解析」では現在、七つのタンパク質をマーカーとして使用しています。その中の「ARG1」は、皮膚の紫外線による酸化ストレスの防御に関係しているタンパク質です。そのため、皮膚の最外層である角層で「ARG1」の量が少なくなると、紫外線の影響を受けやすくなります。そのことを利用して「角層バイオマーカー解析」では、「ARG1」をシワやシミのできやすさを測定するマーカーとしています。本研究は、この「ARG1」が皮膚の内部でどのようにして紫外線の影響を抑えるか、具体的なことが分からなかったことから行いました。
<研究の結果>
【「ARG1」の皮膚内部での働きを確認】
倫理的に配慮して入手したヒト腹部の摘出皮膚に紫外線を照射し、その後皮膚の内部を染色して調べました。
その結果、「ARG1」は角層だけでなくその直下にある顆粒層(4)にも多く存在し、紫外線量が高いほど大きく減少していることが分かりました(図1)。すなわち「ARG1」は、角層を形成する重要な部位である顆粒層で働き、皮膚を紫外線から守っている可能性が考えられました。
【「ARG1」が紫外線の酸化ストレスによるバリア機能低下と炎症拡大を防ぐことを発見】
次に、顆粒層に存在する「タイトジャンクション(以後TJと表記)」(5)に着目し、「TJ」と「ARG1」の関係を研究しました。「TJ」は皮膚のバリア機能の中心として働くことが分かっています。また、紫外線の酸化ストレスによって壊れることも知られています。そこで、「ARG1」を薬剤のBECで機能を低下させ、表皮角化細胞(6)に紫外線を照射して「TJ」の破壊状況を調べました。その結果、「ARG1」の機能が正常な時よりも「TJ」の破壊が促進されることが分かりました(図2)。また「ARG1」の機能が低下すると、紫外線による皮膚の炎症を拡大させる「IL6」(7)の量も増加することが分かりました(図3)。
以上のことから「ARG1」は、「TJ」が壊されるのを抑えることでバリア機能の低下を防ぎ、さらに炎症の拡大も防ぐことを発見しました。また、この発見で「ARG1」に皮膚を保護する機能が期待できることも分かりました。
(2)ARG1(アルギナーゼ1):シミの原因となる活性酸素の発生を抑え、メラニン産生が起こらないようにバランスを調整し、シミを防ぐ力があるタンパク質。身体の炎症時に増加し、正常化させる機能を持つ。
(3)酸化ストレス:活性酸素やフリーラジカルが過剰に生成されることにより生体成分に損傷が起こり、ストレスをきたす状態。
(4)顆粒層:表皮層には基底層、有棘層、顆粒層、角層の4層からなり、角層と合わせて皮膚のバリア機能を担う。
(5)TJ(タイトジャンクション):密着結合。隣り合う細胞をつなぎ、さまざまな分子が細胞間を通過するのを防ぐ、細胞間結合の一つである。皮膚においては顆粒層に存在し、バリア機能によって、体内の水分の喪失や外からの刺激を防ぎ、肌を乾燥や炎症から保護する役割を担う。
(6)表皮角化細胞:表皮を構成する細胞。基底層から押し上げられながら分化し、角層を形成する。
(7)IL6(インターロイキン6):炎症に伴い、細胞から分泌される因子。
「角層バイオマーカー解析」では現在、七つのタンパク質をマーカーとして使用しています。その中の「ARG1」は、皮膚の紫外線による酸化ストレスの防御に関係しているタンパク質です。そのため、皮膚の最外層である角層で「ARG1」の量が少なくなると、紫外線の影響を受けやすくなります。そのことを利用して「角層バイオマーカー解析」では、「ARG1」をシワやシミのできやすさを測定するマーカーとしています。本研究は、この「ARG1」が皮膚の内部でどのようにして紫外線の影響を抑えるか、具体的なことが分からなかったことから行いました。
<研究の結果>
【「ARG1」の皮膚内部での働きを確認】
倫理的に配慮して入手したヒト腹部の摘出皮膚に紫外線を照射し、その後皮膚の内部を染色して調べました。
その結果、「ARG1」は角層だけでなくその直下にある顆粒層(4)にも多く存在し、紫外線量が高いほど大きく減少していることが分かりました(図1)。すなわち「ARG1」は、角層を形成する重要な部位である顆粒層で働き、皮膚を紫外線から守っている可能性が考えられました。
【「ARG1」が紫外線の酸化ストレスによるバリア機能低下と炎症拡大を防ぐことを発見】
次に、顆粒層に存在する「タイトジャンクション(以後TJと表記)」(5)に着目し、「TJ」と「ARG1」の関係を研究しました。「TJ」は皮膚のバリア機能の中心として働くことが分かっています。また、紫外線の酸化ストレスによって壊れることも知られています。そこで、「ARG1」を薬剤のBECで機能を低下させ、表皮角化細胞(6)に紫外線を照射して「TJ」の破壊状況を調べました。その結果、「ARG1」の機能が正常な時よりも「TJ」の破壊が促進されることが分かりました(図2)。また「ARG1」の機能が低下すると、紫外線による皮膚の炎症を拡大させる「IL6」(7)の量も増加することが分かりました(図3)。
以上のことから「ARG1」は、「TJ」が壊されるのを抑えることでバリア機能の低下を防ぎ、さらに炎症の拡大も防ぐことを発見しました。また、この発見で「ARG1」に皮膚を保護する機能が期待できることも分かりました。
<本研究成果による今後の製品開発>
本研究の結果、皮膚中の「ARG1」が紫外線からの酸化ストレスによるバリア機能の低下や炎症を抑制することが分かりました。紫外線による酸化ストレスは、シワやシミだけでなく、皮膚のバリアを破壊して加齢による乾燥に影響することが知られています。つまり、皮膚中の「ARG1」の存在量を増やすことが、酸化ストレスによって皮膚表面で起こるエイジング対策に重要であると考えられます。
当社では、すでに「角層バイオマーカー解析」により肌のダメージリスクをカウンセリングする「パーソナルソリューションプログラム」を展開しています。今回の結果を導入することで、エイジングのリスクをさらに詳しく測定することが可能になります。今後も研究を進め、効果の高いアンチエイジングのサービスや化粧品の開発を進めてまいります。
【用語解説】
(2)ARG1(アルギナーゼ1):シミの原因となる活性酸素の発生を抑え、メラニン産生が起こらないようにバランスを調整し、シミを防ぐ力があるタンパク質。身体の炎症時に増加し、正常化させる機能を持つ。
(3)酸化ストレス:活性酸素やフリーラジカルが過剰に生成されることにより生体成分に損傷が起こり、ストレスをきたす状態。
(4)顆粒層:表皮層には基底層、有棘層、顆粒層、角層の4層からなり、角層と合わせて皮膚のバリア機能を担う。
(5)TJ(タイトジャンクション):密着結合。隣り合う細胞をつなぎ、さまざまな分子が細胞間を通過するのを防ぐ、細胞間結合の一つである。皮膚においては顆粒層に存在し、バリア機能によって、体内の水分の喪失や外からの刺激を防ぎ、肌を乾燥や炎症から保護する役割を担う。
(6)表皮角化細胞:表皮を構成する細胞。基底層から押し上げられながら分化し、角層を形成する。
(7)IL6(インターロイキン6):炎症に伴い、細胞から分泌される因子。
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