マンダムと京都大学、毛髪の内部で湿気に強い結合を形成することで、ヘアスタイルを自然な仕上がりのままキープする整髪技術を開発
株式会社マンダムと国立大学法人京都大学の共同リリース
株式会社マンダム(本社:大阪市、社長執行役員:西村元延 以下マンダム)と国立大学法人京都大学(所在:京都市、総長:山極 壽一 以下京都大学) 化学研究所 中村研究室 高谷光准教授、磯﨑勝弘助教は、昨今のヘアスタイリング剤に求められる「自然な仕上がりのヘアスタイルをしっかりキープする」整髪技術の開発に、2014年から共同で取り組んできました。
従来の整髪技術は、主に毛髪の外側に整髪成分を塗布・付着させることで、毛髪同士を固めたり、くっつけたりして、ヘアスタイルをキープします。しかし、毛髪の外側に整髪成分が多く付着しているため、素髪のような自然なツヤ感になりにくい傾向にあり、最近のヘアスタイリング剤に求められる「自然な仕上がり」と「キープ」を両立させることは困難でした。
そこで、毛髪内部に強い結合を形成すれば、高湿度下でも高いキープ力を有することができるのではないかと考え、内部で作用する整髪成分の検討を行いました。
その結果、保湿剤などに用いられていたα-ケトグルタル酸を毛髪に浸透させることによって、毛髪内部で結合を形成し、自然な仕上がりでありながら、高いキープ力が実現できることを見出しました。
この技術により、今まで実現できなかった「自然な仕上がりのまま思い通りのヘアスタイルがキープできる」ヘアスタイリング剤の開発が可能となりました。
なお、本研究成果は2019年9月30日~10月2日イタリア・ミラノで開催される「第30回国際化粧品技術者会(IFSCC Conference)」において発表を予定しています。
1.自然な仕上がりとヘアスタイルのキープの両立
従来の整髪技術はセットポリマーやワックスなどの整髪成分を毛髪の外側に塗布・作用させることによって、毛髪同士を固めたり、くっつけたりしてヘアスタイルをキープします(図1)。
この仕上がりは、従来から多くの生活者に好まれていますが、一方で、近年ヤング男性を中心に「自然な仕上がり」のヘアスタイルを好む生活者が増加してきており、ヘアスタイリング剤には「自然な仕上がり」のヘアスタイルを「キープ」できることが求められています(図2)。
しかし、従来の整髪技術では自然な仕上がりにすることが難しくなるため、この両立の実現には新技術が必要でした。
ヘアスタイルがキープできなくなる主要因が湿度です。一般的に、毛髪は内部のタンパク質同士が主に水素結合を形成することで形を作っています。しかし、この水素結合は非常に水に弱く、湿気を吸うと結合が切れ、形状が変化してしまいます。これが湿度でヘアスタイルが崩れる原因のひとつです(図3)。
浸透性:
α-ケトグルタル酸水溶液を浸漬させた毛髪をカットし、その断面上のα-ケトグルタル酸の濃度分布をラマン分光法を用いて測定しました。その結果、α-ケトグルタル酸が毛髪中心部まで浸透していることが確認できました(図6)。
毛髪タンパク質との結合:
浸透したα-ケトグルタル酸が、毛髪タンパク質と結合を形成しているかを確認するため、京都大学にて物質のミクロなサイズでの構造解析が可能であるSAXS(X線小角散乱法)を用いて検証を行いました。
SAXSでは、毛髪にX線を照射し、その散乱した光の強度で、毛髪中のタンパク質の構造を知ることができます。散乱強度が大きいと、毛髪中のタンパク質の形状・構造が規則正しく並んでいることがわかります。また、散乱角度の大きさで、毛髪のどこで作用しているかもわかります。(図7)。
SAXSによる測定の結果、α-ケトグルタル酸を毛髪に処理することによって、マトリックスタンパク質に由来する領域に、精製水処理毛髪と比べて、顕著な強度差が表れました(図8)。
