【国立映画アーカイブ】展覧会「脚本家 黒澤明」開催のお知らせ

修業時代から後期作品まで―「書く人」黒澤の仕事をたどる

文化庁


 映画監督・黒澤明は、幾多の名脚本家に支えられて次々と傑作映画を生み出しましたが、その若き日から、世界の文豪たちの影響を受けながら自身もシナリオを執筆することで成長しました。この展覧会は黒澤のこうした側面に着目し、『七人の侍』(1954年)をはじめとする名作脚本の生成・変更の過程を分析し、また他の監督たちに提供した脚本、新たに発見された未映像化脚本も加えて、「シナリオ作家黒澤」の創作の秘密を解き明かそうとするものです。これまでドストエフスキー、シェイクスピア、山本周五郎と黒澤映画の関係についてはよく論じられてきましたが、黒澤は、実はバルザックやそれ以外の多くの文学作品からも強いインスピレーションを受けています。
 当館は、2010年の「生誕百年 映画監督 黒澤明」展のあとも、ポスター展「旅する黒澤明」(2018年)、「公開70周年 映画『羅生門』展」(2020年)と、展覧会を通じて黒澤映画の先端的な探求を推し進めてきました。黒澤作品の専門家の全面的な協力を得て、そのシナリオ術に照準を当てた本展覧会は、その研究の最新形となるでしょう。
 
  • 展覧会の見どころ
★黒澤の名作群を新たに脚本の視点から分析、在野の黒澤明研究家グループの全面的な協力を得て、最新研究の成果を一挙に公開します。

★国立映画アーカイブの所蔵品のほか、黒澤資料の収集家、各地の資料館や黒澤作品の元スタッフ関係者などから貸与された資料が一堂に会します。

★黒澤のストーリー創作に潜む、知られざるアイデアの源が解き明かされます。これまで論じられなかった文豪バルザックの影響にも注目します。

★「映画『羅生門』展」(2020年開催)に続いてデジタル展示システム「IT-One Quest」の最新版を導入、『隠し砦の三悪人』(1958年)の物語の生成過程を分析します。

★黒澤には実現しなかった幻の企画も少なくありません。中でもテレビドラマ『ガラスの靴』の脚本(1971年)は初公開の一冊です。
 
  • 展覧会の構成
第1章 脚本家・黒澤明の誕生
シナリオの修業が映画監督への道である――日本の映画界にあったこの慣習に従い、1936年にP.C.L.映画製作所に入社した若い黒澤明も、師匠である山本嘉次郎監督の薫陶を受けながら、多忙な助監督業務の傍らシナリオの執筆に励みました。初めて映画化された『幡随院長兵衛』(1940年、千葉泰樹監督)以来、監督デビューに至るまでの「書く人」黒澤の道のりをたどります。 

第2章 敬愛した文豪たち
黒澤の映画世界に大きな影響を与えた文学者として、ドストエフスキー(『白痴』)、シェイクスピア(『蜘蛛巣城』『乱』)、山本周五郎(『椿三十郎』『赤ひげ』『どですかでん』)といった名を欠かすことはできません。こうした文豪の生み出す物語・人間観と黒澤映画の関係を改めて検討するとともに、彼らと並んで黒澤世界に強い影響を与えたバルザックの小説について新たな考察を加えます。

第3章 『七人の侍』創作の秘密
世界映画史の最高峰のひとつ『七人の侍』(1954年)は、黒澤と橋本忍、小國英雄の3名の合作によるシナリオの映画化です。侍たちそれぞれのキャラクターはどのように構想され、肉付けされたのか。またストーリーの構造はいかに構築されたのか。その過程を、新たにアイデアの源泉として注目されるソビエトの文学者ファジェーエフの小説にも触れながら解き明かします。

第4章 創造の軌跡Ⅰ―『隠し砦の三悪人』をめぐって
黒澤の作品歴の中でも痛快な娯楽篇『隠し砦の三悪人』(1958年)のシナリオは、菊島隆三の第一案を膨らませるかたちで、黒澤、菊島、橋本忍、小國英雄の4名が旅館に長期間泊まり込んで書かれました。全体を通した「たたき台」を作らずに、各脚本家が同時に各シーンを執筆する「いきなり決定稿」方式で作られましたが、そのスリリングな生成過程を、デジタル展示システムを用いて紹介します。

