1995年の地下鉄サリン事件から描かれる「あり得たかもしれない、この国のもう一つの可能性」。魂の小説家・古川日出男が生み出す、虚構と現実が融合する新作『曼陀羅華X』がついに刊行。
話題のアニメ「平家物語」の原作となった現代語訳を手掛けた当代随一の琵琶法師作家・古川日出男の最新作は、オウム真理教の事件を題材に想像力を爆発させた超大作です。
『聖家族』『馬たちよ、それでも光は無垢で』『ミライミライ』など、現代を激烈に照射する大作を送り出してきた古川日出男の新作小説『曼陀羅華X』が、3月15日(火)、新潮社から刊行されます。
20世紀末の日本を震撼させたあの事件から描かれるのは、「教団」が日本の中枢に入り込み権力の奪取を目指すという、異常な、しかし当時は十分可能性があった物語です。そこから浮かび上がるのは、当時の私たちが体験したものの、以後記憶の片隅に追いやってきたこの国のひずみ。再び未曽有の危機に直面している日本の混迷は、1995年に端を発しているとも言えるでしょう。
地下鉄サリン事件から27年を迎えた今年、あの頃の恐怖と緊張感、そして「この国が変わる」という多くの人々が抱いた予感が、小説としてよみがえります。
■著者からのメッセージ
私は、とどのつまり、この作品に描かれているような、ある種の〈乱暴きわまりない救済〉しか求めていない。自分の小説家キャリアのなかで、「こんな成り立ちの本は、なかった」という1作になっている。何かがかなりとんでもないのだが、たぶん、ここには「考えてほしい」との種が、ガツンと蒔かれている。
――古川日出男
■あらすじ
「自分たちは、この教えを、国教にするんですよ」
1995年、地下鉄にサリンが撒かれた直後、ある作家が姿を消した。「教団」に拉致された彼は、「予言書」の執筆を指示される。その後、教祖は逮捕されたが、初公判の直後に教団が奪還、これをきっかけとして学生を中心に教団を支持する人々が急増、日本政府との闘争は激化していく。これらは「予言書」の記述通りの展開だった。一方、作家は生まれたばかりの教祖の息子を連れて教団を脱出、東京に潜伏を図る。二代めの教祖を育てる作家と、それを産んだ「教母」の暗闘が始まった――。
「もしもステレオタイプでない文学をするならば、ここまで来い」
■著者プロフィール
古川日出男(ふるかわ・ひでお)
1966年、福島県生まれ。1998年『13』でデビュー。『アラビアの夜の種族』(2001)で日本推理作家協会賞および日本SF大賞、『LOVE』(2005)で三島由紀夫賞、『女たち三百人の裏切りの書』(2015)で野間文芸新人賞および読売文学賞を受賞。『平家物語』全巻の現代語訳も手がけ、これを原作とした放送中のテレビアニメ「平家物語」が話題に。さらに、『平家物語』全訳のスピンオフともいえる小説『平家物語 犬王の巻』が原作のアニメ映画「犬王」の公開が、今年夏に予定されている。戯曲も多数手がけ、『冬眠する熊に添い寝してごらん』ならびに「ローマ帝国の三島由紀夫」は岸田國士戯曲賞の候補となった。他の作品に『聖家族』『馬たちよ、それでも光は無垢で』『ミライミライ』『おおきな森』『ゼロエフ』など。アメリカ、フランス、イギリス等、海外での評価も高い。2018年には『ミライミライ』の登場人物・三田村真(DJ産土)により編集されたアンソロジー『とても短い長い歳月 THE PORTABLE FURUKAWA』が刊行された。
■書籍データ
【タイトル】『曼陀羅華X』
【著者名】古川日出男
【発売日】3月15日発売
【造本】四六版ハードカバー 448頁
【本体価格】3630円(税込)
【ISBN】 978-4-10-306079-6
【URL】https://www.shinchosha.co.jp/book/306079/
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