設備投資計画がある企業は6割、前年度から微増にとどまる デジタル投資が進む一方、円安・原料高でためらいも
2022年度の設備投資に関する企業の意識調査
帝国データバンクの試算によると、2022年度の実質民間企業設備投資額は87.0兆円となり、依然として新型コロナウイルス感染拡大前(2019年度、90.8兆円)を下回るものの、2年連続での増加が見込まれる。しかし、ウクライナ情勢や新型コロナウイルス等による不透明感の高まり、原材料の価格高騰や供給制約、また足元で急速に進行する円安の影響など、国内景気は下振れリスクが大きく、今後の設備投資動向への影響も懸念される。
そこで、帝国データバンクは2022年度の設備投資に関する企業の意識について全国の企業に調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2022年4月調査とともに行った。
そこで、帝国データバンクは2022年度の設備投資に関する企業の意識について全国の企業に調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2022年4月調査とともに行った。
<調査結果(要旨)>
設備投資計画がある企業は6割、前年度から微増にとどまる
また、2022年度に設備投資の予定(計画)が『ある』企業に対して、予定している設備投資額について尋ねたところ、設備投資予定額における全体の平均は1億3,083万円となり、2021年度(1億2,572万円)から増加した。
内容は「設備の代替」がトップ、大手を中心にデジタル投資進む
特に、「情報化関連」か「DX」のいずれかを選択した、デジタル投資を検討している企業は34.3%と3社に1社に及んだ。さらに、企業の従業員数が多くなるにつれて、デジタル投資の割合が上昇する傾向がみられ、従業員数が1,000人を超える企業では「情報化関連」が45.3%、「DX」が33.7%、いずれかを選んだ企業は61.6%と高い割合になっている。
設備投資の予定が『ある』企業からは、「省力化・効率化などを見据えたデジタル化への設備投資は必須と考えている。資金調達は、新型コロナウイルス関連融資で非常に助かっている」(土木建築サービス)、「生産の効率化を図るために新しい設備(検査装置)導入を検討中で、そのために助成金を申請予定」(光学機械・写真機械器具卸売)、「業態転換補助金の活用など、新規事業に軸足を置いている」(酒類卸売)といった声が寄せられた。
一方で、予定が『ある』としている企業でも「設備の調達において注文から納入までの期間が長くなり、トラックは約1年、クレーン等は3年かかる物もあり、投資判断が難しくなっている」(土木工事)や「建築投資案件について、部材の高騰、納期の長期化を考慮すると、先延ばししたほうがよいかもしれないと考えるようになってきた」(自動車(新車)小売)など、昨今の状況を踏まえ投資計画を修正する動きもみられる。
円安や原料高が設備投資のマイナス要因に
規模別に設備投資をしない理由を比較すると、中小企業は「先行きが見通せない」「投資に見合う収益を確保できない」「借り入れ負担が大きい」「原材料価格の高騰」「手持ち現金が少ない」といった理由で、大企業と比べ5ポイント以上高い割合となっている。
企業からは、「円安により燃料価格が高騰し、収益を圧迫させることが想定され、安易に設備投資は出来ない」(一般貨物自動車運送)、「同一作業機械設備が10年、20年前と比べて非常に高くなっている。さらに原材料高騰で金額が上がっているので予算が合わない」(金属製建具工事)といった声が聞かれるなど、円安や原料高などによる先行き不透明感の高まりを設備投資のマイナス要因にあげる企業が目立った。
本調査結果では、2022年度に設備投資を行う予定(計画)が『ある』企業は58.9%となった。従業員数が多い企業でIT、DXなどのデジタル投資が進む一方、円安や原料高などによる先行き不透明感が設備投資のマイナス要因となった。
5月11日、岸田内閣の看板政策である経済安全保障推進法が、参議院本会議において可決、成立した。2022年の秋までに基本方針を策定し、段階的に施行される。経済安全保障推進法は(1)重要物資の供給網強化、(2)基幹インフラの安全確保、(3)官民協力による先端技術研究の推進、(4)特許の非公開制度の導入、の4本柱で構成されるが、例えば(2)基幹インフラの安全確保においては、電気や金融など14業種の重要設備の導入・維持管理等の委託に関し、政府が事前に審査するなど、設備投資に直接的な影響も表れよう。また、設備投資を「予定していない」理由として、2022年度も「先行きが見通せない」が半数を超えるなか、(1)重要物資の供給網強化についても、同法が施行され国内企業へ半導体などの重要物資が安定的に供給されるようになれば、企業の設備投資マインドの上昇が期待される。
- 2022年度に設備投資を行う予定(計画)が『ある』と回答した企業は58.9%となった。規模別でみると、「大企業」は72.0%で設備投資が『ある』一方、「中小企業」は56.3%、「小規模企業」は43.7%にとどまる。また、2022年度の設備投資予定額は平均1億3,083万円(2021年度は1億2,572万円)となった
- 設備投資計画の内容(複数回答)では、「設備の代替」(41.5%)がトップ。以下、「既存設備の維持・補修」(32.5%)、「省力化・合理化」(26.2%)、「情報化(IT化)関連」(24.5%)が続いた。特に、「情報化(IT化)関連」と、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」のいずれかを選択した企業は34.3%。従業員数が多い企業を中心にデジタル投資が予定されている
- 設備投資を行わない理由では、「先行きが見通せない」(53.0%)がトップ。以下、「現状で設備は適正水準である」(26.4%)、「投資に見合う収益を確保できない」(20.8%)、「借入負担が大きい」(13.3%)、「原材料価格の高騰」(13.1%)が続く
