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国立大学法人千葉大学
会社概要

二酸化炭素(CO2)を光の力で燃料に再生!「CO2光燃料化」反応経路を初めて解明

国立大学法人千葉大学

千葉大学大学院理学研究院の張 宏偉 特任研究員、泉 康雄 教授、小西 健久 准教授、同工学研究院の糸井 貴臣 教授の共同研究グループは、ニッケル光触媒を用いてCO2から燃料となるメタンへ還元できることを見出し、さらにCO2が燃料化(メタン化)する様子をリアルタイムで追いかけることで、この「CO2光燃料化」の反応経路を世界で初めて明らかにしました。本研究成果は、ドイツ化学会誌 Angewandte Chemie International Edition で2021年1月20日に電子出版されました。
  • 研究の背景

 化石燃料の燃焼で生成したCO2を、再生可能エネルギーを用いて燃料に戻すことができれば、CO2の排出と吸収を等しくするカーボンニュートラルサイクルを実現することができます(図1)。光エネルギーは、太陽光発電に代表されるように再生可能エネルギーとして大いに期待されており、光エネルギーを効率よく利用する方法を見つけることが喫緊の課題になっています。このようにCO2光燃料化の重要性はすでに広く認識されていますが、CO2は安定な分子であるために、分解して燃料に構築し直すことが容易ではありません。また、持続可能性の観点からは、CO2の光燃料化を比較的安価で、余分なエネルギーを要することなく進められる素材を選ぶことが重要です。持続可能・カーボンニュートラルと言えるようになるには、光燃料化の反応が失活することなく定常的に進むことが求められてきました。

 このような背景のもと、本研究グループはこれまでに明らかにした銀ナノ粒子と酸化ジルコニウムから成る光触媒(注1)によってCO2を一酸化炭素まで還元できるという知見を基に、今回CO2を光エネルギーで燃料化できる光触媒を検討しました。
  • 研究成果

本研究で解明された、ニッケル(0)–酸化ジルコニウム触媒でCO2をメタンに光燃料化する反応経路本研究で解明された、ニッケル(0)–酸化ジルコニウム触媒でCO2をメタンに光燃料化する反応経路

図2 (a)酸化ジルコニウム表面の水酸基、(b)(c)CO2がHCO3として吸着、(d)光で触媒上に生じた電子によりHCO3から一酸化炭素(CO)が発生、(e) H2がニッケル上で原子状Hとして吸着、(f)光から変換された熱でメチル種からCH4が発生図2 (a)酸化ジルコニウム表面の水酸基、(b)(c)CO2がHCO3として吸着、(d)光で触媒上に生じた電子によりHCO3から一酸化炭素(CO)が発生、(e) H2がニッケル上で原子状Hとして吸着、(f)光から変換された熱でメチル種からCH4が発生

 研究グループは、金属ニッケルと酸化ジルコニウムから成る光触媒によって、CO2を燃料となるメタンへ還元する「CO2光燃料化」の反応が進むことを明らかにしました。ニッケルナノ結晶を酸化されていない還元状態のニッケル(0)にしてから用いる(注2)ことで、触媒1グラム当たり毎時0.98ミリモルの速度で高効率でメタンを生成しました。
 さらに、この還元反応の経路を明らかにするために、13C同位体(注3)で標識した13CO2を原料として、2日間、紫外線と可視光線を照射しながらリアルタイムで光燃料化反応を追跡し、定常的に13CH4を生成する様子を観測しました。
 その結果、このとき用いた13CO2試薬の純度(99.0モル%)に対して、生成メタン(13CH4 + 12CH4)中のうち13CH4の割合は92.5〜98.0モル%で13Cの比率が一致しないことが分かりました。詳しく調べたところ、図2(b)(c)のようにCO2が酸化ジルコニウム表面に炭酸水素種(HCO3)として吸着することが分かりました。この吸着には弱い吸着(図2(b))と強い吸着(図2(c))があり、強い吸着サイトには光反応試験前に空気から吸着した12CO2が残っており、それが弱い吸着サイトよりも優先してメタン生成に至ったために、生成メタンの13C純度が試薬よりも低くなったと考えられました。
 酸化ジルコニウムは248 nm以下の波長の紫外線を照射することで、表面に電子(マイナス電荷)とホール(プラス電荷)を生じます。この電子により炭酸水素が還元されてCOが生じます(図2(d))。さらに調べると、触媒上でメチル種(CH3;図2(f))が光の照射で徐々に成長する速度が、メタン生成速度と一致することが分かりました。
 さらに、ニッケル–酸化ジルコニウム光触媒中のニッケルの役割を調べたところ、0価の金属注2)状で存在しており、またニッケルナノ結晶表面は燃料化中に394 K(= 121℃)に達していることが分かり、CO種(図2(d))からメチル種(図2(f))の反応過程は、可視光線から変換された熱により進むことが実証されました。
 これらのことから、以下のような過程で、ニッケルと酸化ジルコニウムから成る光触媒を用いてCO2からメタンを得ることができると明らかになりました。
1.CO2が酸化ジルコニウム表面で炭酸水素(HCO3)として吸着する
2.酸化ジルコニウムと紫外線の作用で炭酸水素が還元されて一酸化炭素(CO)が生じる
3.水素とCOがニッケルの表面で熱により反応し、メタン(CH4)が発生する

 本研究ではCO2燃料化が、紫外線による電子とホール分離の反応過程と、可視光線から変換された熱に駆動される反応過程との2つの光触媒の反応が連携して進むことを世界で初めて示しました。
  • 今後の展望
 本研究で分かった反応過程は、ニッケル(0)のみならず鉄(0), コバルト(0), 銅(0)(注2)も活用できる可能性など、様々な光触媒作用の理解に役立ちます。光触媒作用の応用が進むことで、地球上でのカーボンニュートラルのみならず、紫外線特性を利用した成層圏でのオゾン層修復や、火星上の資源のみで燃料を得るオンサイト燃料供給など、これまでの技術では想像もしなかったような応用が期待できます。
  • 用語解説
注1) 銀ナノ粒子と酸化ジルコニウムから成る光触媒:研究グループは同触媒を用いて、CO2から化学材料となる一酸化炭素(CO)を得ることに成功している。詳細は以下を参照。
雑誌名:Journal of the American Chemical Society
DOI:https://doi.org/10.1021/jacs.8b13894
注2)0価の金属:電子的に中性の状態を意味する。空気中でニッケルは2つの電子を失い、酸化されるが、本研究ではニッケルを水素処理して中性のニッケル(0)として用いている。
注3) 13C同位体:天然中の炭素の99%は原子核の中に陽子を6つ、中性子を6つ含む(12C)が、残りの1%は陽子を6つ、中性子を7つ含む(13C)ため原子の質量が異なる。本研究では13Cを含む13CO2を濃縮して用いることで、天然中の炭素由来ではなく、実験で用いた13CO2が13Cを含むメタンに化学変化したことを証明した。
  • 論文情報
論文タイトル:Efficient and Selective Interplay Revealed: CO2 Reduction to CO over ZrO2 by Light with Further Reduction to Methane over Ni0 by Heat Converted from Light
雑誌名:Angewandte Chemie International Edition
DOI:https://doi.org/10.1002/anie.202016346

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URL
https://www.chiba-u.ac.jp/
業種
教育・学習支援業
本社所在地
千葉県千葉市稲毛区弥生町1-33  
電話番号
043-251-1111
代表者名
横手 幸太郎
上場
未上場
資本金
-
設立
2004年04月
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