第5章 創造の軌跡Ⅱ―改訂の過程をたどる
力強く太い流れを感じさせる黒澤映画の世界は、シナリオの水準でどのように造形されていったのか。『酔いどれ天使』(1948年)、『生きる』(1952年)、『悪い奴ほどよく眠る』(1960年)、『天国と地獄』(1963年)といった名作群のシナリオを執筆の段階ごとに読み解きながら、その生成過程を明るみに出していきます。

第6章 創造の軌跡Ⅲ―井手雅人とともに
『赤ひげ』(1965年)以来、後期の黒澤映画に欠かせない存在となった脚本家が井手雅人です。大作『乱』(1985年)や、クレジットされていない『デルス・ウザーラ』(1975年)を含め、国際的な合作映画の製作を志す黒澤を支えた井手の功績を、黒澤との共同作業の様子を伝える貴重な一次資料も含めて明らかにします。

第7章 黒澤が提供した脚本たち
黒澤の功績の中でも比較的光が当たりにくいのが、自身では監督していない執筆脚本の数々です。東宝での同僚であった谷口千吉、本多猪四郎や堀川弘通のほか、数々の名監督のために黒澤は自身の脚本を提供していますが、いずれも黒澤らしい骨太の人間像が描かれています。

第8章 映像化されなかった脚本たち
いくつもの輝かしい傑作を送り出した黒澤の映画人生は、一方で多くの企画の断念を余儀なくされた挫折の年月でもあります。クランクインまで進みながら監督降板となった『トラ・トラ・トラ!』をはじめ、黒澤が心血を注ぎながらも映画化に至らなかった幻の脚本の数々を紹介します。中でも新発見の脚本『ガラスの靴』(1971年)は注目に値する一冊です。

 特別コーナー 海外での脚本出版と合作用の英語脚本
黒澤の名作は、その大胆な作劇術により世界の映画人たちの教科書となりました。このコーナーでは、日本映画の英語圏への先駆的な紹介者であったドナルド・リチーのかかわった書籍など、海外で出版に至った黒澤映画の脚本と、また外国との合作企画に際して製作費を調達するため必要となった英訳版のシナリオを展示し、黒澤映画の類いなき国際性を示します。
  
《関連上映企画》
10月4日(火)から開催する上映企画「東宝の90年 モダンと革新の映画史(2)」(2022年10月4日~12月25日)のなかで、本展覧会に関連した作品を11月後半に上映します。
*詳細は後日HPにて発表いたします。
 
  • 開催概要
展覧会名:脚本家 黒澤明(英題 / Akira Kurosawa, Screenwriter)

主催:国立映画アーカイブ
企画協力:槙田寿文
資料作成協力:「脚本家 黒澤明」研究チーム
協力:黒澤プロダクション

会場:国立映画アーカイブ 展示室(7階)
会期:2022年8月2日[火]-11月27日[日]
休室日:月曜日および9月6日[火]-9日[金]、9月27日[火]-10月2日[日]
開室時間:午前11時-午後6時30分(入室は午後6時まで)
*毎月末の金曜日のみ開室時間を午後8時まで延長いたします。(入室は午後7時30分まで)

料金:一般250円(200円)/大学生130円(60円)/65歳以上、高校生以下及び18歳未満、障害者(付添者は原則1名まで)、国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズは無料
*料金は常設の「日本映画の歴史」の入場料を含みます。*( )内は20名以上の団体料金です。
*学生、65歳以上、障害者、キャンパスメンバーズの方は入室の際、証明できるものをご提示ください。
*国立映画アーカイブが主催する上映会の観覧券(オンラインチケット「購入確認メール」)をご提示いただくと、1回に限り団体料金が適用されます。
*2022年11月3日(木)「文化の日」は、無料でご覧いただけます。

お問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
HP:https://www.nfaj.go.jp/exhibition/akirakurosawascreenwriter2022
 

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会社概要

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URL
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業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
京都府京都市上京区下長者町通新町西入藪之内町85番4
電話番号
075-451-4111
代表者名
都倉俊一
上場
未上場
資本金
-
設立
1968年06月