Eins:Vier、有村竜太朗、清春、TETSUYAとそうそうたるミュージシャンが集結!中村佳嗣、50歳のバースデー・ライヴが開催
2019年11月19日、東京・Veats Shibuyaにて〈中村佳嗣生誕五十年記念祭〉が盛大に開催された。Eins:Vierのメンバーであり、サポート・ギタリストとして多数のアーティストから絶大な信頼を集める中村佳嗣のバースデー当日に行なわれた本公演、出演はEins:Vier、有村竜太朗、清春、ZIGZO、TETSUYA、u crack irigaru(O.A)(五十音順)といった豪華な顔ぶれ。中村が長年サポートを務めてきたミュージシャンや親交の深いアーティストが名を連ねる、一夜限りの特別な趣向だ。こうして自身のイベントを開催すること自体が想像しにくい無口でシャイな印象の中村だが、事の発端は、ある日突然現れた“中村佳嗣”名義の“謎のTwitterアカウント”。このアカウントから発信された名言(迷言?)の数々と生誕祭開催に至るまでの道のりをここで詳しく述べるのは野暮というもの。この記念すべき日に、出演者たちがどんな曲を披露し、どんなコラボレーションを見せてくれるのか注目が集まった。
平日の午後4時開演にもかかわらず、場内は超満員で、幸せな熱気に包まれている。プラチナ・チケットを手に入れた幸運な観客たちは、何が飛び出すかわからない宴の隅々まで目に焼き付けようと準備万端だ。
この日のフロアにまず響き渡ったのは、オープニング・アクトu crack irigaruの浮遊感を伴うサウンド。ミステリアスな映像をバックに、甘く官能的な歌声が退廃的なムードを漂わせる。ギターを務めるのは、もちろん本日の主役、中村佳嗣。清春のライブでの場内BGMとしても慣れ親しまれている、ダーク・アンビエントやポスト・インダストリアルの空気をまとった音楽が観客の体を揺らしていく。kate(Vo)が「ハッピー・バースデー!」と中村を祝福すれば、三代堅(B)は「今日はよっちゃんが一番大変だけどね」と場を和ませる。その間、周囲にペコペコと頭を下げる中村の姿が印象的だった。約30分間にわたる、妖しく美しいゆらめきに満ちたオープニング・アクトだった。
午後5時20分頃、場内が暗転し、ZIGZOが登場する。高野哲(TETSU)(Vo&G)、岡本竜治(RYO)(G)、大西啓之(DEN)(B)、櫻澤泰徳(SAKURA)(Dr)のメンバー4人と共に中村佳嗣がステージに上がり、“ZIGZO with 中村佳嗣”という特別編成で1曲目の「笑う月」が演奏された。この曲が場内にゴキゲンな空気を生み出し、中村がにこやかにステージを去った後も、絶え間なく笑顔の広がるロックンロール空間が形成されていく。今年結成20周年を迎えたZIGZOのパフォーマンスは、今まさにノリにノッていると感じさせられた。20周年のファン投票企画で第1位に輝いた「sleep」が暖かくオーディエンスを包み込み、眩しい「ひまわり」が咲き誇るなど、聴く者をいつでもポジティヴな気持ちにさせてくれる名曲揃い。明るく力強いこのバンドの核には、生命力に溢れた歌心がある。ラストの「FOREVER YOUNG」に至るまで、体の芯から力が湧き出すようなロックの解放感を味わった。
続いてステージに現れたのは、この生誕祭の首謀者でもある清春。激しくスパークするSEとともに浮かび上がるカリスマのシルエット。登場シーンからスリル満点の彼を支えるのは、中村佳嗣(G)、大橋英之(G)、YUTARO(B)、Katsuma(coldrain)(Dr)という強靭な顔ぶれだ。「JUDIE」が華やかに観客を興奮状態へと導き、さっそく場を制圧する。「今日は出ずっぱりですね。50代へようこそ」と清春が祝福の言葉をかけると、彼に贈られた“佳嗣ブルー”のオーダータキシードジャケットを着た中村は照れ臭そうに笑う。ここまでほとんど喋らずにいた中村にMCを促すなど、清春の愛情が微笑ましい。そんな中村によるレアな曲紹介で始まった「TWILIGHT」は絶品。雄大な「海岸線」が美しい着地点に至ると、清春の導きにより、有村竜太朗(Vo&G)が登場した。有村は高校時代からEins:Vierの大ファンで、中村と同じ事務所に所属していた頃、初めて出演したイベントでPlastic Treeの「ぬけがら」を彼に称賛されるなど嬉しい思い出があるのだという。「以前、僕と竜太朗くんが歌ったこの曲を佳嗣くんに捧げます」と彼らが歌い出したのは、情緒溢れる「メランコリック」(Plastic Tree)。清春からその場で借りたギターをかき鳴らす有村と、その隣で寄り添いながら歌う清春。これだけでも稀有な光景だが、この夢の共演にはまだ続きがあった。清春と有村の2人が扇動する刺激的な「MARIA」にオーディエンスは興奮を抑えきれない。有村がステージを去った後もこの熱狂は引き継がれ、「SANDY」「HAPPY」で最高潮に幸せな空間が完成。「佳嗣くん、大好きなエビを食べる時が“小うれしい”だとしたら、今日は“大うれしい”だね」と独特の表現で中村を祝った清春であった。
