夏休み中の子どものゲーム依存や勉強法に不安をもつ保護者244名がセミナーに参加。ただゲームをやらせないのは逆効果!ポイントは“親子関係の構築”と“自己コントロール”
セミナーには、ICT教材「すらら」を利用中のお子さまがいる保護者244名が参加。すららネット「子どもの発達支援室」の臨床心理士の道地真喜が、夏休み中に不安が高まるゲーム依存や家庭学習に関するお困りごとへの対策法を紹介しました。
ゲーム依存は疾病のひとつ。WHOが採択した「ゲーム障害」とは
ゲーム依存について、世界保健機構(WHO)が2019年に、ゲームのやりすぎで日常生活が困難になる状態を「ゲーム障害」として正式に国際疾病に認定しています。下記項目の状態が12ヶ月以上続いていると「ゲーム障害」と認定されます。
(ネット)・ゲームに関する行動(頻度、開始・終了時間、内容など)がコントロールできない
(ネット)・ゲーム優先の生活となり、それ以外の楽しみや日常行う責任のあることに使う時間が減る
(ネット)・ゲームにより個人、家族、社会、教育、職業やそのほかの重要な機能分野において著しい問題を引き起こしているにもかかわらずゲームがやめられない
など
出典:世界保健機関(WHO) 「国際疾病統計と関連する健康問題の統計的分類(ICD-11)」
ゲーム依存の初期症状として、嫌なことを忘れるためにゲームをする、ゲームをするために睡眠や食事、またはお風呂に入る時間を削る、ゲームを取られるとイライラしたり暴言を吐くなどがあげられます。「ゲーム依存予防は初期段階で対策が取れるかが重要ですので、子どもの状態をよく観察されることをおすすめします」と道地はアドバイスしました。
子どもの特性や子育てスタイルにより、ゲーム依存になりやすくなってしまう場合も
■ネット・ゲーム依存になりやすい子どもの特性
子どもが持つ性格や環境の変化等は、ネット依存やゲーム障害に大きくかかわってくる可能性が高くなります。
・性格と精神面
実年齢より幼い、気分の浮き沈みが激しい、アイデンティティの拡散(自分が分からない)、自己評価が低い、優柔不断、自制心がない、欲求不満、耐久性が低い、好奇心が旺盛、社交性が欠如している、極度の人見知り
・環境面
家族間での争いが多い、親子間で話す機会が少ない、愛情表現されてない、学校での成績が低迷している、モチベーションが低い
・お子さんがADHDやASDなどの場合
ADHDは神経伝達物質(ドーパミン)の出方が不安定で、授業や宿題をするときは集中できないのに、ゲームや遊びのときはドーパミンが出すぎて集中しすぎてしまい、途中でやめることが難しくなります。
■保護者の子育てスタイル
保護者の子どもに対する対応が子どものゲーム依存にも影響します。保護者の子育てスタイルは「民主的スタイル」「独裁的スタイル」「消極的スタイル」「無関心スタイル」の4つに分類されます。
その中で理想は子どもの気持ちを考慮して話し合いの場を持つ「民主的スタイル」です。良いと悪いの境界線が明確かつ一貫して子どもに伝えられていることが特徴の一つです。一方で特に避けたいのが、しつけを避け欲しいものは何でも与える「消極的スタイル」です。ルールがないなど、子どもの意向中心に物事を進めてしまう傾向にあるため、ゲーム依存が深刻化してしまう可能性があります。自分はどの子育てスタイルに当てはまるか、一度振り返ってみることも必要です。
保護者の多くのお悩みは「子どもがルール守らない!」
子どもの行動を分析し、自己コントロールを学ばせる
今回のセミナーでは保護者から、「ゲームを1時間したら宿題をやるルールを設けたが守らない。宿題をやろうと言うと、『明日から学校に行かない』など反抗してくる」「ゲームを取り上げようとすると暴れる」というお悩みをいただきました。ゲーム依存の兆しではないかという保護者の不安が感じられます。これに対して道地は、親子関係が良好であることを前提としたルールの徹底と守らなかった時の決まり事を設定しておくことが大切だと言います。
ルールを設定しても子どもが守れない場合は、ゲームをやらせないことではなく、自己コントロールを学ばせることが必要です。ゲームはもともと内発的動機付けができやすいように作られているものなので、制限をしなければやりたくなるのは当然のことです。ゲームという誘惑に晒されて、望ましくない行動(ゲームをやり続けるなど)行動が起こってしまいそうになる場面で、子ども自身で望ましくない行動を抑制できることが大切です。
■「行動のABC」で自己コントロールを身に付ける
自己コントロールを学ばせるには、行動分析学をもとにした「行動のABC」という考え方を使います。
「行動のABC」とは、A先行条件(~の時に)、B行動(~したら)、C結果(~だった)の枠組みで考えるもので、Bの行動によって起きたCの結果によって、Bの行動が強まったり、なくなったりするものです。
ゲームをするときのルールに当てはめると、Aルールを伝えた、Bルールを守ったので、Cルールを守れて偉かったと褒めて、次も安心してゲームができると伝えると、Bのルールを守ることが強化されるというのが理想的です。このように保護者は、子どもの行動を見越してアクションを起こす“プロアクティブ(先を見越す)”である必要があるのです。
■ルールを守れなかった時は“一時的にペナルティを与える”
逆にBのルールを守らなかった時は、Cの時にゲームを取り上げるなど、一時的にペナルティを与えましょう。ペナルティを与えることにより、子どもにBでルールを守れなかったら「ゲームができなくなる」と意識させることができます。ここで大切なことは、「その日のゲームの特権を奪う」など、ペナルティを即日かつ一時的に与えることです。
ただし、この方法で効果があるのは、普段、子どもがよい行動をしている時に親が褒める関係性ができていることです。好ましくない行動を正すには、日ごろから褒める習慣をつけておくことが重要です。
他にもゲームをするときのルールについて様々なお悩みが寄せられました。
その他のお悩み
お悩み:ゲームを取り上げても他の遊びをして勉強をしない
⇒勉強に対して拒否反応を示している状態なので、まずは勉強以外のことを褒めて親子の関係構築から始めましょう。
お悩み:高校生からでもルールを設けても遅くない?
