日立、米国中部の地域送電機関「Southwest Power Pool (SPP) 」と高度なAIソリューションを開発し、送電網の信頼性と柔軟性向上へ

インダストリアルAIと先進コンピューティング基盤をEnd to Endで活用し、米国中部の送電網への新エネルギー連系を 安全かつ迅速に

株式会社 日立製作所

  • 初期のパートナーシップの目標は、発電設備の系統連系の解析時間を80%削減し、より適切な意思決定を促進すること

  • この目標は、NVIDIAのアクセラレーテッド コンピューティング プラットフォームを活用した日立の高度なAIソリューションによって達成される見込み

  • AIベースの電力シミュレーション・アルゴリズムやHitachi iQによる高速演算、拡張シミュレーションモデリング、予測分析に加え、デザインおよびエンジニアリングサービスなど複数の日立のケイパビリティを統合した包括的なソリューション

  • 計画プロセスの迅速化と効率化を実現することで、電力容量不足の解消、送電網の信頼性向上、緊急対応能力の強化を図り、米国の電力インフラが直面する喫緊の課題を解決

  • 協業の次の段階では、再生可能エネルギーの連系に伴う課題や送電網の制約への対応をめざす

 株式会社日立製作所(以下、日立)とSouthwest Power Pool, Inc.(以下、SPP)は、米国の電力インフラの高度化を妨げている重大かつ差し迫った課題の解決に向けた戦略的パートナーシップを発表しました。今回のパートナーシップにより、発電設備の系統連系(generator interconnection:GI)の時間を80%短縮し、GI顧客のより迅速で高精度な意思決定を支援する統合型AIソリューションを開発します。発電能力を増強することで、SPPが管轄する14州の地域において増大している電力需要に確実に対応できるようになります。

 米国のエネルギー需要は、データセンターの増設や生産活動の増加、電化の加速などを背景に、年間2〜3%のペースで増加*1しています。米国のデータセンターの電力消費量は、2023年に全体の4.4%だったところから、2028年には最大12%を占めると予測されています*2。こうした傾向は、需要と供給の深刻なギャップを生み出しており、SPPの管轄地域における発電容量の余剰率は、2020年の24%から2029年にはわずか5%にまで低下する可能性があります。

 この取り組みは、発電設備の系統連系から始まるEnd to Endの技術革新によって実現されます。現在、米国では1.28テラワットの電力が発電*3されていますが、送電網接続プロセスの問題により、その2倍以上の発電量が利用できない待機状態となっています。この長期間の待機は、新たなエネルギー源を導入する際に既存の送電網に悪影響を与えないよう、膨大な解析作業やシミュレーション検証を行う必要があるため発生しています。

 電力需給のギャップを解消するために、3社はそれぞれの業界および技術的専門知識を結集します。本パートナーシップでは、以下の複数の日立の強みを統合した包括的なソリューションが提供されます:

  • Method*4のデザインサービス

  • GlobalLogicのソフトウェアエンジニアリングサービス

  • 日立エナジーのエネルギーポートフォリオマネジメントにおけるアセットモデリングソリューション

  • 日立R&D部門による独自のAI送電網アルゴリズム

  • NVIDIAのアクセラレーテッド コンピューティング、ネットワーキング、AIソフトウェアを基盤とした、Hitachi Vantaraの統合型ストレージおよびAIインフラソリューション「Hitachi iQ」

 本プロジェクトの枠組みを担う地域送電機関(RTO)として、SPPは、送電網最適化に関する深い専門知識を活用し、これらの技術ソリューションおよびサービスの統合を主導します。また、運用および顧客体験の改善を優先する機関として、SPPは、本プロジェクトの成果が業界全体の要件や規制に適合するよう担保します。

 SPPの社長兼CEOであるLanny Nickell(ラニー・ニッケル)は「我が国の電力需要は、長年の緩やかな増加を経て、近年急激に増加しています。業界はこの突然かつ大きな変化に対応しきれていません。送電網への系統連系を待つ発電事業者は数多く存在しますが、従来のシステムと技術では、新たな発電設備を速やかに系統連系することが難しい状況でした。今こそそうした課題を解決する時です。SPPは、より良いエネルギーの未来を実現するための手段を持つAI業界のリーダーである日立とNVIDIAと協力できることを誇りに思います。」と述べています。

