腎臓の老化による慢性腎臓病の進行メカニズムを解明 ポドサイトの蛋白分解機能低下が慢性腎臓病を進行させる

 千葉大学大学院医学研究院 腎臓内科 淺沼克彦 教授、医学部附属病院 牧野慎市 医員(研究開始当時 京都大学大学院医学研究科 腎臓内科学 大学院生)、京都大学大学院医学研究科 TMK プロジェクト・腎臓内科学 柳田素子 教授と、京都大学大学院医学研究科 脳神経内科学 高橋良輔 教授らの研究グループは、腎臓の足細胞における蛋白分解機能の低下が、腎老化による慢性腎臓病を進行させることを発見しました。
 この成果は、慢性腎臓病が進行する原因のより詳細な解明や、進行を抑制する治療薬の開発につながることが期待されます。
 本研究成果は、科学誌「アメリカ腎臓学会誌(Journal of the American Society of Nephrology)」にて2021年1月28日オンライン公開されました。
  • 研究の背景

腎臓内での糸球体足細胞(ポドサイト)の役割腎臓内での糸球体足細胞(ポドサイト)の役割

 腎臓は血液を濾過して尿をつくる臓器ですが、加齢に伴い老化し機能が低下することが知られています。超高齢社会に突入した日本では、腎臓の老化による慢性腎臓病の患者数が増加しており、大きな問題となっています。
 腎臓には糸球体と呼ばれる毛細血管の塊がたくさんあり、ここで血液の濾過が行われ、尿が作られています。さらに毛細血管の表面を覆っている糸球体足細胞(以下、ポドサイト(注1))という細胞があり、血液の濾過に重要な役割を果たしています。しかし、この細胞は加齢により徐々に減少してしまい、腎臓に負担がかかります。
 細胞が生きていくためには、不要になった蛋白を分解除去する仕組みが必要であり、大きく2つの仕組みがあります。一つは2016年にノーベル賞を受賞した「オートファジー(注2)」、もう一つは2004年にノーベル賞を受賞した「ユビキチン・プロテアソーム(注3)」です。
 これまで、私たちを含めて多くの研究グループは、ポドサイトの機能を正常に維持するためにはオートファジーが重要であると考えて研究を行ってきました。しかし、ポドサイトにおいてオートファジー機能を不全にしたマウスの腎臓に、加齢による大きな変化が見られないことが分かり、私たちの研究グループは今回、ポドサイトにおけるユビキチン・プロテアソームに注目して研究を行いました。
  • 研究の結果

図2:ポドサイトの プロテアソーム機能低下による影響図2:ポドサイトの プロテアソーム機能低下による影響

 以下の①~③の結果より、ポドサイトの正常な機能を維持するためには、ユビキチン・プロテアソームによる蛋白分解機能が重要であり、その機能の低下が腎臓の老化を引き起こし、慢性腎臓病が進行することが分かりました。また、ユビキチン・プロテアソームの機能不全による腎障害に対して、抗酸化物質やオートファジーの活性化が有効であることがわかりました。
①ポドサイトのユビキチン・プロテアソームによる蛋白分解機能が低下すると、以下のことが起こりました。
・酸化ストレスが増加してポドサイトの細胞死が起こり、腎臓の老化が進行した。
・オートファジー機能が低下し、細胞障害が引き起こされた。(図2)

図3:オートファジー活性薬の効果図3:オートファジー活性薬の効果

②ユビキチン・プロテアソーム機能不全のポドサイトに酸化ストレスを防ぐ抗酸化物質を投与すると、ポドサイトの細胞死を防ぐことができました。
③オートファジー活性薬を投与すると、ポドサイトの細胞障害が軽減し、慢性腎臓病の進行を抑制することができました。(図3)
  • 今後の展開:高齢者に多い慢性腎臓病の治療薬の開発に向けて
 本研究では、マウスを用いた実験によりポドサイトにおけるユビキチン・プロテアソームの機能低下が腎臓の老化と密接に関係することが分かり、加齢による慢性腎臓病の進行メカニズムの一つが明らかになりました。加齢は避けられない要因ですが、抗酸化物質の投与やオートファジーの活性化は腎臓の老化を防ぎ、慢性腎臓病の新たな治療戦略になると考えられます。
  • 用語解説
注1)糸球体足細胞(ポドサイト):腎臓における血液の濾過は、腎臓に存在する糸球体と呼ばれる場所で行われています。腎臓にある血管は枝分かれをくり返し、やがて毛細血管となってそれぞれが糸球体に入ります。糸球体の中では毛細血管から血液の成分が濾し出されて尿が作られます。この時、血液中の蛋白が漏れ出さないように、毛細血管の表面を覆っている細胞がポドサイトです。ポドサイトの数が減少すると血液中の蛋白が漏れだして尿蛋白が出ます。尿蛋白が持続すると、やがて糸球体そのものが壊れて、血液の濾過が十分に行えなくなり、腎機能が低下します。
注2)オートファジー:細胞内の蛋白質を分解する仕組みの一つ。分解されるべき蛋白がまず膜で包まれて袋状の構造物が形成されます。これに蛋白分解酵素を含んだ顆粒が融合して、袋の中で蛋白が分解されます。
注3)ユビキチン・プロテアソーム:細胞内の蛋白質を分解する仕組みの一つ。はじめに、分解が必要な蛋白にユビキチンと呼ばれる小さな蛋白が結合します。次に、これを目印にして、プロテアソームと呼ばれる蛋白分解酵素の複合体が、その蛋白を分解します。
  • 論文情報
論文タイトル:Impairment of proteasome function in podocytes leads to chronic kidney disease
著者:Shin-ichi Makino, Naritoshi Shirata, Juan Alejandro Oliva Trejo, Kanae Yamamoto-Nonaka, Hiroyuki Yamada, Takafumi Miyake, Kiyoshi Mori, Takahiko Nakagawa, Yoshitaka Tashiro, Hirofumi Yamashita, Motoko Yanagita, Ryosuke Takahashi, Katsuhiko Asanuma
雑誌名:Journal of the American Society of Nephrology
DOI:https://doi.org/10.1681/ASN.2019101025
  • 研究資金について

 本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金(17K19653)挑戦的研究(萌芽)、(18H02823)基盤研究(B)などの支援を受けて行われました。
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