午後8時半に辺りが暗くなり、ステージ中央には中村佳嗣ただ1人。拍手と声援に包まれた彼が「これからある方をお呼びしたいと思います。今日しか見れない特別編成です。長年お世話になってるベースのTETSUYAくんです!」とTETSUYAを舞台に招き入れると、場内は弾けるような歓声に包まれた。「今日は僕、歌で呼ばれたと思ったら、ベースみたい。ドラム必要やん?」とTETSUYAが明るく問いかけると、中村がやや間を置いて話し始めた。「紹介します。SAKURAくんです!」この瞬間のフロアの底が抜けるような歓喜の叫び声が忘れられない。「一緒に音を出すのは22年ぶり」とSAKURAが言えば、「こういう機会があるのも、よっしーのおかげですよ」とTETSUYAは中村に感謝の言葉を述べる。残るはヴォーカルのみ。「紹介します。清春くん!」この中村の言葉を合図に、観衆はにわかに信じがたい光景を目にすることとなった。ステージ上には、清春(Vo)、中村佳嗣(G)、TETSUYA(B)、SAKURA(Dr)というこの日限りのスペシャル・バンド。この顔ぶれだけでも凄いが、彼らが披露した曲も凄かった。「バンド名、考えとこう」とTETSUYAが言い、「これレアです」と清春が観客を煽る。1曲目は「BEAMS」(黒夢)。まさかの演奏曲にフロアからは声にならない声が漏れる。「この曲でベースを弾くのは初めて。普段歌ってるから」とTETSUYAがコメントした2曲目の「蜃気楼」(TETSU69)は、清春お気に入りの1曲だという。とんでもなくレアな光景が続くなか、和やかな会話で場内に笑いを生む4人の姿が印象的だ。当初はこの2曲のみを披露する予定だったというが、「せっかくこのメンバーでやるんだから」とのTETSUYAの呼びかけにより「Dune」(L’Arc-en-Ciel)が演奏された。まるで夢を見ているかのようなオーディエンスの表情がすべてを物語っている。「「Dune」と同じくらいの時期に出した曲で、知らない人も多いと思うけど」と清春が前置きし、このスペシャル・バンドが最後に放ったのは、「十字架との戯れ」(黒夢)。まさかの面々がまさかの曲で畳みかける美しい狂気に観客はいつまでも酔いしれていた。
記憶に残る祝宴の大トリを務めたのは、中村佳嗣の故郷とでも言うべきEins:Vierだ。ステージ後方に掲げられたバックドロップが神々しい。Hirofumi(Vo)、Luna(B)、Yoshitsugu(G) が紡ぎ出すサウンドには光降り注ぐような趣がある。たとえば、彼らが1曲目に選んだ「Words for Mary」の一節〈月から天使たちが微笑みながら降りてくる〉など、この生誕祭の状況を的確に言い表しているように思えて、心動かされた。「Notice」や「L.E.S.S.O.N」といったアグレッシヴな楽曲に気分は高まり、壮大な「In a Void Space」で安らぎに導かれる。繊細さと情熱が見事に調和したEins:Vierの技に観衆はすっかり陶酔していた。「In your dream」の美しい旋律が華麗に着地点に至ると、本編は感動的に幕を閉じた。
アンコールに応えて、彼らが再びステージに姿を現わす。「今日一日、Yoshitsuguが1曲終わるごとに老けて楽屋に帰ってくると思ったけど、ライヴの力で若返ってた」とHirofumiが笑うと、Yoshitsuguは観客に向かって「本当にありがとうございました。言葉が出てこないですけど、すげー嬉しいです!」と喜びを爆発させた。「Eins:Vierは来年で結成30周年です。みんなの想いが強ければ強いほど、何かが起こるかもしれません」とLunaが何やらほのめかしていた点も見逃せない。そんな彼らが最後に放ったのは、愛の歌「I feel that she will come」。この楽曲が極上の余韻を生む頃、時計の針は午後11時を指していた。
清春とTETSUYAがバースデー・ケーキを運び入れ、今日の出演者がステージに勢ぞろいするなか、中村佳嗣はこう述べた。「皆さん、長時間ありがとうございました。忘れられない50歳の誕生日になりました」この時の充実感に満ちた中村の表情が素晴らしかった。ラストは、彼が音頭をとって一本締めをするという流れに。最後の最後まで微笑ましい光景に触れ、観客は幸せそのものだった。
ちょっとした遊び心をきっかけに生まれた、この上なく華やかなバースデー・ライヴ。中村佳嗣という優しく巧みなミュージシャンがどれほど多くの人から信頼されているのかを目の当たりにした一日だった。と同時に、音楽を通じての人と人との縁というものを感じずにはいられない。愛と敬意と友情を軸に、思いがけない素敵な出来事が連鎖した生誕祭。サプライズ満載の温かい夢の続きをまたいつの日か味わいたいものである。
TEXT BY 志村つくね
PHOTO BY 森好弘/村井香
中村佳嗣名義の謎のTwitterアカウント:https://twitter.com/yoshitsuguitar
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