 この包括的なソリューションは、エンタープライズAIソリューションスタック「Hitachi iQ」を中核とし、高度で独自のAIアルゴリズムと高い処理性能を特徴としたインダストリアルAIシステムです。今後、このようなAIドリブンの技術は、以下のようなさまざまな領域に適用される予定です:

  • プロセスの自動化

  • 予測分析

  • 通信システムの統合

 日立とNVIDIAとのパートナーシップは、SPPが現在進めているその他の改善施策と並行して進められており、その中には送電計画プロセスをゼロから見直し、現在および将来の業界ニーズに適合させる取り組みも含まれています。これらの技術革新とプロセス改革の相乗効果により、発電設備の系統連系、中長期の送電計画、長期予測の精度、さらには送電網強化技術の分析と導入など、電力業界における新たなベンチマークが打ち立てられることが期待されています。

 日立デジタルのChief Growth OfficerであるFrank Antonysamy(フランク・アントニサミー)は、「このプロジェクトは、最新のAI技術を活用して、発電と供給の仕組みを根本から見直すことをめざしています。新しい発電設備の導入によって起こりうるさまざまな状況をリアルに再現するには、リアルタイムでのデータアクセスが不可欠です。私たちが開発しているAIソリューションは、そうしたデータを提供するだけでなく、それ以上の価値をもたらします。これにより、SPPはより迅速かつ的確な判断ができるようになり、投資効果を高めながら、より多くの人々に安定した電力を届けられるようになります。この重要な3社連携の一員として、社会的に意義のある課題に取り組めることを誇りに思います。」と述べています。

 NVIDIAのグローバル エネルギー インダストリー担当のシニア マネージング ディレクターである Marc Spieler(マーク・スピラー)氏は、「前例のない電力需要に対応するためには、系統連系プロセスの加速が不可欠です。NVIDIAの先進的なアクセラレーテッド コンピューティングとAIを活用することで、日立とSPPは連系検討のスピードを高め、重要なインフラの早期稼働を支援しています。」と述べています。

 本プロジェクトのフェーズ1におけるマイルストーンは、2025年冬から2026年冬にかけて達成される予定です。これには、初期システムの高速化、データ管理プロセスの最適化、AIを活用したシミュレーションモデリングの導入などが含まれます。

*1: https://www.eia.gov/pressroom/releases/press564.php 

*2: https://www.energy.gov/articles/doe-releases-new-report-evaluating-increase-electricity-demand-data-centers 

*3: https://emp.lbl.gov/news/grid-connection-backlog-grows-30-2023-dominated-requests-solar-wind-and-energy-storage 

*4:Method:GlobalLogicにおける戦略デザイン部門

Southwest Power Poolについて

 Southwest Power Pool, Inc.(SPP、https://www.spp.org)は、地域送電機関(RTO)であり、米国連邦エネルギー規制委員会(FERC)の認可を受けた非営利法人です。SPPは、14州の加盟組織を代表して、電力の安定供給、十分な送電インフラの整備、そして競争力のある卸電力価格の実現を担っています。SPPは、米国中部および西部の一部にまたがる広域地域において電力の信頼性を確保しており、東部および西部のインターコネクションに属する顧客に対して契約ベースでエネルギーサービスを提供しています。また、RTOとしての機能を西部地域へ拡大するとともに、西部市場におけるデイアヘッド(前日)電力市場の構築も進めています。

本社はアーカンソー州リトルロックに所在しています。

日立製作所について

 日立は、IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を通じて、環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献します。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、新たな成長事業を創出する戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアとしてデータから価値を創出することで、お客さまと社会の課題を解決します。2024年度(2025年3月期)売上収益は9兆7,833億円、2025年3月末時点で連結子会社は618社、全世界で約28万人の従業員を擁しています。詳しくは、www.hitachi.co.jpをご覧ください。

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会社概要

株式会社 日立製作所

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URL
http://www.hitachi.co.jp/
業種
情報通信
本社所在地
東京都千代田区丸の内一丁目6番6号
電話番号
-
代表者名
小島 啓二
上場
東証1部
資本金
-
設立
1920年02月