つまり、α-ケトグルタル酸は毛髪中のマトリックスタンパク質に結合し、湿度によって構造が変化しない強固な規則構造を形成する役割を果たしていることを見出しました。(図9)
耐湿性:
α-ケトグルタル酸を処理した毛束をカール状に巻きつけ、乾燥させた状態で、室温25℃湿度80%の高湿度環境下で放置し、2時間後の毛束のカールがどの程度維持するかを測定しました。通常、毛髪が湿気を吸うと、内部の水素結合が切れ、カールが伸びてきます。今回はこの湿気によるカールの伸びをどの程度抑えることができるかを、精製水処理した毛髪と他の二塩基酸であるグルタル酸で処理した毛髪と比較しました。その結果、α-ケトグルタル酸を処理することで、精製水のみで処理する時やグルタル酸で処理する場合と比べて、カールの伸び抑制率が高く、キープ力が向上していることがわかりました(図10)。
その結果、セットポリマーやワックスを塗布した毛束では精製水処理した場合と比較し、ツヤ感が大きかったのに対して、α-ケトグルタル酸を処理した毛束は、精製水のみで処理した場合と同程度のツヤ感、すなわち見た目が自然な仕上がりであることを確認しました(図11)。
以上より、α-ケトグルタル酸を用いることで毛髪内部から作用し、かつ高湿度下においてもヘアスタイルをしっかりキープできる整髪技術を開発することに成功しました。
今後、マンダムではこの技術を「自然な仕上がり」と「キープ」を両立したヘアスタイリング剤に応用していきます。
そこで、毛髪内部に強い結合を形成すれば、高湿度下でも高いキープ力を有することができるのではないかと考え、内部で作用する整髪成分の検討を行いました。
その結果、保湿剤などに用いられていたα-ケトグルタル酸を毛髪に浸透させることによって、毛髪内部で結合を形成し、自然な仕上がりでありながら、高いキープ力が実現できることを見出しました。
この技術により、今まで実現できなかった「自然な仕上がりのまま思い通りのヘアスタイルがキープできる」ヘアスタイリング剤の開発が可能となりました。
なお、本研究成果は2019年9月30日~10月2日イタリア・ミラノで開催される「第30回国際化粧品技術者会(IFSCC Conference)」において発表を予定しています。
1.自然な仕上がりとヘアスタイルのキープの両立
従来の整髪技術はセットポリマーやワックスなどの整髪成分を毛髪の外側に塗布・作用させることによって、毛髪同士を固めたり、くっつけたりしてヘアスタイルをキープします(図1)。
そのため、外から作用させる整髪成分の量を増やすと、毛髪同士を固定する力が強くなるため、キープ力が向上し、またツヤ感も上がる傾向にあります。
この仕上がりは、従来から多くの生活者に好まれていますが、一方で、近年ヤング男性を中心に「自然な仕上がり」のヘアスタイルを好む生活者が増加してきており、ヘアスタイリング剤には「自然な仕上がり」のヘアスタイルを「キープ」できることが求められています(図2)。
しかし、従来の整髪技術では自然な仕上がりにすることが難しくなるため、この両立の実現には新技術が必要でした。
2.従来の外側からの作用ではなく、内側に浸透・作用する整髪成分の探索
ヘアスタイルがキープできなくなる主要因が湿度です。一般的に、毛髪は内部のタンパク質同士が主に水素結合を形成することで形を作っています。しかし、この水素結合は非常に水に弱く、湿気を吸うと結合が切れ、形状が変化してしまいます。これが湿度でヘアスタイルが崩れる原因のひとつです(図3)。
そこで我々は毛髪内側に成分を浸透させ、毛髪タンパク質間に水素結合より強いイオン結合を形成させ、作用部位を増やすことで、耐湿性を向上できないかと考えました(図4)。