設備投資計画がある企業は6割、前年度から微増にとどまる
2022年度(2022年4月~2023年3月)に設備投資を実施する予定(計画)があるか尋ねたところ、設備投資計画が『ある』(「すでに実施した」「予定している」「実施を検討中」の合計)と回答した企業は58.9%となり、前回調査(2021年4月実施)から0.9ポイント増と微増にとどまった。設備投資を「すでに実施した」企業は6.4%(前年比0.2ポイント増)、「予定している」は31.2%(同0.7ポイント増)、「実施を検討中」は21.3%(同横ばい)となり、それぞれ前年から大きな変化はみられない。他方、設備投資を「予定していない」企業は33.0%(同0.7ポイント減)となった。
また、2022年度に設備投資の予定(計画)が『ある』企業に対して、予定している設備投資額について尋ねたところ、設備投資予定額における全体の平均は1億3,083万円となり、2021年度(1億2,572万円)から増加した。
設備投資の予定(計画)が『ある』企業を規模別にみると、「大企業」が72.0%(同2.3ポイント増)と2019年度(71.1%)以来3年ぶりに7割を超えた。一方、「中小企業」は56.3%(同0.7ポイント増)、「中小企業」のうち「小規模企業」は43.7%(同1.2ポイント減)にとどまる。業界別では、『農・林・水産』が73.6%(同9.7ポイント増)と大幅に増加した一方、『小売』は56.4%(同5.1ポイント減)と低下。『製造』(同0.6ポイント減)も69.5%と2年ぶりの6割台に低下した。
内容は「設備の代替」がトップ、大手を中心にデジタル投資進む
2022年度に設備投資の予定(計画)が『ある』企業に対し、予定している設備投資の内容について尋ねたところ、「設備の代替」が41.5%でトップとなった(複数回答、以下同)。次いで、「既存設備の維持・補修」(32.5%)や「省力化・合理化」(26.2%)「情報化(IT化)関連」(24.5%)が続いた。
特に、「情報化関連」か「DX」のいずれかを選択した、デジタル投資を検討している企業は34.3%と3社に1社に及んだ。さらに、企業の従業員数が多くなるにつれて、デジタル投資の割合が上昇する傾向がみられ、従業員数が1,000人を超える企業では「情報化関連」が45.3%、「DX」が33.7%、いずれかを選んだ企業は61.6%と高い割合になっている。
設備投資の予定が『ある』企業からは、「省力化・効率化などを見据えたデジタル化への設備投資は必須と考えている。資金調達は、新型コロナウイルス関連融資で非常に助かっている」(土木建築サービス)、「生産の効率化を図るために新しい設備(検査装置)導入を検討中で、そのために助成金を申請予定」(光学機械・写真機械器具卸売)、「業態転換補助金の活用など、新規事業に軸足を置いている」(酒類卸売)といった声が寄せられた。
一方で、予定が『ある』としている企業でも「設備の調達において注文から納入までの期間が長くなり、トラックは約1年、クレーン等は3年かかる物もあり、投資判断が難しくなっている」(土木工事)や「建築投資案件について、部材の高騰、納期の長期化を考慮すると、先延ばししたほうがよいかもしれないと考えるようになってきた」(自動車(新車)小売)など、昨今の状況を踏まえ投資計画を修正する動きもみられる。
円安や原料高が設備投資のマイナス要因に
2022年度に設備投資を「予定していない」企業に対して、設備投資を行わない理由を尋ねたところ、「先行きが見通せない」が53.0%でトップとなった(複数回答、以下同)。以下、「現状で設備は適正水準である」(26.4%)、「投資に見合う収益を確保できない」(20.8%)、「借入負担が大きい」(13.3%)、「原材料価格の高騰」(13.1%)が続く。
規模別に設備投資をしない理由を比較すると、中小企業は「先行きが見通せない」「投資に見合う収益を確保できない」「借り入れ負担が大きい」「原材料価格の高騰」「手持ち現金が少ない」といった理由で、大企業と比べ5ポイント以上高い割合となっている。
企業からは、「円安により燃料価格が高騰し、収益を圧迫させることが想定され、安易に設備投資は出来ない」(一般貨物自動車運送)、「同一作業機械設備が10年、20年前と比べて非常に高くなっている。さらに原材料高騰で金額が上がっているので予算が合わない」(金属製建具工事)といった声が聞かれるなど、円安や原料高などによる先行き不透明感の高まりを設備投資のマイナス要因にあげる企業が目立った。
本調査結果では、2022年度に設備投資を行う予定(計画)が『ある』企業は58.9%となった。従業員数が多い企業でIT、DXなどのデジタル投資が進む一方、円安や原料高などによる先行き不透明感が設備投資のマイナス要因となった。
5月11日、岸田内閣の看板政策である経済安全保障推進法が、参議院本会議において可決、成立した。2022年の秋までに基本方針を策定し、段階的に施行される。経済安全保障推進法は(1)重要物資の供給網強化、(2)基幹インフラの安全確保、(3)官民協力による先端技術研究の推進、(4)特許の非公開制度の導入、の4本柱で構成されるが、例えば(2)基幹インフラの安全確保においては、電気や金融など14業種の重要設備の導入・維持管理等の委託に関し、政府が事前に審査するなど、設備投資に直接的な影響も表れよう。また、設備投資を「予定していない」理由として、2022年度も「先行きが見通せない」が半数を超えるなか、(1)重要物資の供給網強化についても、同法が施行され国内企業へ半導体などの重要物資が安定的に供給されるようになれば、企業の設備投資マインドの上昇が期待される。
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