⇒高校生でも遅いということはなく、むしろ最後のチャンス。上記でもお伝えしたように親子の関係性を築いてからルールについて話すことをおすすめします。
親子関係の構築に超重要な“褒め”。努力や過程を褒めると◎
「子どものよい行動を促進する効果的な声がけ」については、努力や過程を褒めることが重要です。例えば、子どもが文句を言いながらも宿題をやり切った時は、「宿題を全部やり切ってえらいね」など、文句を言っていたことには触れずに、自分の意思で勉強をやり切ったことを褒めてあげましょう。
一方で、「点数が取れてすごい!」「賢い!」など能力や結果を褒めてしまうと、失敗した時に「自分に能力が足りないからだ」と思ってしまったり、集中力が続かなかったりと勉強を嫌がってしまう可能性があります。
褒め方について保護者から「どんな褒め言葉をかけたらいいか分からない」というお悩みをいただきました。道地は「努力や過程を褒めるほかに、悪いことをした時でもポジティブに変換していくことが大切です。例えば問題を解いていて間違えた時は、『いいね、今間違えたから次はどうすればいいか分かるようになったね』など間違えることは悪いことではないということを伝えてあげましょう」と説明しました。
■子どもが自主的に勉強するようになるかも!ポイントは“望ましくないことはスルー”して褒める
ゲーム依存と同様に「子どもが勉強をしたがらない」というお悩みを多数いただきました。そこでセミナーの後半では「自発的に勉強する子の育て方」をテーマに、子どもの特性にあった勉強方法や褒めることの重要性などを解説しました。
子どもが勉強に取り組んでいる時に重要な接し方は、保護者にとっては満足いかない結果だとしても、その中でよかった点を褒めることです。例えば、A漢字の練習を始めた、B雑に終わらせようとしたが1文字だけでも丁寧にかけている文字があった、Cで丁寧に書けている字を褒めることで子どものやる気を醸成します。ここで雑に終わらせたことを注意してしまうと、子どもが「終わらせたのに怒られた」と思い、漢字の学習自体が嫌になってしまう可能性があるので注意が必要です。
■“褒め”にプラスして、子どもの特性に合わせた勉強法を取り入れて
子どもの勉強に対する取り組みを見ている中で、子どもの理解力や態度などに違和感を感じたり、不安に思うことが合った場合は、子どもの特性を知る検査を受けることも一つです。子どもの発達支援室では、「KABC-Ⅱ」という知能検査を提供しています。知能検査では唯一、基礎学力を計る学習習得度の評価も取り入れており、学習支援を目的として「認知尺度(認知処理力)」と「学習尺度(基礎学力)」を測定します。検査結果から得意・不得意を発見し、どのような勉強方法がお子さんに合っているのか学習支援の方法や教材のアドバイス、「すらら」利用者にはその子に合った学習プログラムにアレンジするなど、結果を踏まえた家庭学習支援を提案しています。
子どもの特性により覚え方も異なります。学校の授業のように順を追って説明をすると理解がしやすい子や図や表で説明をすると理解が早く進む子など様々なケースがあります。
【開催概要】
■テーマ:【臨床心理士が解説】心理学から紐解く ゲーム依存予防・対策/自発的に勉強する子の育て方講座
■日時:2023年7月13日(木)10:00~11:30
■対象:すららを利用中のお子さまがいる保護者 244名
■講座内容:ゲーム依存や自発的な勉強に関するお困りごとへの対策法の紹介
■講師:臨床心理士 道地真喜
■司会進行:すららネット 子どもの発達支援室 室長 佐々木 章太
講師プロフィール
臨床心理士 道地真喜(どうち まき)
カリフォルニア州立大学院(修士)教育学、カリフォルニア州私立大学院(博士)心理学、カリフォルニア州臨床
心理士免許カリフォルニア州での臨床経験約10年。ASDのお子様向けのABAセラピー、3歳から18歳を対象とした心理検査、認知行動療法、プレイセラピー、大人の鬱、不安症のカウンセリングを主に実施。アメリカでの臨床経験を活かし、(株)すららネットにて心理検査、カウンセリング、保護者向けのペアトレーニングなどに従事。
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