毛髪中のタンパク質にはプラスの部位があるため、両末端にマイナスの部位を持つ二塩基酸類を作用させれば、毛髪タンパク質同士をイオン結合で繋ぐことができるのではと考えました(図5)。
さまざまな二塩基酸を検討した結果、保湿成分などに使用されているα-ケトグルタル酸が毛髪の内側に浸透し、内部で結合を形成することで、耐湿性を高くすることがわかりました。また、毛髪に塗布した際の見た目も素髪と同等の仕上がりになることを確認しました。つまり、α-ケトグルタル酸を浸透させることで、「自然な仕上がり」と「キープ」の両立が可能となりました。
浸透性:
α-ケトグルタル酸水溶液を浸漬させた毛髪をカットし、その断面上のα-ケトグルタル酸の濃度分布をラマン分光法を用いて測定しました。その結果、α-ケトグルタル酸が毛髪中心部まで浸透していることが確認できました(図6)。
毛髪タンパク質との結合:
浸透したα-ケトグルタル酸が、毛髪タンパク質と結合を形成しているかを確認するため、京都大学にて物質のミクロなサイズでの構造解析が可能であるSAXS(X線小角散乱法)を用いて検証を行いました。
SAXSでは、毛髪にX線を照射し、その散乱した光の強度で、毛髪中のタンパク質の構造を知ることができます。散乱強度が大きいと、毛髪中のタンパク質の形状・構造が規則正しく並んでいることがわかります。また、散乱角度の大きさで、毛髪のどこで作用しているかもわかります。(図7)。
SAXSによる測定の結果、α-ケトグルタル酸を毛髪に処理することによって、マトリックスタンパク質に由来する領域に、精製水処理毛髪と比べて、顕著な強度差が表れました(図8)。
通常の毛髪では高湿度下に保管することでマトリックスタンパク質の構造が崩れるのに対し、α-ケトグルタル酸を浸透させた毛髪ではマトリックスタンパク質が規則的に並んだ構造を形成し、湿度によってもこの構造が保持されることを確認しました。
つまり、α-ケトグルタル酸は毛髪中のマトリックスタンパク質に結合し、湿度によって構造が変化しない強固な規則構造を形成する役割を果たしていることを見出しました。(図9)
耐湿性:
α-ケトグルタル酸を処理した毛束をカール状に巻きつけ、乾燥させた状態で、室温25℃湿度80%の高湿度環境下で放置し、2時間後の毛束のカールがどの程度維持するかを測定しました。通常、毛髪が湿気を吸うと、内部の水素結合が切れ、カールが伸びてきます。今回はこの湿気によるカールの伸びをどの程度抑えることができるかを、精製水処理した毛髪と他の二塩基酸であるグルタル酸で処理した毛髪と比較しました。その結果、α-ケトグルタル酸を処理することで、精製水のみで処理する時やグルタル酸で処理する場合と比べて、カールの伸び抑制率が高く、キープ力が向上していることがわかりました(図10)。
自然な仕上がり:
毛束のα-ケトグルタル酸を塗布し、乾燥させた毛髪表面のツヤ感を評価することで、自然な質感を実現できているかを評価しました。比較として、精製水を塗布した毛束、従来の整髪成分であるセットポリマー(自社ヘアジェル)、ワックス(自社ヘアワックス)を塗布した毛束も作成しました。その結果、セットポリマーやワックスを塗布した毛束では精製水処理した場合と比較し、ツヤ感が大きかったのに対して、α-ケトグルタル酸を処理した毛束は、精製水のみで処理した場合と同程度のツヤ感、すなわち見た目が自然な仕上がりであることを確認しました(図11)。
以上より、α-ケトグルタル酸を用いることで毛髪内部から作用し、かつ高湿度下においてもヘアスタイルをしっかりキープできる整髪技術を開発することに成功しました。
今後、マンダムではこの技術を「自然な仕上がり」と「キープ」を両立したヘアスタイリング剤に応用していきます。
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